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第6回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く

時間が空きましたが、前回に続いて各種基準のお話。
今回は、競技基準、人事体制・組織運営基準、法務基準の3つ。
重要度してはやや低めですね

範囲は交付規則第33条、第35条~第36条

MOKUJI

第1回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
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まずは軽めな競技基準(Sporting Criteria)の話を始めましょう。
競技基準の目的は交付規則第33条第1項に定められています

第 33 条 〔競技基準〕

(1) 競技基準の目的は、以下のとおりである。
① 質の高いアカデミープログラムを構築すること
② アカデミー選手のオフ・ザ・ピッチ教育についても支援・奨励すること
③ アカデミー選手の医療ケアを充実させること
④ ピッチ内外でフェアプレーを遵守すること


競技基準と言われても?マークが浮かびますが、要はユースの充実とフェアプレーについて。
実際にどのようなものがあるかというと次の7項目

  • S.01 A等級 承認されたアカデミープログラム
  • S.02 A等級 アカデミーチーム
  • S.03 A等級 選手の医療面でのケア
  • S.04 A等級 プロ選手との書面による契約
  • S.05 A等級 レフェリングに関する事項と「競技規則」
  • S.06 C等級 人種的平等の実践
  • S.07 C等級 女子チーム

S.02は、U-18、U-15、U-12、U-10の各種チームの保有義務を規定したもの。
S.03~S.07についてはタイトル名そのままなので特に触れません

残ったS.01の見るべきポイントは次の2つ。
簡潔に言うと、ユースをしっかりしましょうという話ですね

S.01 承認されたアカデミープログラム(A等級)

(1) ライセンス申請者は、下記項目を満たした「アカデミー申請書」を提出しなければならない。
(2) ライセンス申請者は、以下のプログラムの実施により、サッカーに関する教育以外の補完的教育を行う。

競技基準についてはこれくらいでいいと思います。
ユースの基準が厳格化されたくらいで基本的に今までとあまり変わらないのではないでしょうか

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2つ目は人事体制・組織運営基準(Personnel and Administrative Criteria)。
名称がちょっと長いので、一時的に「人事基準」と呼称していきます

では、いつも通り交付規則第35条第1項の目的を見てみましょう

第 35 条 〔人事体制・組織運営基準〕

(1) 人事体制・組織運営基準の目的は、以下のとおりである。
① ライセンス申請者がプロフェッショナルな方法で運営管理されること
② ライセンス申請者が、一定のノウハウおよび経験、スキルを有するスペシャリストを有すること
③ トップチームおよびその他のチームの選手が、資格を有するコーチによるトレーニングを受け、必要な医療スタッフによりサポートされること


人事基準とは、運営スタッフ及びチームスタッフの水準向上についての基準です

何気に人事基準は項目数が全18個と5つの基準でも最大。
しかもその全てがA等級となっているため最重要のようにも見えます。
しかし、中身は当たり前のようなことを明文化しただけという印象が強いです

  • P.01 A基準 クラブ事務局
  • P.02 A基準 代表取締役
  • P.03 A基準 財務担当(ファイナンスオフィサー)
  • P.04 A基準 運営担当(オペレーションオフィサー)
  • P.05 A基準 セキュリティ担当(セキュリティオフィサー)
  • P.06 A基準 広報担当(メディアオフィサー)
  • P.07 A基準 マーケティング担当
  • P.08 A基準 医師(メディカルドクター)
  • P.09 A基準 理学療法士
  • P.10 A基準 トップチーム監督
  • P.11 A基準 トップチームのアシスタントコーチ
  • P.12 A基準 アカデミーダイレクター
  • P.13 A基準 アカデミーチーム監督
  • P.14 A基準 アカデミーチームコーチ
  • P.15 A基準 安全・警備組織:警備員
  • P.16 A基準 権利と義務
  • P.17 A基準 ライセンス申請書類提出後の変更通知義務
  • P.18 A基準 ライセンス交付シーズンにおける後任の選任義務

あまりにも多いのでいくつかピックアップという形で。

P.03 財務担当(ファイナンスオフィサー)(A等級)

