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"スタジアムは、街づくり"について本気出して考えてみた(前編)

①YUME★STA PROJECT
今回から3回ほど連続してスタジアムに関するテーマで投稿していきます。
肝心のテーマとは、第4回夢スタシンポジウムでも繰り返し強調されていたワード

"スタジアムは、街づくり"

この標語はYUME★STA PROJECTの根幹でもあります

YUME★STA PROJECT
《サンフレッチェ広島公式 2014年5月31日閲覧》

 『YUME★STA PROJECT』とは、「スタジアムは、街づくり」のコンセプトをお伝えする方を「エバンジェリスト=スタジアム伝道師」に認定させていただき、啓発キットを使って、1人でも多くの方に理解・賛同の輪を広げることを目的に販売しています

サッカースタジアム建設を実現するためにサポーターは何をするべきか。
その1つが、このエバンジェリスト活動であるとクラブは繰り返しています

しかしながら、そもそもこのコンセプトを理解しているサポーターはどれだけいるでしょうか。
第4回シンポジウムで小谷野社長が指摘していたことが1つの証左でしょう


自分自身でもよく分かっていない言葉で他人を説得するというのは至難の業。
語感の良さに頼るのではなく、きちんと理解しなくては賛同を得ることも叶いません

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サンフレッチェ広島より》

では、"スタジアムは、街づくり"とはいったい何なのか
本稿ではその意味を考えていきたいと思います。よろしければお付き合いください



②"スタジアムは、街づくり"とは何か
困ったことに"スタジアムは、街づくり"という言葉は、色んなところで使用されている割にはがっちり定義された表現ではないようです

例えば、サッカースタジアム検討協議会で採用されている日本政策投資銀行の資料、"スポーツを核とした街づくりを担う「スマート・ベニュー」"でも、「街づくりの中核」や「街づくりに寄与」という表現が使用されていますが、肝心の定義は不在

YouTubeで公開されている動画や、エディオンスタジアムで配布しているパンフレットでも"スタジアムは、街づくり"という文言が使われていますが、いまいちピンと来ません




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《エディオンスタジアムで配布されていたパンフレット》


1つのヒントになるのは、第2回サッカースタジアム検討協議会でも使用されたという、サンフレッチェ広島の"第3回夢スタジアムシンポジウム発表資料"でしょうか

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《サンフレッチェ広島 第3回夢スタジアムシンポジウム発表資料より》

地域活性化、経済効果、アウェイツーリズム、平和発信、防災拠点などなど。
スタジアム建設による直接的な影響は防災拠点くらいで、他は"サンフレッチェ広島を核とするスタジアム"だからこそ生まれる効果…すなわち間接的な効果とでも言いましょうか

しかし、これらはあくまでもサンフレッチェ広島の訴えている個別的な効果。
この主張だけを鵜呑みにするわけにはいきません



③"街づくり"と"まちづくり"
ならば、まずは"スタジアムは、街づくり"という言葉を理解することから始めましょう

"スタジアムは、街づくり"を考えるにあたって問題となるのは"街づくり"という言葉。
この言葉が分からなければ"スタジアムは、街づくり"の意義を理解することも出来ません

"街づくり"とは地域社会学における用語の1つです。
ひとまずスタジアムから離れて、地域社会学における"街づくり"の意義を見てみましょう

第4章 2.平仮名の「まちづくり」
《まちづくりと景観 105ページ 田村明》

 かつては「街づくり」「町作り」などの用語も併用されていたが、現在では平仮名の「まちづくり」が主流になった。平仮名の「まち」という言葉は、ハードだけでなくソフトも含む柔らかさがある市民的な用語だからだ。これなら、とくに専門用語を知らない一般市民でも、自分自身が「まち」にかかわりをもっていると実感しやすい。

