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経営問題

クラブライセンスの交付とアカウンタビリティ

今回は久しぶりにスタジアムの話から離れてクラブライセンス制度について

先日、申請したいた全41クラブにJリーグクラブライセンスが交付されました。
(カマタマーレ讃岐は事前に申請を取り消しています)

CL08

交付にあたって、Jリーグから交付にあたってのリリースが出ています。
それに触れながら今回の交付について少しばかり雑感を。
本当はJ1ライセンスとJ2ライセンスの話もしたかったのですがスペースの都合上カット

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①サンフレッチェクラスタとしての雑感
サンフレッチェ広島にも無事J1ライセンスが交付されました。
前節の結果によりJ1残留圏が確定したため来期もJ1で戦うことになります。
が、実はサンフレッチェにはライセンス交付にあたり2点ほど心配な点がありました

1点目は施設の件。
先日の第9回サポカンでBAの照明設備について次のような説明が

1)クラブについて : サポーターズ・カンファレンス議事録
《サンフレッチェ広島 2012年10月7日閲覧》

【クラブライセンス制度について】
クラブライセンスについての必要書類は6月末にすべてJリーグに提出しました。現在、問題とされる部分はありません。懸念のひとつだったスタジアムの照明の照度について「来年の開幕までには1500ルクス以上にします」という回答をいただいています。

この照明設備については後日新聞にも出ていましたが、補修されるそうです

20120906 中国新聞26面 ビッグアーチ照明補修へ
《中国新聞 2012年9月6日26面》 

また、BAはご存じの通り屋根の要件を満たしていないことが明白。
B等級の基準であるため、交付はされますが制裁の可能性がありました

I.13 スタジアム:屋根(pdf注意)
《Jリーグ クラブライセンス交付規則 2012年10月7日閲覧》

(1) スタジアムの屋根は、観客席の 3 分の 1 以上が覆われていることが推奨される。
(2) 前項にかかわらず、スタジアムの屋根は、すべての観客席を覆うことが望ましい。

これについては次項で触れますが、文書提出で済んでほっと一安心

2点目は財務状況…つまり、債務超過と単年度赤字の件。
クラブライセンス制度において債務超過である場合は一発アウトとなります。
(ただし、債務超過は2014年度決算より判定)

F.01 年次財務諸表(監査済み)(pdf注意)
《Jリーグ クラブライセンス交付規則運用細則 2012年10月7日閲覧》

3.判定
(2) 提出された財務諸表に基づいて審査を行い、以下のいずれかに該当する場合は基準 F.01 を満たさないものとする。
① 3 期連続で当期純損失を計上した場合。ただし、判定は2012 年度決算より開始し、それ以前の年度は判定対象としない
② ライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度末日現在、純資産の金額がマイナスである(債務超過である)場合。ただし判定は 2014 年度決算より開始し、それ以前の年度は判定対象としない
③ Jリーグからの指摘に基づき、過年度の決算の修正が必要となった場合において、過年度の決算を修正した結果、前 2号に示す事態となった場合

債務超過に関しては先日減資→増資を行ったことで回避。
単年度赤字は問題ではありませんが3期連続の赤字でアウトなので避けたいところ。
ただ、これに関しては2012年度決算が不明なため現状何とも言えません

今回の交付により、暫くは財政状態さえ安定すれば大丈夫なのではないでしょうか。
もちろん、基準が大きく変更されない限り…という前提がつきます

②B等級基準未充足に伴う制裁について
前項でも少し触れましたが、B等級未充足に伴う制裁が今回発表されました。
B等級の基準とは、制裁の可能性はあるがライセンス交付はされる基準のこと。
今回、制裁の内容は「文書提出」となっており、今後の方針の一端を示したと言えます

クラブライセンス交付第一審査機関(FIB)による 2013シーズン Jリーグクラブライセンスの交付について
《Jリーグ公式 2012年10月7日閲覧》

■判定に付帯する事項
(2) B等級基準未充足
ライセンス基準のうち「B等級」に指定されている基準(3つ)については、それを充足していなくてもライセンスは交付される。
ただし、クラブライセンス交付規則第7条および第15条に基づき、B等級の基準をひとつでも充足していないクラブには、ライセンス交付と同時に制裁を科すこととなっている。

B等級未充足 
B等級基準(特にスタジアムの屋根の大きさ・トイレの数)を充足していないクラブに対し、ライセンス交付と同時に制裁が科される。(※対象:36クラブ)

【注】クラブライセンス交付規則の用語上、「制裁」という厳しい言葉になっているが、本件における制裁の内容は「文書提出」である。
具体的には、「2013シーズンにおいて使用することを予定するスタジアムの衛生施設および屋根の不足を理由とする観客に対するホスピタリティの欠如に対し、クラブが実施しているまたは実施を予定しているホスピタリティ向上策について、2012年10月31日までに書面で回答すること(ライセンス事務局が受付、FIBへ送付)」となっている。 

上記のように今回特にB等級で満たしていなかったものはスタジアムの屋根とトイレ。
これはスタジアムの問題なのでクラブがすぐ改善できるようなものではありません。
Jリーグがどのような対応をするのかに注目していました

個人的には、この辺で収めておいて正解だったと思います。
「ホスピタリティの欠如」なんて言い回しは反感買いそうですけどね。
「十分なホスピタリティを提供できなかったこと」とかにすればいいのに

また、「文書提出」が第8条の制裁項目のどれにあたるのかは不明です

③クラブ経営上の指導について
ライセンス決定会議においてFIBの決定は4種類あります。
交付、指導付交付、制裁付交付、交付なし。それが定められているのが交付規則運用細則

