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2015年05月

J1 1st第11節における岩下敬輔(G大阪)の行為について 後編

前回の続き。
今回は条文のオンパレードです



③「試合中に審判員が確認できなかった極めて悪質な行為」
前回、岩下敬輔の行為は「乱暴な行為」に該当し、退場処分が適当であると述べました。
しかし、審判員の確認できない位置で起こったためその処分が出来なかったようです

こうなってしまうと私たちは泣き寝入りするしかないのでしょうか。
…という風に書けばお分かりの通り、そうはなりません

それが「試合中に審判員が確認できなかった極めて悪質な行為」というチェックシステム

極めて悪質なプレーには試合後罰則適用も
《ニッカンスポーツ 2015年5月13日閲覧》

Jリーグは15日の理事会で、試合中に審判が見過ごした「極めて悪質なプレー」について、試合後でも映像で確認できた場合には処分を科すと決めた。26日のリーグ戦から実施する。各クラブからのクレームなどを扱うJリーグ対応セクションが調査し、審判委員会での審議を経て、規律委員会で処分を決める。今後、試合中に警告や退場処分を受けなかった選手が後日、出場停止などを科される事例が出てきそうだ。
 
羽生事務局長は「公式記録には残らない悪質なプレーが対象。選手による試合中の暴力行為を撲滅するためのJリーグ独自の取り組み」と説明。必要な場合は、テレビの中継映像や各クラブが独自に撮影したスカウティング用の映像などを分析するという。

[2009年9月16日7時3分 紙面から] 

この「試合中に審判員が確認できなかった極めて悪質な行為」は過去に事例があります。


こうしてみると年に1度くらいのペースで発生・適用されてるようですね。
J'sGoalのアーカイブが残っていればもう少し詳しく調べることが出来たのですが…

なお、松下裕樹だけソースが微妙ですがJFAにも記録があるので間違いないようです。
2009年9月26日導入したのなら不名誉な第一号は松下裕樹だったのでは…


さて、今回のケースも「試合中に審判員が確認できなかった極めて悪質な行為」に該当するのではないかと考えられるわけです

過去の事例でも各選手が出場停止になっており、今回もそうなるものだと思っていました

しかし、ガンバ大阪のプレスリリースではそうなっていません

《ガンバ大阪公式HP 2015年5月13日閲覧》
 
本日、岩下選手は、公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)規律委員会から直接、事情聴取を経て厳重注意を受けました。この処分をクラブ・本人ともに真摯に受け止め、クラブとしてもチーム規律に基づき厳重注意を行うとともに、フェアプレーの徹底に取り組むべく、チーム全体に対して再発防止に向けた指導・教育を行ってまいります。 

なぜ出場停止でないのか分からないので「Jリーグ規律委員会」とやらを調べてみました


④Jリーグ規律委員会とJFA懲罰規程

あまり耳にすることのない「Jリーグ規律委員会」とは一体どんな組織なのか。
Jリーグ規約等に規定されている部分を抜粋してみました

Jリーグ規約
《Jリーグ規約・規程集2015 14ページ、35ページ》

第8条〔専門委員会〕
(1) チェアマンの下に次の専門委員会を置き、チェアマンがこれを直轄する。
① 規律委員会

第67条〔規律委員会による処分〕
次の各号のいずれかに該当する者に対する処分は、協会が定めるJFA懲罰基準に基づき規律委員会において審議決定する

① 退場を命じられた者
② 警告を受けた者
③ 前2号に相当する不正な行為を行った者 
《Jリーグ規約・規程集2015 82ページ》
 
1.規律委員会
① ピッチおよびその周辺部分ならびにスタジアムにおける懲罰事由の調査および処分の決定
② 競技および競技会における、Jリーグに対する社会一般の評価を悪化させるおそれのある事項の防止に関する検討・立案
③ スポーツマンシップおよび秩序維持に関する事項の検討・立案
④ その他規律および懲罰に関する事項の検討・立案

端的に言うと「Jリーグ規律委員会」とは規律と懲罰を司る部署。
ただ、そのメンバーなど細かい点についてはほとんど分かりません。
唯一、委員長が元古河の石井茂巳氏であることがJFA公式HPで分かるくらいですね


