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"スタジアムは、街づくり"について本気出して考えてみた(中編)

①"スタジアムは、まちづくり"か?
前回から、"スタジアムは、街づくり"とはいったい何か?というテーマに取り組んでいます。
特に"街づくり"という部分に焦点を当て、地域社会学の分野を活用しながら考えてきました

その中で浮かんだ疑問から、"スタジアムは、街づくり"ではなく、”スタジアムは、まちづくり”なのではないか、という仮説が生まれたと言えるでしょう

しかし、"まちづくり"が具体的に何を意味するのかを説明するのは非常に難儀です。
まちづくりの実践では次のようなものが例示されています

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《まちづくりの実践33ページを元に作成》

これらを1つ1つ検証すると長くなってしまいますし、何より本題から逸れます

平仮名の「まちづくり」の十の意味
《まちづくりの実践 33ページ》

(2) ハードだけでなくソフトを含めた総合的な「まち」へ
 「まち」とは、モノの面でも多様なものがあるからトータルに考えてゆかなくてはならない。さらにモノやハコをつくるだけでなく、それを決めてゆく過程や方法も考えなければならないし、「まち」をどう生き生きしたものとして使ってゆくかという方法も重要だ。ハードの「街」は、ソフトがあってこそ、初めて有効に使われる。ソフトの面には「まちづかい」という意味もあり、ハードとソフトの両面を含む総合的なものとして「まち」を整えてゆくことである

そこで、多少強引ではありますが、今回は便宜的にソフト面に関する事例に主眼を当てることで、その可能性に言及したいと思います

それでは早速見ていくことにしましょう



②Jクラブと"まちづくり"の関係
スタジアムにおけるソフトの中で最も重要となるのはJクラブといって差し支えないでしょう。
本稿における重要な前提の1つであり、他のソフトに関する議論は様々な可能性が提示されているが故に決まったもの(固定的)ではないからです

では、Jクラブと"まちづくり"はどのような関係にあるのでしょうか。
Jリーグニュースプラス第14号で清水や福岡の事例が取り上げられています

「する」「みる」「語る」 の融合へ
《Jリーグニュースプラス vol.14 2014年5月31日閲覧》

 エスパルスは県内4カ所に展開するフットサルコート「エスパルスドリームフィールド」や、チケット、グッズを販売する「エスパルスドリームハウス」など、クラブの情報発信拠点を多く設けている。これは、ただ単にフットサル場やオフィシャルショップを整備することではなく、エスパルスを中心としてサッカーを「する」「みる」「語る」場を地域の人々に提供したいという想いがある。「エスパルスを通じ、地域の人々がコミュニケーションを深める場をつくりたかった。情報発信や販売目的だけではなく、そこに人々が集い、一緒に体を動かすことで、地域に新しいコミュニティが生まれる土壌を育てたい」と早川社長は語る。すべての施設に「エスパルスドリーム」の名前が付されているように、“夢のある幸せなまちづくり”の中心になることを、クラブは願っているのである。
福岡のまちが持つ財産
《Jリーグニュースプラス vol.14 2014年5月31日閲覧》

 「“まちづくり”や“人づくり”は、行政の普遍的な課題。一方スポーツは、人を育て、地域を育て、社会を育てる力があり、その課題を解決できるソフトになれる。サッカーに限る必要はなく、あらゆるスポーツを通じた“人づくり”をアビスパが支えることで、福岡のまちを元気にできるはずだ」と下田専務は考えた。

清水の場合、新たなコミュニティ形成のための場を作っています。
福岡は"まちづくり"の中でも"人づくり"に着目し、ホームタウン事業を数多く実施。
前者はマチ社会とその仕組みづくり、後者は「まちづくり」を担うヒトづくり、にリンクします