フロー11(pdf注意)
《Jリーグ クラブライセンス交付規則運用細則 2012年10月7日閲覧》

(1) ライセンス決定会議の結果、FIBはライセンス申請者に対し、以下のいずれかの決定を出し、交付規則第 26 条第 1 項に基づき、9 月 30 日までに当該ライセンス申請者に文書(「FIB決定書」)にて通知する。
① Jライセンスを交付する、または交付に付帯して是正指導を行う (フロー 11-A)
② Jライセンスを交付し、あわせて「B」等級未充足に対する制裁を科す (フロー 11-B)
③ Jライセンスの交付を拒絶する (フロー 11-C)

Jリーグから公表されたもののうち、「クラブ経営上の指導」が是正指導にあたります。
今回は「是正通達」と「個別通知」の2パターン。是正通達の方が重く、重複もあるそうです

クラブライセンス交付第一審査機関(FIB)による 2013シーズン Jリーグクラブライセンスの交付について
《Jリーグ公式 2012年10月7日閲覧》

(3) クラブ経営上の指導
ライセンス判定には直接関係ないが、判定に際し、クラブに経営改善を促す目的で、FIBが独自に指導を行うことができる。
指導には「是正通達」または「個別通知」があり、是正通達のほうが重い指導となる。また、クラブの経営状況に合わせ、是正通達と個別通知の両方を出すこともある。

内容是正通達
(※対象:9クラブ)
ライセンス交付判定に付帯して、クラブ経営上是正すべきと思われる点について、FIBが対象クラブに通達を出す。通達の内容は公表する。

個別通知
(※対象:13クラブ)
是正通達とまではいかないが、FIBからのクラブ経営上改善を要請する旨の指摘があった場合、それを受けたライセンスマネージャーが対象クラブに個別に指摘事項を通知する。

この中身ってどんなものなんだろうなと思ったら岐阜新聞の記事に載っていました。
全部が全部こうではなく、おそらくクラブごとに内容が異なるんじゃないでしょうか

FC岐阜に来季のJ2ライセンス交付 設備改善計画提出へ
《岐阜新聞 Web 2012年10月7日閲覧》 

 さらにライセンス交付に際しては、第一審機関(FIB)から「債務超過の解消のほか、単年度黒字化計画を立案の上実行するよう、当面の間はJリーグがクラブ経営を指導する」という是正通達2 件を受けた。通達を受けたのは、J2では岐阜を含めて3チーム。

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④終わりに=Jクラブのアカウンタビリティ
ということで駆け足で今回の決定を見てきました。
冒頭でも書きましたが、J1・J2ライセンスの差とスタジアムキャパの話は都合上カット。
大分と長崎の条件付交付の話も出来ればやりたかったのですが。
初めての決定ということで今後のライセンス運用上重要な部分に注目してみました

さて、今回の発表でB等級基準未充足クラブが36あるそうです。
「是正通達」を受けたのは9クラブ、「個別通知」があったのは13クラブ。
皆さんが応援しているクラブの結果はご存じですか?

私が調べた範囲で分かったのは次の通りです。
(岐阜新聞と日本経済新聞で食い違いがあった分は日本経済新聞を優先しています)

CL09

【参考①】
全クラブにライセンス交付 北九州など来季J1参戦不可能に
《MSN産経ニュース 2012年10月7日閲覧》

3期以上連続の赤字決算となった横浜Mや神戸などは審査機関から是正を通達された。

【参考②】
FC岐阜に来季のJ2ライセンス交付 設備改善計画提出へ
《岐阜新聞 Web 2012年10月7日閲覧》

【参考③】
全クラブにライセンス Jリーグ、財務など審査
《日本経済新聞 2012年9月29日37面》

いかがだったでしょうか?
ローカルニュースなどではもう少し明らかになっているのかもしれませんね


今回の決定結果を知るために最も役立ったのは新聞です。
10月2日付で全クラブの公式HPを見て回りましたが余りにも情報が出ていません

Jリーグ全40クラブ中、公式サイトでプレスリリースを出したのは半分にも満たない18クラブ。
うち、「B等級基準未充足」を公表したのは、栃木・松本・鳥取・岡山・熊本の5クラブ
「クラブ経営上の指導」を公表したのは栃木と熊本のみでした

(注記)
18クラブの内訳は、水戸・栃木・草津・大宮・東京V・町田・松本・岐阜・京都・神戸・鳥取・岡山・徳島・愛媛・福岡・北九州・鳥栖・熊本
リリースを出したが分かりにくいor10月3日以降に発表…に関してはチェックできていない
また、調査ミスの可能性は十二分にあることは大前提

今回の決定について、公式サイトで報告していないクラブがこんなにあることに驚きました

確かにクラブライセンス制度で突然ライセンス交付がない事態は考えにくいとは言えます。
基本的に6月の申請から時間をかけて審査していますし、不備があればヒアリングもあります。
一番厳しいとされる財務基準も事前にある程度分かるはずです

ですが、クラブライセンス制度はクラブ存続にかかわる重要事。
サポーター、ファンだけでなく株主やスポンサーだって気にするところでしょう。
多くのクラブには「アカウンタビリティ」の意識が欠如していると言わざるを得ません
(こういう意味で使う「欠如」が正しいと思う)


「アカウンタビリティ」とは日本語で説明責任という意味。
会計的な責任を利害関係者に説明しなくてはならない…というような意味が原義です。
現在では利害関係者に対する活動報告の説明責任まで広く取られることがあります

今回の決定に際して、水戸北九州の2クラブに加えて町田鳥取鳥栖は極めて誠実な発表をしたと言えると思います。
各クラブのリリースを見れば、5クラブのフロントが誰を見ているかが伝わってくるでしょう