さて、Jリーグ規律委員会による処分は上記の通りJFA懲罰基準に基づくとあります。
JFA懲罰基準とは、JFAの懲罰規程を指すものと考えられます

懲罰規程
《懲罰規程 89ページ》

第1条〔目  的〕 
本規程は、公益財団法人日本サッカー協会(以下、「本協会」という)の基本規程(以下、「基本規程」という)第2章第5節〔司法機関〕及び第12章〔懲罰〕に基づき、以下の各号について定める。
 
(1) 本協会の規律委員会及び裁定委員会並びに基本規程第202条に基づき本協会の規律委員会及び裁定委員会から懲罰権を委任された都道府県サッカー協会、地域サッカー協会、各種連盟及びJリーグ(以下、「都道府県協会等」という)の規律委員会における懲罰に関する事項

(2) 本協会の不服申立委員会における不服申立に関する事項

このJFA懲罰規程から岩下敬輔の行為を考えると次の項目に該当する可能性があります

〔別紙1〕競技及び競技会における懲罰基準
《懲罰規程 102~103ページ》

2.退場
以下の2-1(1)から(10)号又は2-2から2-7のいずれかに該当する場合には、主審は退場を命じ、かつ規律委員会は、各項①号以下の定めにより懲罰を科す。
 
2-1.以下のいずれかに該当する場合
(1)著しい反則行為
(2)きわめて危険な行為
(3)乱暴な行為
(4)主審、副審の判定に対する執拗な抗議
(5)他の競技者、その他の競技に立ち会っている人々に対する侮辱
(6)警告を与えられた後、さらに不正な行為を繰り返す
(7)きわめて反スポーツ的な行為
(8)策略的な行為を繰り返す(1-1.(7)号参照)
(9)主審に無断で抗議のためにフィールドを離れる行為
(10)その他、きわめてスポーツマンらしくない行為(1-1.(9)号参照)
 
①1回目の場合:最低1試合の出場停止
②繰り返した場合(内容は同一でなくてもよい):最低2試合の出場停止及び罰金
 
2-2.選手等に対する暴行・脅迫及び一般大衆に対する挑発行為
 
①1回目の場合:最低2試合の出場停止及び罰金
②繰り返した場合:最低4試合の出場停止及び罰金

前回説明したとおり、岩下敬輔の行為が「乱暴な行為」に該当すると考えられます。
であれば、競技規則との読み替えから2-1(3)乱暴な行為又は2-2選手等に対する暴行・脅迫及び一般大衆に対する挑発行為に該当すると考えるのが妥当でしょう

前者であれば出場停止1試合、後者であれば2試合です(繰り返しの定義は置いておきます)

しかし、実際は厳重注意止まり。
岩下敬輔の行為は懲罰の対象にならなかったのでしょうか?


⑤無理矢理読み解く「岩下敬輔が厳重注意で済んだ訳」
岩下敬輔がなぜ出場停止ではなく厳重注意で済んだのか。
行為から考えても全く分からないため、結果から逆に辿ってみることにしましょう


まず、推論のスタートとなる事実。
それは岩下敬輔はJリーグ規律委員会から事情聴取を受け厳重注意を受けたということ

Jリーグ規律委員会が事情聴取したということはJFA懲罰規程に基づいた業務のはず。
というのも、Jリーグ規約では選手に対する事情聴取について定めていないようなので。
選手の権益侵害に当たると考えられますので、規定されていないことはない…はず…。

《懲罰規程 94ページ》

第20条〔聴  聞〕
規律委員会及び裁定委員会は、原則として当事者に対し事情聴取を行い、その意見を聞くものとする。ただし、当事者の同意がある場合又は対象者が事情聴取を拒否若しくは無断欠席した場合はこの限りではない。 

