2012年08月31日
第7回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
各種基準の話も今回で最後
第7回はクラブライセンス制度の要となる財務基準…範囲は交付規則第37条。
今回は分かりやすくするために運用細則の方にも触れていきます
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まずは財務基準の目的など。
交付規則第37条第1項~第3項がそれに当たります
他の4つの基準に対して明らかにボリューム多め。
中身の方はA等級7個とC等級1個で構成されています
F.02、F.04、F.06~F.08については専門性が高いので今回は省略
まずはF.03から見ていきたいのですが、交付規則の条文ではよく分かりません。
今回は運用細則の方で確認してみましょう
「選手移籍活動によって生じる他のフットボールクラブに対する期限経過未払金」
つまり、移籍金やトレーニング費用などが該当するということですね。
目的にも合ったように、単純な経済状況だけが「財務基準」の範囲ではありません
続いてF.05ですが、これは交付規則第25条第5項でも定められています。
同じ条文内で繰り返し指示されていることからも重要性の高さは窺えます
「ライセンス申請者の財務状況に(好影響か悪影響かを問わず)影響を及ぼし得るような経済的重要性のある事象または状況」
運用細則に細かいことは書いてありますが、長いので画像1個で処理。
要はこういった大事なことが起きたならきちんと言いなさいって規定ですね
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さて、本日最後にして最重要となるのが次のF.01です。
その文言を見る前に、Jリーグ規約に定められた財務に関する条文を先に見てみましょう
これが、今回の規則では次のようになっています
(注記)
ちなみに、財務諸表とは基本的に「損益計算書」、「貸借対照表」、「キャッシュ・フロー計算書」、「株主資本等変動計算書」の4つを指します
以前は監事の監査だったものが監査法人等の監査を受けることが必要になりました。
これがどれほどその財務諸表の信頼性を担保するかはわざわざ明記するまでもありません。
また、この交付規則には明記されていないのですが、「キャッシュ・フロー計算書」と「株主資本等変動計算書」の2つも必須になっているのではないかと推測されます
では、その判定基準はというと、運用細則の方に定められています
ライセンス発行がされないのは、3期連続の赤字と債務超過の場合。
3期連続赤字は2012年度決算から、債務超過は2014年度決算からです。
誤解が多いようですが、2011年度決算までは関係ありません
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以上、財務基準について目立ったものをざっと見てきました
第1回でも触れましたが、F.01はこの制度の詳細が明らかになる前から注目されていました。
F.01はA等級の基準であるため、これらのどちらかになった瞬間にアウト
例えば、人事面であれば適正な人を雇えば済む話ですし、ユースや施設ならば今後の見通しを示せばある程度の情状酌量は望めるかもしれません。
しかし、決算というものはどうしようもない…だからこそこの財務基準は最重要と言えるのです
ただ、どちらの事態も普通は突然なってしまうものではありません。
危機的状況になったとき、スポンサーや地域行政に頼み込むことは不可能ではないでしょう。
一時的であれば公式試合安定開催基金に頼ることも可能です
しかし、それは今現在の話
今後、JリーグやJクラブは地域社会にとって重要な立ち位置を占め続けられるか。
それは決して確定的なものではないと考えています
このライセンスはきっかけであって、いずれやらなくてはならないことだと思います。
(それが性急だったか、段階を経るべきだったかという議論は置いておくとして)
そんなわけで5つの基準が終了。
次回は今まで飛ばしてきていた細々したものを説明していく予定です
第7回はクラブライセンス制度の要となる財務基準…範囲は交付規則第37条。
今回は分かりやすくするために運用細則の方にも触れていきます
MOKUJI
第1回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第2回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第3回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第4回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第5回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第6回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第7回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第8回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第9回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
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まずは財務基準の目的など。
交付規則第37条第1項~第3項がそれに当たります
第 37 条〔財務基準〕
(1) 財務基準の目的は以下のとおりとする。
① クラブの経済的および財務的能力を向上させること
② クラブの透明性と信頼性を高めること
③ 債権者保護を重視すること
④ シーズンを通じた国内競技会および国際競技会の継続性を保護すること
⑤ 国内競技会および国際競技会における財務面でのフェアプレーを監視すること
(2) ライセンス申請者が何らかの連結対象となる会社を有しており、当該ライセンス申請者が支配会社である場合には、個別財務諸表のほか、連結財務諸表をライセンサーに提出しなければならない。
(3) ライセンス申請者の関連当事者との取引は、日本国の会計基準に基づいて会社法に定める計算書類に注記されるか、別添資料を作成してライセンサーに提出されなければならない。
他の4つの基準に対して明らかにボリューム多め。
中身の方はA等級7個とC等級1個で構成されています
- F.01 A基準 年次財務諸表(監査済み)
- F.02 C基準 中間財務諸表(監査済み)
- F.03 A基準 選手移籍活動によって生じる他のフットボールクラブに対する期限経過未払金の皆無