J1でリリースを出したのは大宮と神戸、鳥栖のみ。
別に経営危機だから、交付が危ういからリリースを出すべきだという話ではありません。
普段からこのような重大なことは発表する意識を持つことが大事

アカウンタビリティをきちんと果たすことは「理想」ではあると思います。
しかし、クラブは何故存在しているのか…それを問い続ければ自ずと必要になるでしょう。
クラブライセンス制度をただ乗り越える壁と思うのではなく、良い機会に出来れば良いのですが


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第9回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く【終】

長かったクラブライセンス交付規則もこれで最終回

前回までで一応全部見たつもりだったのですが、一箇所抜けがありました。
それを最初にやっつけてから全体の総括に入りましょう

今回新しく扱うのは交付規則第7条です

MOKUJI

第1回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第2回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第3回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第4回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第5回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第6回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第7回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第8回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第9回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く

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①クラブライセンス制度とは
クラブライセンス制度とは、2013年からスタートするJリーグの認証制度のこと。
大ざっぱに言うと、クラブがちゃんと経営できてるかチェックするぞという話

具体的に言うと、交付規則第7条に全てがまとめられています

第 7 条 〔審査上の基準と等級〕
 
(1) Jライセンスの交付に関する審査は、以下の 5 つの基準(以下「ライセンス基準」という。)について行われる。これらの各ライセンス基準は、J1クラブライセンスとJ2クラブライセンスとで求められる内容が異なることがある。
 
① 競技基準(第 8 章)
② 施設基準(第 9 章)
③ 人事体制・組織運営基準(第 10 章)
④ 法務基準(第 11 章)
⑤ 財務基準(第 12 章)

これら5つの基準を満たすことでクラブライセンスが発行されるという制度。
ライセンスの種類については第3回で見ていますが、要するにスタジアムの収容人数ですね

第 7 条 〔審査上の基準と等級〕
 
(2) 前項の各ライセンス基準には以下の 3 つの等級に分けられ、各等級の定義はそれぞれ以下のとおりとする。
 
① A等級
A等級基準はライセンス申請者による達成が必須のものである。ライセンス申請者によるA等級基準の未充足は、当該ライセンス申請者へのJライセンスの交付拒絶事由を構成するが、当該ライセンス申請者に対して本交付規則第 8 条に定める制裁は科されない。
 
② B等級
B等級基準はライセンス申請者による達成が必須のものである。ライセンス申請者によるB等級基準の未充足は、当該ライセンス申請者へのJライセンスの交付拒絶事由を構成するものではないが、当該ライセンス申請者に対しては本交付規則第 8 条に定める制裁が科され得る。
 
③ C等級
C等級基準は、ライセンス申請者による達成が推奨されるものであり、将来において、達成が必須のものと改められる可能性があるものである。ライセンス申請者によるC等級基準の未充足は、当該ライセンス申請者に対するJライセンスの交付拒絶事由を構成するものではなく、また、当該ライセンス申請者に対して本交付規則第 8 条に定める制裁が科されるものでもない。

それらはA等級、B等級、C等級の3段階で設定されています

A等級は、満たさなければライセンスは発行されません
B等級は、発行はされますが代わりに制裁があるかもしれません
C等級は、目標水準なので発行・制裁ともに現段階では関係ありません

これらの詳しい中身はすでに触れてきました。
簡単に言えば交付規則第7条の水準を満たすか否かという話がクラブライセンス制度。
私たちサポーターにとっては、それが一番大事なことでしょう

長々とやってきましたが、つまりはそういうこと

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②これまでの概要
さて、ここまで8回にわたってクラブライセンス制度を見てきました。
そこで扱った内容をまとめると以下の通り


第1回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
◆交付規則公開前の大ざっぱな流れ
資料:平成22年度 第2回理事会 協議事項 (2010.5.20) など

第2回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
◆クラブライセンス制度の目的
資料:交付規則第4条、AFC規則第1.1項 など

第3回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
◆CLAなどのクラブライセンス制度に関わる用語の説明
◆ライセンスの付与、有効期間、種類など
資料:交付規則第10条~第23条、別紙1

第4回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
◆ライセンス制度上の制裁
◆ライセンスの申請から交付までのフロー
資料:交付規則第8条、第24条~第27条、別表1

第5回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
◆施設基準
資料:交付規則第34条

第6回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
◆競技基準、人事体制・組織運営基準、法務基準
資料:交付規則第33条、第35条~第36条

第7回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
◆財務基準
資料:交付規則第37条、交付規則運用細則

第8回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
◆クラブライセンス決定会議
◆競技基準、施設基準、人事体制・組織運営基準
◆AFC規則等との関係
資料:交付規則第2条、第25条、第27条、第29条、別紙1、交付規則運用細則


こうしてみると、交付規則で触れたのは、第2条、第4条、第7条~第8条、第10条~第27条、第29条、第33条~第37条、別紙1、別表1、交付規則運用細則ということになります

交付規則は現在全42条から構成されているのですが、見れなかった部分も多々あります。
多くは、定義などであまり重要性が高くないものだと考え外したものです。
一方で準加盟クラブの話(第20条)やAFC関連の項目(第7章)も見る余裕がありませんでした

一連の流れとして見ようと思っていたので、どうしても拾いきれなかった論点があります。
(前項のように拾い忘れはもう多分きっとないはず)

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③クラブライセンス交付規則のススメ
今回のシリーズでは、クラブライセンス制度の一部をピックアップする形を取りました。
クラブがライセンス交付を受ける上で重要なところを中心に見たかったというのが一点。
そして何より、分量の多さ(全体で実に116P)も大きな理由です