つまり、岩下敬輔はJリーグ規約第67条の対象だったと考えられます

《Jリーグ規約・規程集2015 35ページ》
 
第67条〔規律委員会による処分〕
次の各号のいずれかに該当する者に対する処分は、協会が定めるJFA懲罰基準に基づき規律委員会において審議決定する。
 
① 退場を命じられた者
② 警告を受けた者
③ 前2号に相当する不正な行為を行った者 

この場合、第1号・第2号には該当しないので第3号に該当することになります。
すなわち岩下敬輔は警告ないし退場処分が適当であったということ

退場処分が適当で、JFA懲罰規程に基づいて処分するなら前述した通り。
1試合の出場停止か2試合の出場停止になると考えるのが自然なはず

しかし、実際には「厳重注意」。
この「厳重注意」というのはJFA懲罰規程の懲罰には存在しません

《懲罰規程 90ページ》
 
第4条〔懲罰の種類〕
1.選手等に対する懲罰の種類は次のとおりとする。
 
(1)警告
主審が試合中に競技者に対し、競技規則に基づきイエローカードを示す
 
(2)退場・退席
主審が試合中に競技者(退場の場合)又は監督その他の関係者(退席の場合)に対し、試合中にフィールド及びその周辺から立ち去るように命じる
 
(3)戒告
口頭をもって戒める
 
(4)譴責
始末書をとり、将来を戒める
 
(5)罰金
一定の金額を本協会に納付させる
 
(6)社会奉仕活動
 
(7)没収
取得した不正な利益を剥奪し、本協会に帰属させる
 
(8)賞の返還
賞として獲得した全ての利益(賞金、記念品、トロフィー等)を返還させる
 
(9)一定数、一定期間、無期限又は永久的な公式試合の出場停止
一定数、一定期間、無期限又は永久的に、公式試合について、フィールド、ベンチ、ロッカールーム等の区域に立ち入ることを禁止する
 
(10)公的職務の一時的、無期限又は永久的な停止・禁止・解任
本協会又は加盟団体における一切の公的職務を一定期間、無期限又は永久的に停止し、禁止し、又は解任する
 
(11)一定期間、無期限又は永久的なサッカー関連活動の停止・禁止
サッカーに関する一切の活動を一定期間、無期限又は永久的に停止し又は禁止する
 
(12)除名
本協会の登録を抹消する

競技及び競技会における懲罰基準においても「厳重注意」なんて処分は書かれていません。
すなわち、岩下敬輔は処分の対象ではなかったと考えなければなりません

そうするとJリーグ規約第67条との齟齬が発生してしまうという結論になるのですが

考えられる可能性としては、Jリーグ規律委員会が何かの条文を根拠に事情聴取を行った。
ということになるのですが、その根拠条文は見つかりませんでした



※追記
こちらの考え方が正解なのではないかと思います


すなわち、Jリーグ規律委員会は ピッチにおける懲罰事由の調査を行っただけ。
調査してみたところ、「粗暴な行為」に該当しないため「乱暴な行為」には該当しない。
また、アウトオブプレー中の出来事なので他の警告・退場にも該当しない。
したがって岩下敬輔の行為は懲罰処分の対象外となる。
しかし問題があるプレーだとは認識している

Jリーグ規約第67条は処分する際にJFA懲罰基準に従うとある。
今回は処分ではないのでJFAの懲罰規定に従う必要はない。
そのため、「厳重注意」という懲罰規定に書かれていない事態が起きた

ただし、この場合でも事情聴取の根拠が不明です。
また、「粗暴な行為」の基準がガイドラインのも書かれていないため判断できません。
退場処分でなければ警告対象にもならないとなるが、類推解釈を引き起こしかねない。
といった点も気になってくるのですが

追記終わり




しかし、私にはこれを究明する術がありません 

なぜならJFAの懲罰規程において手続きの非公開が定められているからです

懲罰規程
《懲罰規定 94ページ》

第19条〔手続の非公開〕 
規律委員会、裁定委員会及び不服申立委員会における懲罰の手続及び記録は非公開とする。ただし、規律委員会、裁定委員会又は不服申立委員会は、手続の公正が害されるおそれがなく、かつ、相当の理由があると認めるときは、関係者の傍聴を許すことができる。 

この手続きが非公開になるのは仕方がない部分があるのは理解できます。
しかし、モヤモヤ感が残ってしまうのも避けられないでしょう



⑥終わりに
今回の件について調べてはみたのですが、どうしても推測の域で終わってしまいました。
調べていて改めて感じるのは、Jリーグ規約やJFAの懲罰規定に対する違和感です


岩下敬輔の行為やはり退場となるべき行為だと思います。
一部で清水航平の挑発などを理由に岩下敬輔を庇う声もあるようですが、清水航平がどうあったかにかかわらず岩下敬輔の行為は非難されるべきものに変わりはありません