どちらの事例も"スタジアムは、まちづくり"には該当しませんが、Jクラブが能動的に取り組むことで"まちづくり"に貢献できることを示しています


川崎フロンターレはストレートに"クラブづくりとまちづくり"というコンセプトを掲げています

(註記)
場合によっては"街づくり"と表記していることもあるが、深い意味はなさそう


《Jリーグニュースプラス vol.10 2014年5月31日閲覧》 
 
 オリンピックで日本代表を応援するときに、「なぜ日本を応援するの?」と聞く人はいない。理由は自分も日本人だからだ。甲子園で、地元代表の高校を地域を挙げて応援することも、自分たちのまちを背負って戦う球児たちに身近なものを感じるからだろう。「このまちでフロンターレもそういう存在にしていきたい。川崎に住んでいるのだから、そのまちに根づくクラブを応援することが当たり前と思われるように。いつか、『川崎=フロンターレ』とまで感じてもらえるように。そのためにも、まずは自分たちが住む川崎というまちへの愛着を、もっとみんなに感じてもらうことが大切」と、天野課長は話す。
 「チケットを買ってください」「スポンサーになってください」「クラブを応援してください」と、一方的にお願いをしても、地域からの信頼はすぐには得られない。こちらから頼むばかりではなく、地域の一員としてクラブがホームタウンに貢献できることは何か。彼らと共にまちを盛り上げていけることは何か。そのことを常に考えた活動を行っていくことで、地域から本当の信頼を得ることができる。フロンターレは強化担当も、広報担当も、運営担当も、後援会担当も、皆がホームタウンを意識する気持ちが強い。かつて天野課長がいた「ホームタウン推進室」といった専任部署は今や存在しない。スタッフ全員がホームタウン担当者であり、武田社長もその一人だ。遠回りのようにも見えるが、日々の地道な地域密着活動こそ、スタジアムを満員にするための一番の近道なのかもしれない。だからこそ、クラブづくりとは「まちづくり」なのである。

Jリーグの代名詞とも言われる"地域密着"の最先端をいく川崎ならではの事例ですね

川崎だけでなく、清水や福岡の事例でもキーワードとなっていたのが"誇り"という言葉。
「地域への愛着」や「地域のシンボル」とも言い替えることが出来ます

これを"シビック・プライド(civic pride)"と呼びます

シビック・プライドとは、まちに対する愛着や誇りを意味します。
"おらがまち"というキャッチフレーズもシビック・プライドの典型例ですね


シビック・プライドは"まちづくり"において非常に重要な位置を占めています。
自分たちの"まち"に誇りを持つことで、"まち"に対して主体的に関わる意識が生まれます。
それが主にソフト面の"まちづくり"においては欠かせません

これは、個性的で主体性ある「まち」へだけでなく、"まちづくり"全体にも関係する要素です


④シビック・プライド
広島にも、この"シビック・プライド"の事例は存在しています。
その代表例とも言えるのが横川駅及び横川駅商店街ではないでしょうか

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《中国新聞 2007年3月11日2面》

これは2007年の記事。それから約7年の月日が経ちました

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《2014年4月16日 横川本通りにて撮影》

たまたま立ち寄ったときに撮影しましたが、これはホーム試合とは関係ない日。
今シーズンのスローガン「全力」の幟があちこちに立ち並んでいます

シャトルバスも定着し、試合日に改札口近くのむさしが大繁盛しているのも当たり前。
サンフレッチェの"まち"と呼ぶに相応しい光景ですね


もう1つの事例としては沼田町のバイオレットタウンNUMATA推進事業があげられるでしょう

バイオレットタウン委員会
《沼田町商工会青年部 2014年5月31日閲覧》

事業目的 内容
 平成23年度から新事業(バイオレットタウンNUMATAプロジェクト)がスタートしました。それに伴いバイオレットタウンNUMATAプロジェクト委員会も同時に立ち上がりました。サンフレッチェ広島の幟旗の設置及び周辺清掃、沼田町盆踊り大会、いきいき沼田商工フェスタ、ふるさと祭り等でのバイオレットタウンサポートショップの紹介、選手による盛り上げ等を行っております。主に沼田町の商工業を活性化するためにいろいろな企画を考えてやっております。これからも、ますます面白い企画を考えて実行していきたいと考えております。
第4章中国地域各県の取り組み 第4節広島県
《中国地域経済白書2013 97ページ 中国地方総合研究センター》