でも、別の読み方だって出来るはずです

Jリーグクラブライセンス交付規則

序文
第1章 総則
第2章 手順
第3章 ライセンス交付機関(ライセンサー)
第4章 ライセンス申請者
第5章 ライセンス
第6章 ライセンス申請手続(コアプロセス)
第7章 AFCクラブ競技会への出場資格
第8章 競技基準
第9章 施設基準
第10章 人事体制・組織運営基準
第11章 法務基準
第12章 財務基準
第13章 雑則
別紙1 定義集
別表1 Jリーグ クラブライセンス 申請から交付までのフロー
Jリーグクラブライセンス交付規則運用細則

1.総則
2.運用細則
3.ライセンス申請フロー
4.FIBの審査手続
5.ABの審査手続
6.雑則

 各種書式

これらは交付規則及び交付規則運用細則の章立て。
この流れに従い、順々に見ていく読み方もあるでしょう(というかそれが王道)

CL08
CL09

これらは運用細則にあるフローチャートと提出書類の書式です。
こういった資料に基づいて実務的に読む読み方も有用だと言えます

当ブログで取り上げたのはクラブライセンス制度のほんの一面でしかありません。
是非興味を持った方は交付規則だけでもいいので読んでみてください。
幸い、この条文は非常に厳密に定められているため、読みやすい部類ですよ

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④クラブライセンス制度実施を受けて、我々サポーターのするべきこととは
このクラブライセンス制度始動にあたって、サポーターのするべきこと、出来ることは何か。
このシリーズをまとめながら数ヶ月ずっと考えてきました。
結論から言うと、正直言ってあまり多くはないと思います

今までと変わらず試合を見に行ってグッズを買い、仲間を観戦に誘うこと。
そして、もしクラブがスタジアム建設運動を進めているなら署名活動もあります

【参考】
サッカー専用スタ実現へ訴え
《2012年9月13日閲覧 中国新聞》

これらに加えてチェック機能の一つとなることが重要になってくるのではないでしょうか

サポーターは直接的にクラブに影響することは出来ません。
しかし、サポーターズミーティング等を通してクラブに意見をあげていくことは出来ます

我々サポーターはただの客ではありません。クラブとともに生きていく存在です。
どうすればクラブをより良くしていけるかを一緒に考えていく。
そういった役割をしっかりと果たし、意識を高くしていくことが大事なのではないか

そういう思いを強くしました

佐藤寿人のディナモ・ザグレブ移籍を考察する
《12年9月13日閲覧 クロアチア・サッカーニュース (& リトアニア・サッカーニュース)》

「フロントと選手は通り過ぎる存在で、残るのはディナモと俺たちだけだ」

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以上で「Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く」シリーズを〆たいと思います。
ここまでお付き合いいただきありがとうございました

今後もこのような形でブログを更新していく予定です。
もしよろしければご一読ください

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第8回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く

今回は全体の補足をしていく回になります。
あんまり面白いものにはならないので、さくさくっといきましょう

MOKUJI

第1回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第2回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第3回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第4回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第5回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第6回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第7回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第8回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第9回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く

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①クラブライセンス決定会議
1つ目は、クラブライセンス決定会議(以下、「決定会議」という。)に関する規定。
範囲は交付規則第25条及び第27条

クラブライセンス決定会議とは、コアプロセス(=ライセンス申請手続)の1つ。
これには2種類存在し、FIBによるものとABによるものがあります

第 25 条〔ライセンス申請書類の審査〕

(6) CLAは、調査終了後、FIBによるクラブライセンス決定会議を開催する。FIBは、ライセンス申請者に対するJライセンス交付の可否および制裁の有無・内容について決定する。FIBは、ライセンス申請者に対し、申請内容に関する事実関係を明らかにする目的で別途ヒアリング調査を行い、また、追加資料の提出を命じることができる。

こちらはFIBによる決定会議。
クラブライセンスにおける第1審みたいなものですね

第 27 条〔上訴〕

(3) CLAは、審問期日終了後、ABによるクラブライセンス決定会議を開催する。ABは、ライセンス申請者に対するJライセンス交付の可否、制裁の有無・内容について、上訴申立受理日から 30 日以内に決定する。なお、ABの決定は、FIBの決定より上訴人に不利益なものであってはならない。ただし、LMとライセンス申請者またはライセンシーの双方が上訴している場合はこの限りでない。

(4) ABによるクラブライセンス決定会議では、FIBによる決定のみを審査対象とし、審査は、上訴申立時までにFIBまたはABに提出されたライセンス申請書類(上訴申立書およびそれと同時に提出された証拠を含む)およびFIB決定書ならびにFIBおよびABの審問期日において顕れた一切の記録のみに基づいて行われる。

上訴については第4回でも交付規則第27条の一部に触れています
こちらはクラブライセンスにおける控訴審のようなもの

交付規則第27条第4項にあるように、あくまでもFIBの決定についてのみが審査対象です

FIBの決定会議とABの決定会議はコアプロセスの肝。
この2つの会議で運命が分かれるクラブも今後出てくるかもしれません

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②各種基準の運用細則上の注意点
各種基準については交付規則を中心に見ていきました。
しかし、財務基準のように運用細則の方で定められている大事な点もあります。
そこを簡単に取り上げていきましょう

S.01 承認されたアカデミープログラム

3.判定
(1) ライセンス申請者がJクラブである場合、Jリーグは、前条の審査に合格したライセンス申請者に対し、原則として 6 月 30日までに「アカデミー認定」を行い、その後、アカデミー支援金を交付する。当該アカデミー認定をもってライセンス申請者は基準 S.01 を満たすものとする。ライセンス申請者がJリーグ準加盟クラブである場合も同様に、前条の審査に基づいて判定を行うが、アカデミー支援金は交付されない。