そして他の事例と比較してなぜ今回は懲罰処分を下せなかったのかが判然としない

多くの選手・ファンはその違いが分からないため結論に不満を持つでしょう。
あるいはこの程度ならやってもいいんだというように類推解釈することを止められません

そうした不満・解釈からくる煽りは、審判員に向いてしまっています。
前回も書きましたが審判団が見逃したのは仕方のないことにもかかわらずです。
他事例と同様に処分できていれば審判団を助けることにもなったのではないでしょうか

「試合中に審判員が確認できなかった極めて悪質な行為」という制度は、そうならないための審判員に対するフォローアップのための存在だとずっと思っていました

しかし、現実にそれができていない。
本来、それができるような規約・規程があるべき姿ではないでしょうか。
(もちろんここまでの推論が外れていて処分なしが妥当なのかもしれませんが)


また、Jリーグ規約とJFAの懲罰規程とがしっくりこないのも気になります。
Jリーグ規約において「JFA懲罰基準」と書かれているところもその一つ

他にも、懲罰規定の中の、競技及び競技会における懲罰基準には、「主審は警告を命じ、かつ規律委員会は以下①から②号のとおり懲罰を科す」、「主審は退場を命じ、かつ規律委員会は、各項①号以下の定めにより懲罰を科す」と書かれています

これを言い換えると、警告または退場処分を受けていなければ懲罰は出せないのか。
それでは「試合中に審判員が確認できなかった極めて悪質な行為」の関係がちぐはぐです。
不文律として存在するのかもしれませんが、条文が上手く対応していないように感じます

そういった点も含めてJリーグにはきちんと規約規程を整備してもらいたいです



今回の処分はほぼ確実に覆らないでしょう。
そして、岩下敬輔の退場がなかったため敗れたなどとは思っていません。
審判団が見れなかった以上、結果は変わりませんから

しかし、一方でとても悔しいのです。
サンフレッチェ広島とガンバ大阪の試合はとても見応えのある素晴らしい試合でした。
我々は負けたといっても、ある意味で清々しい負けだったのです

そんな素晴らしい試合に岩下敬輔は水を差す行為をした。
コメントも出していますが決して美談にしないためにも本稿を書き上げた次第です


最後に、改めてフェアプレーの意義を確認しておきましょう。
選手だけでなくファン・サポーターもしっかり胸に刻んでおくべきものですから

サッカーファミリー
《JFA公式HP 2015年5月14日閲覧》

フェアプレーとは
1 ルールを正確に理解し、守る
フェアプレーの基本はルールをしっかりと知った上で、それを守ろうと努力することである。
 
2 ルールの精神:安全・公平・喜び
ルールは、自分も他人もけがをしないで安全にプレーできること、両チーム、選手に公平であること、みんなが楽しくプレーできることを意図して作られているのである。
 
3 レフェリーに敬意を払う
審判は両チームがルールに従って公平に競技ができるために頼んだ人である。人間である以上ミスもするだろうが、最終判断を任せた人なのだから、審判を信頼し、その判断を尊重しなければならない。
 
4 相手に敬意を払う
相手チームの選手は「敵」ではない。サッカーを楽しむ大切な「仲間」である。仲間にけがをさせるようなプレーは絶対にしてはならないことである。



※追記
書き終わって読みました。参考までに

【参考】
岩下の処分について
《とりあえず 2015年5月14日閲覧》 


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J1 1st第11節における岩下敬輔(G大阪)の行為について 前編

先日のガンバ大阪戦で岩下敬輔の行為が話題になっています

その問題についてガンバ大阪から公式発表がありました。
内容は下記の通り

「明治安田生命J1リーグ 1stステージ第11節サンフレッチェ広島戦」における、岩下敬輔選手の行為についてのお詫び
《ガンバ大阪公式HP 2015年5月13日閲覧》

2015年5月10日(日)に行われました、「明治安田生命J1リーグ 1stステージ第11節サンフレッチェ広島戦」におきまして、弊クラブ所属、DF岩下敬輔選手が相手選手に対しプレーとは関係のない場面で、肩と肘をぶつけるという行為を行いました。これは、Jリーグが掲げるフェアプレーに大きく反する行為であり、岩下選手の行為は決して許されるものではありません。日頃Jリーグを応援していただいているファン・サポーターの皆様、Jリーグ・クラブをご支援いただいている関係各所の皆様に不快な思いをさせてしまったことを深くお詫び申し上げます。
 