ライセンス申請者は、経理・財務を担当する常勤の取締役を置き、かつ、以下のいずれかに該当する者を財務担当(ファイナンスオフィサー)として置かなければならない。

① 会計参与
ただし会計参与を財務担当とする場合は、会計参与との連絡担当となる常勤の財務担当社員を置くこと

② 常勤の経理・財務担当で、課長職以上の者で、以下のいずれかの資格を有する者
イ.公認会計士または税理士
ロ.経理・財務分野において 3 年以上の実務経験を有し、Jリーグから発行される「財務担当適正証」を有する者

今回の制度化において最重要ともいわれる「財務面」。
その管理を任されるポジションだけあって条件も相当厳しめ。
例として、運営担当(オペレーションオフィサー)と少し比較してみましょう

P.04 運営担当(オペレーションオフィサー)(A等級)

ライセンス申請者は、試合運営に関する事項について責任を有する運営担当(オペレーションオフィサー)として、以下のいずれかに該当する者を置かなければならない。
① Jリーグが特定する試合運営に関する課程に参加し、その課程を終了した者
② 最低 1 年の実務経験を有し、Jリーグから発行される「運営担当適正証」を有する者

他の担当も大体これと同じような条件になっています。
つまり、Jリーグの講習的なものを受講するか、実務経験について認証を得るか
これだけでも以前より人事面でのレベルアップは図れるはず

財務担当が他の担当よりも更に厳しくなっていることからもこの制度の趣旨が分かります

(注記)
その他では専門性の高いセキュリティ担当は資格又は実務経験+Jの認証。
ドクター・理学療法士といったメディカルスタッフは資格。
監督やコーチなどのコーチングスタッフは指導者ライセンスが必要です


P.09 理学療法士(A等級)

ライセンス申請者は、医師をサポートし、トップチームのトレーニング、試合中の医療手当およびマッサージについて責任を有するメディカルスタッフを置き、Jリーグに届け出なければならない。なお、メディカルスタッフは、医療に関わる以下のいずれかの国家資格等を保有しているものとする。
① 理学療法士
② 柔道整復師
③ あん摩マッサージ指圧師
④ はり師
⑤ きゅう師
⑥ 財団法人日本体育協会公認アスレティックトレーナー
P.12 アカデミーダイレクター(A等級)

ライセンス申請者は、以下のいずれかの条件を満たし、かつ、国内外の登録チームでの 3 年以上の指導経験がある者をアカデミーダイレクター(育成責任者)に置かなければならない。なお、当該アカデミーダイレクターはJFAに登録されていなければならず、ライセンス申請者における決裁手続きを経たうえで任命されなければならない。
① JFAの定める有効な「A 級」指導者資格またはそれに相当するとJFAが認定した指導者としての実績
② AFC「A 級」資格
③ UEFA「A 級」資格

この2つについてはこれまで規定がなかったと思われる事柄です。
アカデミーダイレクターについては2009年に出来たものらしく、こちらのコラムを参考に

【参考】
世界で活躍する選手を育てるために Jリーグアカデミーダイレクター研修に密着
《スポーツナビ 12年8月23日閲覧》

Jリーグ規約においてメディカルスタッフに関する規定があったのは次の項目

Jリーグ規約(pdf注意)
《Jリーグ公式 12年8月23日閲覧》

第47条〔届出義務〕
(1) Jクラブは、次の事項を所定の方法によりJリーグに届け出なければならない。届出事項に変更が生じた場合も同様とする。
③ 監督、コーチ、ドクターおよびアスレティックトレーナー(原則として日本体育協会公認)等(以下「チームスタッフ」という)

上記の通り、ドクターとアスレティックトレーナーについて書かれています。
しかし、今回の交付規則では、後者が理学療法士として範囲が拡大されていますね。
「等」という部分を明文化したということでしょうか

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5つの基準で唯一目的の定められていない法務基準(Legal Criteria)が最後。
法務基準であげられているのは以下の6項目です

  • L.01 A基準 AFCクラブ競技会出場への宣誓書
  • L.02 A基準 クラブの登記情報
  • L.03 A基準 他クラブの経営等への関与の禁止
  • L.04 A基準 クラブ内の懲戒手続き
  • L.05 C基準 選手と社員のための行動規範
  • L.06 C基準 顧問弁護士(リーガルオフィサー)

A基準は4項目ありますが、どれも至ってそのまんまな基準
特に説明することもないと思いますので興味があったら原文をどうぞ

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久しぶりの更新なので今一度交付規則を読み直してきました。
毎週更新で一気にこのシリーズを終わらせようと思います

ではまた次回


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