まず1個目は、競技基準。
ここにある「アカデミー支援金」というものが従来あったものかちょっと不明です。
ないとは思いますが、もしかしたら新しい規定なのかも

(注記)
Jリーグ配分金の内訳は、賞金、商品化権料、放送権料、公式試合出場料となっている。
このため、配分金にアカデミー支援金が含まれているとは考えにくい


I.09 トレーニング施設

4.基準 I.09 に関するその他の遵守事項および注意事項
(1) 基準 I.09 にいうトレーニング施設のピッチには、夜間照明が設置されていることが望ましい。
I.10 アカデミーのトレーニング施設

4.基準 I.10 に関するその他の遵守事項および注意事項
(1) 基準 I.10 にいうトレーニング施設には、夜間練習が可能なよう、照明が設置されたピッチが設けられていなければならない。

続いて施設基準からトレーニング施設の規定。
なぜか、トップチームとアカデミーでは違いが出ています。
しかも、アカデミーのトレーニング施設の方が「ならない」規定と厳しいもの

これは、おそらくアカデミーに所属している子供は昼間学校があるため、夜間に練習することが多いのではないかという配慮から作られたのかと推測できます。
ちなみにこれらはA等級なので必須要件です

P.04 運営担当(オペレーションオフィサー)

4.基準 P.04 に関するその他の遵守事項および注意事項
(4) 運営担当(オペレーションオフィサー)は、基準 P.05 のセキュリティ担当と兼務できる。

最後は人事体制・組織運営基準から運営担当に関する規定。
当然逆(セキュリティ担当)の方にも書かれています

他の担当では認められていませんが、この2つは業務内容が重なる部分があるからだと推察。
当然、資格や実務経験はそれぞれ必要ですが

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③交付規則とAFC規則等との関係
交付規則は、第2回でも一部紹介した2010年に公開されたAFCの「AFC Club Licensing Regulations」をもとにしている節があります(全部は読んでないけど多分そう)。
最後にその辺りを簡単に見ていくことにしましょう

第 29 条〔AFCクラブ競技会への出場資格の承認〕

(1) Jライセンスを交付されたクラブは、国内競技会の結果、AFCクラブ競技会への出場資格を得ることを条件として、AFCライセンスを交付されたものとみなされる。

例えばこんな感じ。
交付規則第7章は「AFCクラブ競技会への出場資格」となっています。
このAFCクラブ競技会とは、ACLなどの大会のこと

別紙1

「AFCクラブ競技会」とは、AFCチャンピオンズリーグ、AFCカップおよびAFCプレジデンツカップの総称を意味する。

恥ずかしながら「AFCカップ」と「AFCプレジデンツカップ」の存在はよく知りませんでした。
各国のレベルに応じて出れる大会が違うようですが、本題から外れるのでこの辺で

第 2 条 〔AFC規則との関係〕

(1) 本交付規則は、AFC規則の定めに従って、Jライセンスのみならず、AFCチャンピオンズリーグの出場資格(以下「AFCライセンス」という。)に関しても必要な事項を定めるものである。この関係において、本交付規則は、AFC規則に規定されるAFCライセンスの各基準およびライセンス交付プロセスにおける必須要件を全て規定する。

今更感のある交付規則第2条。
このように、JリーグのライセンスはAFCのものと同等か厳しめになっていると予想されます。
まぁ、逆はあり得ないので当たり前と言えば当たり前ですが

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以上、全体の補足回でした。
意外と重要な点があったのですが、編集中に気づかなかったのでこんな形でご紹介。
対して、用語解説はざっくりとやったと思うのでカットの方向で

次回=最終回はクラブライセンス制度の全体総括をやって〆たいと思います。
それではまた来週

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第7回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く

各種基準の話も今回で最後

第7回はクラブライセンス制度の要となる財務基準…範囲は交付規則第37条。
今回は分かりやすくするために運用細則の方にも触れていきます

MOKUJI

第1回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第2回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第3回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第4回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第5回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第6回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第7回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第8回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第9回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く

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まずは財務基準の目的など。
交付規則第37条第1項~第3項がそれに当たります

第 37 条〔財務基準〕

(1) 財務基準の目的は以下のとおりとする。
① クラブの経済的および財務的能力を向上させること
② クラブの透明性と信頼性を高めること
③ 債権者保護を重視すること
④ シーズンを通じた国内競技会および国際競技会の継続性を保護すること
⑤ 国内競技会および国際競技会における財務面でのフェアプレーを監視すること

(2) ライセンス申請者が何らかの連結対象となる会社を有しており、当該ライセンス申請者が支配会社である場合には、個別財務諸表のほか、連結財務諸表をライセンサーに提出しなければならない。

(3) ライセンス申請者の関連当事者との取引は、日本国の会計基準に基づいて会社法に定める計算書類に注記されるか、別添資料を作成してライセンサーに提出されなければならない。


他の4つの基準に対して明らかにボリューム多め。
中身の方はA等級7個とC等級1個で構成されています

  • F.01 A基準 年次財務諸表(監査済み)
  • F.02 C基準 中間財務諸表(監査済み)
  • F.03 A基準 選手移籍活動によって生じる他のフットボールクラブに対する期限経過未払金の皆無
  • F.04 A基準 従業員や社会保険当局、税務当局に対する期限経過未払金の皆無
  • F.05 A基準 ライセンス交付の決定に先立つ表明書
  • F.06 A基準 予算および予算実績、財務状況の見通し
  • F.07 A基準 ライセンス交付後の重要な後発事象の通知義務
  • F.08 A基準 財務状況の見通しの修正義務