初っ端から前振りを全否定する形になってしまいますが、実は、昨今の地域社会学において"街づくり"という言葉は余り使われなくなっているようです

"街づくり"や"町作り"ではなく、"まちづくり"。
これらは地域社会学上、異なる概念に位置付けられています

1-1まちづくりとは何か
《まちづくりの方法 2ページ 日本建築学会》

 漢字で表記される「町づくり」、「街づくり」は、その、源を引きずっている言葉でもある。「町づくり」は「村づくり」と同列に用いられる用語で、町村という、自治の単位で総合的な行政、町村の活性化などを表現する言葉で、内発的な開発による「町村の活性化」という、目的意識が強い。これに対して「街づくり」は、街路、商店街など物的な意味での市街地の環境整備といったニュアンスが強い。これに対してひらがなの「まちづくり」は、より広い概念で用いられる用語である。

このように"街づくり"は狭義な意味、"まちづくり"は広義な意味となるようです。
ハード整備に主眼が置かれる"街づくり"に対して"まちづくり"とは何を意味するのか。
まちづくりの方法における定義は次の通り

1-2 まちづくりの定義と10の原則
《まちづくりの方法 3ページ 日本建築学会》
 
定義:まちづくりとは、地域社会に存在する資源を基礎として、多様な主体が連携・協力して、身近な居住環境を漸進的に改善し、まちの活力と魅力を高め、「生活の質の向上」を実現するための一連の持続的な活動である。

これだけだとよく分からないので、もう少し噛み砕いた表現がこちら。
1987年刊行の名著、まちづくりの発想から

第1章 3.まちづくりの展開
《まちづくりの発想 23ページ 田村明》

 しかし、今日いう「まちづくり」はそうではない。そこに住んでいる人たちが自分自身の問題としてかかわりをもち、「つくって」ゆくべきだという積極的な姿勢が基本である。他人にまかせておいたのでは、好ましい「まち」はできない。住民は、まちの"借家人"ではなく"オーナー"であり、まちをつくる責任がある、という自覚の表現である。
 まちづくりの「つくる」とは、土木・建築的な物的な整備だけをいうのではない。まちを動かす仕組みや財政、自治組織、市民意識などのソフト面も含んでいる。そのため、ハードな物づくりだけを意識させやすい「造る」とか「作る」ではなく、「つくる」という平仮名が当てられる。ハード以外のココロや、シクミづくりの重要性が認識されてきた結果である。さらに積極的には、未来に向けて新しく「創る」という創造の意味もこめられている

すなわち、"まちづくり"とはハード整備だけを示すのではなく、ソフト面も含むもの。
その他の違いとしては、"まちづくり"とは官主導ではなくし民主導という意識を喚起する用語であることや、持続可能性・地域性などにも言及した概念であることでしょうか

そういった思想を持たないハード整備は"街づくり"に該当しても、"まちづくり"とは言えません


たしかに、スタジアムをつくるということはハード整備そのもの。
その意味で"スタジアムは、街づくり"という標語は間違っていません

しかし、そんな安直な結論でいいのでしょうか?



④幕間=スタジアムは、"街づくり"なのか"まちづくり"なのか
ここまでで押さえておくべきポイントは次の3つでしょうか

1つ目は、"スタジアムは、街づくり"は厳密に定義されているものではないということ。
サンフレッチェの配付している資料では情報不足です

2つ目は、地域社会学において、"街づくり"と"まちづくり"は別物であるということ。
"街づくり"は、"まちづくり"という概念の部分集合に近い存在のようです

3つ目は、"スタジアムは、街づくり"という表現ではハード整備に限定されるということ。
当然の話であるが故に、わざわざ強調するべきものか疑問を覚えます


さて、ここまでの話を踏まえてサンフレッチェの訴える"スタジアムは、街づくり"を考えてみると、"街づくり"だけでなく、"まちづくり"の視点が含まれているように感じられます

"スタジアムは、街づくり"ではなく、"スタジアムは、まちづくり"なのか?

次回はこのテーマで探っていきたいと思います


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