②沼田町商工会
 広島市安佐南区の沼田町商工会では、地元にホームスタジアムがあるJ1のサンフレッチェ広島を応援し、地域の活性化を目指す「バイオレットタウンNUMATA推進事業」を展開している。
 活動としては、商工会青年部と地元の広島修道大学学生が連携し、商工会だよりへ掲載する「バイオレットタウン」情報の収集、ホームゲーム開催に合わせた応援幟の設置などを行っている。今後は、選手によるサッカー教室の開催や、サンフレッチェ広島の試合観戦ツアーなどが計画されている。

横川駅は多少距離がありますが、スタジアムへの交通の要所として機能していることを考えると、どちらも"スタジアムは、まちづくり"の事例と言っていいのではないでしょうか


これは地元主体だけでなく、サンフレッチェも率先して推し進めています

1)クラブについて(小谷野薫社長)
《第11回サポーターズカンファレンス》

【プレゼンスの拡大について】
 また、話は変わりますが、経営上のさらなる課題として付け加えるならば、これは明確に数字に表れるものではありませんが、サンフレッチェの広島におけるさらなるプレゼンスの拡大が挙げられます。昨年はおかげさまでクラブ創設20周年で初優勝しましたが、広島の街にまだまだ紫が少ない。街に「もっと紫を」ということで、試合の告知やサンフレッチェを応援する気運をさらにどうやって盛り上げていくのか、クラブとして知恵を出さなければいけないところだと考えています。またサポーターの皆様からもどんどん意見を伺っていきたいところだとも思います。

「広島の街 に、もっと紫を」というキャッチコピーがまさにそれ。
もちろんサンフレッチェそのものの周知も狙いとしてはあるでしょうが、幟の設置、ポスターの掲出、ポケット日程表の設置をするショップの人々にも働きかけているはずです

こうした地道な活動も"まちづくり"の1つと言って差し支えないでしょう



⑤幕間=作って終わりではないということ
今回、"スタジアムは、まちづくり"ではないか、というテーマで進めてきました

その中で、Jクラブと"まちづくり"の関係性はある程度解説してきたつもりです。
ヒトづくり、コミュニティ形成、シビックプライドなど様々な形が出てきました。
一方、スタジアムならではの"まちづくり"にはあまり触れることが出来ていません

"スタジアムは、まちづくり"は実現可能であると結論づけても良いでしょう。
ただし、それはスタジアムでなくても出来るのではないかという反論も可能です


スタジアムで出来る"まちづくり"とは何か、と具体的に考えるとキリがありません。
それは冒頭でも述べたとおりで、"まちづくり"とは非常に広範囲な概念だからです

そのハードに適した"まちづくり"があるはずですし、そのソフトに適した"まちづくり"があるはずですし、その"まち"に適した"まちづくり"があるはずです

では、"スタジアムは、まちづくり"であると主張するのは困難なのでしょうか?

私は、そんなことはないと考えています。
「"スタジアムは、まちづくり"は実現可能である」ということは、"スタジアムは、まちづくり"は実現可能だが、実現するために努力を重ねなければ実現できない可能性もあると言い替えられることが出来るはずです

1-2 まちづくりの定義と10の原則
《まちづくりの方法 3ページ 日本建築学会》
 
定義:まちづくりとは、地域社会に存在する資源を基礎として、多様な主体が連携・協力して、身近な居住環境を漸進的に改善し、まちの活力と魅力を高め、「生活の質の向上」を実現するための一連の持続的な活動である。

"まちづくり"が持続的な活動である理由の一端はここにあるのだと思います

スタジアムを作れば常に"スタジアムは、まちづくり"が達成できるわけではない。
だからこそ、"スタジアム作りは、まちづくり""スタジアム建設は、まちづくり"ではなく、あえて"スタジアムは、まちづくり(街づくり)"と表現しているのかもしれません


"スタジアムは、まちづくり"とは事実を示しているのではなく、目標だと考るべきもの。
すなわち、スタジアムは、作って終わりではないということなのです



さて、次回はここまでの話を踏まえ、どのように"まちづくり"に関わればいいか。
ハード面からも理想のスタジアム像とは何かという点について考えていきたいと思います。
ラスト1回よろしくお付き合いくだされば幸いです

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