F.02、F.04、F.06~F.08については専門性が高いので今回は省略

まずはF.03から見ていきたいのですが、交付規則の条文ではよく分かりません。
今回は運用細則の方で確認してみましょう

F.03 選手移籍活動によって生じる他のフットボールクラブに対する期限経過未払金の皆無

4.基準 F.03 に対するその他の遵守事項および注意事項
ライセンス申請者は、移籍補償金(および連帯貢献金)、トレーニング費用、トレーニングコンペンセーション等、選手移籍に関して発生する費用の支払いにつき、遺漏なく手続きを行わなければならない。なお、トレーニング費用等の支払いが免除される場合は、トラブル防止のため、その記録を書面で残すようにしなければならない。

「選手移籍活動によって生じる他のフットボールクラブに対する期限経過未払金」

つまり、移籍金やトレーニング費用などが該当するということですね。
目的にも合ったように、単純な経済状況だけが「財務基準」の範囲ではありません

F.05 ライセンス交付の決定に先立つ表明書(A等級)

(1) FIBによってライセンス交付の決定が下される期間の開始前 7日以内に、ライセンス申請者はライセンサーに対し、当該申請者がライセンス交付文書を提出した日が属する事業年度の前年度の末日以降、ライセンス申請者の財務状況に(好影響か悪影響かを問わず)影響を及ぼし得るような経済的重要性のある事象または状況が生じたか否かを表明する書式を提出しなければならない。

続いてF.05ですが、これは交付規則第25条第5項でも定められています。
同じ条文内で繰り返し指示されていることからも重要性の高さは窺えます

第 25 条〔ライセンス申請書類の審査〕

(5) ライセンス申請者は、FIBによるライセンス交付決定が下される期間の開始前 7 日以内に、CLAに対して、第 37 条の基準 F.05 に定める表明書を提出するものとする。

CL07

「ライセンス申請者の財務状況に(好影響か悪影響かを問わず)影響を及ぼし得るような経済的重要性のある事象または状況」

運用細則に細かいことは書いてありますが、長いので画像1個で処理。
要はこういった大事なことが起きたならきちんと言いなさいって規定ですね

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さて、本日最後にして最重要となるのが次のF.01です。
その文言を見る前に、Jリーグ規約に定められた財務に関する条文を先に見てみましょう

Jリーグ規約(pdf注意)
《Jリーグ公式サイト 12年8月30日閲覧》

第40条〔事業報告および決算〕

(1) この法人の事業報告および決算については、毎事業年度終了後、理事長(チェアマン)が次の書類を作成し、監事の監査を受けたうえで、理事会の承認を受けなければならない。
① 事業報告
② 事業報告の附属明細書
③ 貸借対照表
④ 損益計算書(正味財産増減計算書)
⑤ 貸借対照表および損益計算書(正味財産増減計算書)の附属明細書
⑥ 財産目録

これが、今回の規則では次のようになっています

(注記)
ちなみに、財務諸表とは基本的に「損益計算書」、「貸借対照表」、「キャッシュ・フロー計算書」、「株主資本等変動計算書」の4つを指します


F.01 年次財務諸表(監査済み)(A等級)

(1) ライセンス申請者は、AFCおよびライセンサーの指示に基づき、ライセンス申請者の有する法人格に対する国内法令に基づいた年次財務諸表一式を作成し、Jリーグに提出しなければならない。なお、当該財務諸表は監査法人または公認会計士の監査を受けたものとし、ライセンサーの求めに応じ、決算の詳細はライセンサーに開示されなければならない。

(2) ライセンス申請者は、前項の資料に基づき、ライセンスを申請した日の属するシーズンの翌シーズンのライセンス交付について審査されるものとする。

以前は監事の監査だったものが監査法人等の監査を受けることが必要になりました。
これがどれほどその財務諸表の信頼性を担保するかはわざわざ明記するまでもありません。
また、この交付規則には明記されていないのですが、「キャッシュ・フロー計算書」と「株主資本等変動計算書」の2つも必須になっているのではないかと推測されます

では、その判定基準はというと、運用細則の方に定められています

F.01 年次財務諸表(監査済み)

3.判定
(2) 提出された財務諸表に基づいて審査を行い、以下のいずれかに該当する場合は基準 F.01 を満たさないものとする。
① 3 期連続で当期純損失を計上した場合。ただし、判定は2012 年度決算より開始し、それ以前の年度は判定対象としない
② ライセンスを申請した日の属する事業年度の前年度末日現在、純資産の金額がマイナスである(債務超過である)場合。ただし判定は 2014 年度決算より開始し、それ以前の年度は判定対象としない
③ Jリーグからの指摘に基づき、過年度の決算の修正が必要となった場合において、過年度の決算を修正した結果、前 2号に示す事態となった場合

ライセンス発行がされないのは、3期連続の赤字と債務超過の場合。
3期連続赤字は2012年度決算から債務超過は2014年度決算からです。
誤解が多いようですが、2011年度決算までは関係ありません

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以上、財務基準について目立ったものをざっと見てきました

第1回でも触れましたが、F.01はこの制度の詳細が明らかになる前から注目されていました。
F.01はA等級の基準であるため、これらのどちらかになった瞬間にアウト

例えば、人事面であれば適正な人を雇えば済む話ですし、ユースや施設ならば今後の見通しを示せばある程度の情状酌量は望めるかもしれません。
しかし、決算というものはどうしようもない…だからこそこの財務基準は最重要と言えるのです

【参考】
FC岐阜に厳しい姿勢 Jリーグ、来季参加資格検討へ聴取
《岐阜新聞 12年8月30日閲覧》

ただ、どちらの事態も普通は突然なってしまうものではありません。
危機的状況になったとき、スポンサーや地域行政に頼み込むことは不可能ではないでしょう。
一時的であれば公式試合安定開催基金に頼ることも可能です