本日、岩下選手は、公益社団法人 日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)規律委員会から直接、事情聴取を経て厳重注意を受けました。この処分をクラブ・本人ともに真摯に受け止め、クラブとしてもチーム規律に基づき厳重注意を行うとともに、フェアプレーの徹底に取り組むべく、チーム全体に対して再発防止に向けた指導・教育を行ってまいります。
 
ご迷惑をおかけした皆様には重ねてお詫び申し上げます。


処分が軽いという意見、審判に対する不満など色々な意見が散見されます。
私個人としても今回の件を有耶無耶にしたくはないので一度まとめてみることにしました

なお、本稿において敬称は省略させて頂きます。
あと長くなったので2回に分けます



①該当シーンの確認
問題シーンはNHKでは映らなかったらしいですが、スカパーではばっちり映っていました。
私は試合会場で応援していたため、当時何が起きてるのか全く分かっていませんでしたが



画像を交えながら少し詳しく状況説明しておきましょう。
当事者である岩下敬輔(G大阪)と清水航平(広島)を中心に

岩下01


塩谷司(広島)がドリブルで持ち上がったところをリンス(G大阪)が倒してファール。
サンフレッチェ広島がFKを得ます

岩下02

FKを蹴る前の位置関係。
岩下敬輔はおそらく左から4番目のG大阪の選手だと思われます。
清水航平は早いリスタートに準備していたのか、まだサイドです

岩下03

清水航平はセットプレーに参加するため中央へ移動。
岩下敬輔は自分が対応するため、隣の選手に佐藤寿人(広島)をケアするよう指示。
セットプレー直前の位置関係はこちら

なお、この位置どりの際に清水航平が岩下敬輔と接触があったようにも見えます

岩下04

そして、FKを蹴る直前に清水航平と岩下敬輔が体をぶつけているのが確認できます

岩下敬輔からすれば進行方向の妨害にも見えますが、身体のバランスを大きく崩したわけでもないので視野の内での出来事だったのではないかと想像していますが

岩下05

FKを柴崎晃誠(広島)がずらして野津田岳人(広島)がシュートしましたが枠を外れます

岩下06

ゴールキックになったため各選手がポジションに戻ろうとします。
清水航平は持ち場が右サイドであったため、その方向へ帰ろうとしました

岩下07

そこで岩下敬輔と清水航平が接触

岩下08

清水航平は顔を押さえて倒れ込みます

岩下09

ここで扇谷主審が笛を吹き事態を確認しました

映像で見るとイヤホンに手を当てています。
また、副審の方を向いているので副審に事情を確認したと考えるべきでしょう



②岩下敬輔の行為と主審の判定
岩下敬輔が清水航平に対して故意に接触したという点に異論はあまりないでしょう
清水航平が横切るタイミングで腕を振っているように見えますから

接触部位に関してははっきりとは分かりませんが、顔もしくは胸部、腹部。
ゴール裏からの映像では右肩もしくは右腕、右手をぶつけているように見えます

サッカー競技規則に照らし合わせれば「乱暴な行為」に相当すると考えるのが妥当でしょう

《サッカー競技規則 39ページ》 

退場となる反則
競技者、交代要員または交代して退いた競技者は、次の 7 項目の反則のいずれかを犯した場合、退場を命じられる。
 
●乱暴な行為 
《競技規則の解釈と審判員のためのガイドライン 127ページ》
 
乱暴な行為
競技者がボールに挑んでいないとき、相手競技者に対して過剰な力や粗暴な行為を加えた場合、乱暴な行為を犯したことになる
 
また、味方競技者、観客、審判員あるいはその他の者に対して過剰な力や粗暴な行為を加えた場合、乱暴な行為を犯したことになる。
 
乱暴な行為は、ボールがインプレーであるとないとにかかわらず、フィールド内またはフィールドの境界線の外側のいずれでも起こり得る。
 
明らかに決定的な得点の機会が続く場合を除き、乱暴な行為が犯されている状況ではアドバンテージを適用すべきでない。アドバンテージを適用した場合、主審は次にボールがアウトオブプレーになったとき、乱暴な行為を犯した競技者に退場を命じなければならない。
 
審判員は、しばしば乱暴な行為が集団的な騒動を引き起こすことに留意し、積極的に介入して、それが引き起こされないようにしなければならない。
 
乱暴な行為を行った競技者、交代要員、交代して退いた競技者には、退場が命じられなければならない。

余談ですが、競技規則には警告・退場の対象に「報復行為」という項目はないんですね。
他の事例では「報復行為」ではなく「乱暴な行為」として処分されているようです

【参考①】
磐田FW前田完封の横浜FMが6年ぶりの開幕3連勝!!