- F.04 A基準 従業員や社会保険当局、税務当局に対する期限経過未払金の皆無
- F.05 A基準 ライセンス交付の決定に先立つ表明書
- F.06 A基準 予算および予算実績、財務状況の見通し
- F.07 A基準 ライセンス交付後の重要な後発事象の通知義務
- F.08 A基準 財務状況の見通しの修正義務
F.02、F.04、F.06~F.08については専門性が高いので今回は省略
まずはF.03から見ていきたいのですが、交付規則の条文ではよく分かりません。
今回は運用細則の方で確認してみましょう
F.03 選手移籍活動によって生じる他のフットボールクラブに対する期限経過未払金の皆無
4.基準 F.03 に対するその他の遵守事項および注意事項
ライセンス申請者は、移籍補償金(および連帯貢献金)、トレーニング費用、トレーニングコンペンセーション等、選手移籍に関して発生する費用の支払いにつき、遺漏なく手続きを行わなければならない。なお、トレーニング費用等の支払いが免除される場合は、トラブル防止のため、その記録を書面で残すようにしなければならない。
「選手移籍活動によって生じる他のフットボールクラブに対する期限経過未払金」
つまり、移籍金やトレーニング費用などが該当するということですね。
目的にも合ったように、単純な経済状況だけが「財務基準」の範囲ではありません
F.05 ライセンス交付の決定に先立つ表明書(A等級)
(1) FIBによってライセンス交付の決定が下される期間の開始前 7日以内に、ライセンス申請者はライセンサーに対し、当該申請者がライセンス交付文書を提出した日が属する事業年度の前年度の末日以降、ライセンス申請者の財務状況に(好影響か悪影響かを問わず)影響を及ぼし得るような経済的重要性のある事象または状況が生じたか否かを表明する書式を提出しなければならない。
続いてF.05ですが、これは交付規則第25条第5項でも定められています。
同じ条文内で繰り返し指示されていることからも重要性の高さは窺えます
第 25 条〔ライセンス申請書類の審査〕
(5) ライセンス申請者は、FIBによるライセンス交付決定が下される期間の開始前 7 日以内に、CLAに対して、第 37 条の基準 F.05 に定める表明書を提出するものとする。
「ライセンス申請者の財務状況に(好影響か悪影響かを問わず)影響を及ぼし得るような経済的重要性のある事象または状況」
運用細則に細かいことは書いてありますが、長いので画像1個で処理。
要はこういった大事なことが起きたならきちんと言いなさいって規定ですね
---
さて、本日最後にして最重要となるのが次のF.01です。
その文言を見る前に、Jリーグ規約に定められた財務に関する条文を先に見てみましょう
Jリーグ規約(pdf注意)
《Jリーグ公式サイト 12年8月30日閲覧》
第40条〔事業報告および決算〕
(1) この法人の事業報告および決算については、毎事業年度終了後、理事長(チェアマン)が次の書類を作成し、監事の監査を受けたうえで、理事会の承認を受けなければならない。
① 事業報告
② 事業報告の附属明細書
③ 貸借対照表
④ 損益計算書(正味財産増減計算書)
⑤ 貸借対照表および損益計算書(正味財産増減計算書)の附属明細書
⑥ 財産目録
これが、今回の規則では次のようになっています
(注記)
ちなみに、財務諸表とは基本的に「損益計算書」、「貸借対照表」、「キャッシュ・フロー計算書」、「株主資本等変動計算書」の4つを指します
F.01 年次財務諸表(監査済み)(A等級)
(1) ライセンス申請者は、AFCおよびライセンサーの指示に基づき、ライセンス申請者の有する法人格に対する国内法令に基づいた年次財務諸表一式を作成し、Jリーグに提出しなければならない。なお、当該財務諸表は監査法人または公認会計士の監査を受けたものとし、ライセンサーの求めに応じ、決算の詳細はライセンサーに開示されなければならない。
(2) ライセンス申請者は、前項の資料に基づき、ライセンスを申請した日の属するシーズンの翌シーズンのライセンス交付について審査されるものとする。
以前は監事の監査だったものが監査法人等の監査を受けることが必要になりました。
これがどれほどその財務諸表の信頼性を担保するかはわざわざ明記するまでもありません。
また、この交付規則には明記されていないのですが、「キャッシュ・フロー計算書」と「株主資本等変動計算書」の2つも必須になっているのではないかと推測されます
では、その判定基準はというと、運用細則の方に定められています
F.01 年次財務諸表(監査済み)
3.判定
(2) 提出された財務諸表に基づいて審査を行い、以下のいずれかに該当する場合は基準 F.01 を満たさないものとする。
① 3 期連続で当期純損失を計上した場合。ただし、判定は2012 年度決算より開始し、それ以前の年度は判定対象としない
② ライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度末日現在、純資産の金額がマイナスである(債務超過である)場合。ただし判定は 2014 年度決算より開始し、それ以前の年度は判定対象としない
③ Jリーグからの指摘に基づき、過年度の決算の修正が必要となった場合において、過年度の決算を修正した結果、前 2号に示す事態となった場合
ライセンス発行がされないのは、3期連続の赤字と債務超過の場合。
3期連続赤字は2012年度決算から、債務超過は2014年度決算からです。
誤解が多いようですが、2011年度決算までは関係ありません
---
以上、財務基準について目立ったものをざっと見てきました
第1回でも触れましたが、F.01はこの制度の詳細が明らかになる前から注目されていました。
F.01はA等級の基準であるため、これらのどちらかになった瞬間にアウト
例えば、人事面であれば適正な人を雇えば済む話ですし、ユースや施設ならば今後の見通しを示せばある程度の情状酌量は望めるかもしれません。
しかし、決算というものはどうしようもない…だからこそこの財務基準は最重要と言えるのです
【参考】
FC岐阜に厳しい姿勢 Jリーグ、来季参加資格検討へ聴取
《岐阜新聞 12年8月30日閲覧》
ただ、どちらの事態も普通は突然なってしまうものではありません。
危機的状況になったとき、スポンサーや地域行政に頼み込むことは不可能ではないでしょう。
一時的であれば公式試合安定開催基金に頼ることも可能です
しかし、それは今現在の話
今後、JリーグやJクラブは地域社会にとって重要な立ち位置を占め続けられるか。
それは決して確定的なものではないと考えています
このライセンスはきっかけであって、いずれやらなくてはならないことだと思います。
(それが性急だったか、段階を経るべきだったかという議論は置いておくとして)
そんなわけで5つの基準が終了。
次回は今まで飛ばしてきていた細々したものを説明していく予定です