しかし、それは今現在の話

今後、JリーグやJクラブは地域社会にとって重要な立ち位置を占め続けられるか。
それは決して確定的なものではないと考えています

このライセンスはきっかけであって、いずれやらなくてはならないことだと思います。
(それが性急だったか、段階を経るべきだったかという議論は置いておくとして)


そんなわけで5つの基準が終了。
次回は今まで飛ばしてきていた細々したものを説明していく予定です

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第6回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く

時間が空きましたが、前回に続いて各種基準のお話。
今回は、競技基準、人事体制・組織運営基準、法務基準の3つ。
重要度してはやや低めですね

範囲は交付規則第33条、第35条~第36条

MOKUJI

第1回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第2回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第3回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第4回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第5回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第6回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第7回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第8回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第9回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く

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まずは軽めな競技基準(Sporting Criteria)の話を始めましょう。
競技基準の目的は交付規則第33条第1項に定められています

第 33 条 〔競技基準〕

(1) 競技基準の目的は、以下のとおりである。
① 質の高いアカデミープログラムを構築すること
② アカデミー選手のオフ・ザ・ピッチ教育についても支援・奨励すること
③ アカデミー選手の医療ケアを充実させること
④ ピッチ内外でフェアプレーを遵守すること


競技基準と言われても?マークが浮かびますが、要はユースの充実とフェアプレーについて。
実際にどのようなものがあるかというと次の7項目

  • S.01 A等級 承認されたアカデミープログラム
  • S.02 A等級 アカデミーチーム
  • S.03 A等級 選手の医療面でのケア
  • S.04 A等級 プロ選手との書面による契約
  • S.05 A等級 レフェリングに関する事項と「競技規則」
  • S.06 C等級 人種的平等の実践
  • S.07 C等級 女子チーム

S.02は、U-18、U-15、U-12、U-10の各種チームの保有義務を規定したもの。
S.03~S.07についてはタイトル名そのままなので特に触れません

残ったS.01の見るべきポイントは次の2つ。
簡潔に言うと、ユースをしっかりしましょうという話ですね

S.01 承認されたアカデミープログラム(A等級)

(1) ライセンス申請者は、下記項目を満たした「アカデミー申請書」を提出しなければならない。
(2) ライセンス申請者は、以下のプログラムの実施により、サッカーに関する教育以外の補完的教育を行う。

競技基準についてはこれくらいでいいと思います。
ユースの基準が厳格化されたくらいで基本的に今までとあまり変わらないのではないでしょうか

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2つ目は人事体制・組織運営基準(Personnel and Administrative Criteria)。
名称がちょっと長いので、一時的に「人事基準」と呼称していきます

では、いつも通り交付規則第35条第1項の目的を見てみましょう

第 35 条 〔人事体制・組織運営基準〕

(1) 人事体制・組織運営基準の目的は、以下のとおりである。
① ライセンス申請者がプロフェッショナルな方法で運営管理されること
② ライセンス申請者が、一定のノウハウおよび経験、スキルを有するスペシャリストを有すること
③ トップチームおよびその他のチームの選手が、資格を有するコーチによるトレーニングを受け、必要な医療スタッフによりサポートされること


人事基準とは、運営スタッフ及びチームスタッフの水準向上についての基準です

何気に人事基準は項目数が全18個と5つの基準でも最大。
しかもその全てがA等級となっているため最重要のようにも見えます。
しかし、中身は当たり前のようなことを明文化しただけという印象が強いです

  • P.01 A基準 クラブ事務局
  • P.02 A基準 代表取締役
  • P.03 A基準 財務担当(ファイナンスオフィサー)
  • P.04 A基準 運営担当(オペレーションオフィサー)
  • P.05 A基準 セキュリティ担当(セキュリティオフィサー)
  • P.06 A基準 広報担当(メディアオフィサー)
  • P.07 A基準 マーケティング担当
  • P.08 A基準 医師(メディカルドクター)
  • P.09 A基準 理学療法士
  • P.10 A基準 トップチーム監督
  • P.11 A基準 トップチームのアシスタントコーチ
  • P.12 A基準 アカデミーダイレクター
  • P.13 A基準 アカデミーチーム監督
  • P.14 A基準 アカデミーチームコーチ
  • P.15 A基準 安全・警備組織:警備員
  • P.16 A基準 権利と義務
  • P.17 A基準 ライセンス申請書類提出後の変更通知義務
  • P.18 A基準 ライセンス交付シーズンにおける後任の選任義務

あまりにも多いのでいくつかピックアップという形で。

P.03 財務担当(ファイナンスオフィサー)(A等級)

ライセンス申請者は、経理・財務を担当する常勤の取締役を置き、かつ、以下のいずれかに該当する者を財務担当(ファイナンスオフィサー)として置かなければならない。

① 会計参与
ただし会計参与を財務担当とする場合は、会計参与との連絡担当となる常勤の財務担当社員を置くこと

② 常勤の経理・財務担当で、課長職以上の者で、以下のいずれかの資格を有する者
イ.公認会計士または税理士
ロ.経理・財務分野において 3 年以上の実務経験を有し、Jリーグから発行される「財務担当適正証」を有する者

今回の制度化において最重要ともいわれる「財務面」。
その管理を任されるポジションだけあって条件も相当厳しめ。
例として、運営担当(オペレーションオフィサー)と少し比較してみましょう

P.04 運営担当(オペレーションオフィサー)(A等級)

ライセンス申請者は、試合運営に関する事項について責任を有する運営担当(オペレーションオフィサー)として、以下のいずれかに該当する者を置かなければならない。
① Jリーグが特定する試合運営に関する課程に参加し、その課程を終了した者
② 最低 1 年の実務経験を有し、Jリーグから発行される「運営担当適正証」を有する者