《ゲキサカ[講談社] 2015年5月13日閲覧》
【参考②】
報復行為で一発退場のC大阪FW南野、1試合の出場停止

《サッカーキング 2015年5月13日閲覧》

このシーンで清水航平の挑発があったという主張も見かけました(たぶん接触前のシーン)。
そうであっても「乱暴な行為」には変わりがないのでやはり退場処分が適当でしょう


しかし、実際には主審及び副審は退場処分にしていません。
これはあくまでも推測ですが、審判団は該当シーンを見ていなかったのではないでしょうか

岩下10

扇谷主審はボールの付近にポジションを取っていました(当たり前です)。
そしてボールの行方を確認した後、副審の方を見ているように見えます。
きちんとラインを割ったかを確認したのではないでしょうか

角度的にも扇谷主審は岩下敬輔と清水航平の方は見れないでしょう。
常識的に考えたら「乱暴な行為」が行われるはずのないシーンですから仕方ありません

このシーンで主審が責められるのはやはり酷というものでしょう。
22人全員のエリアを同時に90分間監視することなんて出来るはずがないんですから。
そんなことやってたらゲームなんて出来ませんよね

では副審は見ることが出来なかったのか

岩下07

先程の画像にも映っていますが副審はまずオフサイドのチェックをしていました。
そして、ボールがラインを割ったかの確認のためゴールラインまで走っています。
この状況で副審が確認するのもまた難しいのではないでしょうか

では第4審はどうかというと、言うまでもなく遠すぎて無理でしょう


扇谷主審はすぐに副審や選手に事態の確認をしているようでした。
また、後日Jリーグ規律委員会で審査されたことからも審判団が見れていなかったのでは。
この推測は外れてないと思います

審判団が岩下敬輔の行為をチェックするのは難しかった
というのが私の結論ですが、ではなんの処分もなくていいのでしょうか



画像マシマシで長くなったので2回に分けます。
次回は試合後のお話


※追記(2015年5月14日)
岩下敬輔の行為が「乱暴な行為」と判断する説明が弱かったと感じたので補足。
次回の説明にもありますが、今回の岩下敬輔の行為はJリーグ規律委員会の懲罰対象となっているため、まず間違いなく警告相当か退場相当の行為であるはずです

その上で、サッカー競技規則から警告となる反則と退場となる反則を確認してみます。
サッカー競技規則において、警告となる反則とは次の7項目を意味します

《サッカー競技規則 38ページ》 
 
警告となる反則
競技者は、次の 7 項目の反則のいずれかを犯した場合、警告され、イエローカードを示される。
 
●反スポーツ的行為
●言葉または行動による異議
●繰り返し競技規則に違反する
●プレーの再開を遅らせる
●コーナーキック、フリーキックまたはスローインでプレーが再開されるときに規定の距離を守らない
●主審の承認を得ず、フィールドに入る、または復帰する
●主審の承認を得ず、意図的にフィールドから離れる

この中で該当しそうなのは「反スポーツ的行為」だけでしょう。
そしてこの「反スポーツ的行為」について、競技規則の解釈と審判員のためのガイドラインでいくつか例示がしてありますが、該当しそうなのは「直接フリーキックとなる 7 項目の反則を無謀に行う」くらいです

じゃあ直接フリーキックとなる7項目の反則なのかというと…違います。
なぜかというとファウルとなる反則には基本要件が存在するからです

《競技規則の解釈と審判員のためのガイドライン 117ページ》
 
ファウルとなるための基本的条件
反則をファウルとして判断するためには、次の条件が満たされなければならない。
 
●競技者によって犯される
●フィールド内で起きる
●ボールがインプレー中に起きる

困ったことに岩下敬輔の行為はアウトオブプレー中。
インプレー中なのでこの反則には該当しないということになります。
なお、同じ理由で退場となる反則である「著しく不正なファウルプレー」も除外されます

一方、「乱暴な行為」はインプレーに限定していません。
したがって岩下敬輔の行為は「乱暴な行為」であり、退場相当であると考えられます

追記終わり


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