他の担当も大体これと同じような条件になっています。
つまり、Jリーグの講習的なものを受講するか、実務経験について認証を得るか
これだけでも以前より人事面でのレベルアップは図れるはず

財務担当が他の担当よりも更に厳しくなっていることからもこの制度の趣旨が分かります

(注記)
その他では専門性の高いセキュリティ担当は資格又は実務経験+Jの認証。
ドクター・理学療法士といったメディカルスタッフは資格。
監督やコーチなどのコーチングスタッフは指導者ライセンスが必要です


P.09 理学療法士(A等級)

ライセンス申請者は、医師をサポートし、トップチームのトレーニング、試合中の医療手当およびマッサージについて責任を有するメディカルスタッフを置き、Jリーグに届け出なければならない。なお、メディカルスタッフは、医療に関わる以下のいずれかの国家資格等を保有しているものとする。
① 理学療法士
② 柔道整復師
③ あん摩マッサージ指圧師
④ はり師
⑤ きゅう師
⑥ 財団法人日本体育協会公認アスレティックトレーナー
P.12 アカデミーダイレクター(A等級)

ライセンス申請者は、以下のいずれかの条件を満たし、かつ、国内外の登録チームでの 3 年以上の指導経験がある者をアカデミーダイレクター(育成責任者)に置かなければならない。なお、当該アカデミーダイレクターはJFAに登録されていなければならず、ライセンス申請者における決裁手続きを経たうえで任命されなければならない。
① JFAの定める有効な「A 級」指導者資格またはそれに相当するとJFAが認定した指導者としての実績
② AFC「A 級」資格
③ UEFA「A 級」資格

この2つについてはこれまで規定がなかったと思われる事柄です。
アカデミーダイレクターについては2009年に出来たものらしく、こちらのコラムを参考に

【参考】
世界で活躍する選手を育てるために Jリーグアカデミーダイレクター研修に密着
《スポーツナビ 12年8月23日閲覧》

Jリーグ規約においてメディカルスタッフに関する規定があったのは次の項目

Jリーグ規約(pdf注意)
《Jリーグ公式 12年8月23日閲覧》

第47条〔届出義務〕
(1) Jクラブは、次の事項を所定の方法によりJリーグに届け出なければならない。届出事項に変更が生じた場合も同様とする。
③ 監督、コーチ、ドクターおよびアスレティックトレーナー(原則として日本体育協会公認)等(以下「チームスタッフ」という)

上記の通り、ドクターとアスレティックトレーナーについて書かれています。
しかし、今回の交付規則では、後者が理学療法士として範囲が拡大されていますね。
「等」という部分を明文化したということでしょうか

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5つの基準で唯一目的の定められていない法務基準(Legal Criteria)が最後。
法務基準であげられているのは以下の6項目です

  • L.01 A基準 AFCクラブ競技会出場への宣誓書
  • L.02 A基準 クラブの登記情報
  • L.03 A基準 他クラブの経営等への関与の禁止
  • L.04 A基準 クラブ内の懲戒手続き
  • L.05 C基準 選手と社員のための行動規範
  • L.06 C基準 顧問弁護士(リーガルオフィサー)

A基準は4項目ありますが、どれも至ってそのまんまな基準
特に説明することもないと思いますので興味があったら原文をどうぞ

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久しぶりの更新なので今一度交付規則を読み直してきました。
毎週更新で一気にこのシリーズを終わらせようと思います

ではまた次回


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第5回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く

今回から、ついにクラブライセンス制度の本題=各種基準に入ります

第5回は、施設基準のお話。範囲は交付規則第34条です

MOKUJI

第1回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第2回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第3回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第4回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第5回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第6回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第7回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第8回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第9回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く

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施設基準(Infrastructure Criteria)の目的は、交付規則第34条第1項

第 34 条〔施設基準〕

(1) 施設基準の目的は、以下のとおりである。
① ライセンス申請者が各競技会を開催可能な、安全で快適なスタジアムを有すること
② ライセンス申請者が所属選手の技術的スキルの向上に役立つ、適切なトレーニング施設を有すること


スタジアム要件だけでなくトレーニング施設についても定められてる点は注意

  • I.01 A等級 公認スタジアム
  • I.02 A等級 スタジアムの認可
  • I.03 A等級 スタジアム:入場可能数
  • I.04 A等級 スタジアム:運営本部室および警察・消防司令室
  • I.05 A等級 スタジアム:観客エリア
  • I.06 A等級 スタジアム:医務室・救護室
  • I.07 A等級 スタジアム:安全性
  • I.08 A等級 スタジアム:承認された避難計画
  • I.09 A等級  トレーニング施設
  • I.10 A等級 アカデミーのトレーニング施設
  • I.11 B等級 スタジアム:基本原則
  • I.12 B等級 スタジアム:衛生施設(※一部C等級)
  • I.13 B等級 スタジアム:屋根(※一部C等級)
  • I.14 C等級 スタジアム:案内サインと動線
  • I.15 C等級 スタジアム:車椅子席

以上が施設基準の全15項目。
そもそも、スタジアム要件ってのはあちこちで定められています

I.01 公認スタジアム(A等級)

(2) 前項のスタジアムは、日本国内にあって、JFAおよびJリーグに公認されており、Jリーグ規約に定める要件を満たしていなければならない。ただし、当該スタジアムがAFCクラブ競技会の会場として使用可能か否かを決める権限はAFCが留保する。

上記されているようにJリーグ規約第4章第1節で定められている他に、Jリーグのスタジアム検査要項、JFAが公開しているサッカースタジアムの建設・改修にあたってのガイドライン国民体育大会 サッカー競技 施設ガイドライン 第6版の3カ所で確認しています。
加えてAFCの方でもGeneral Stadium Regulationsなどでも触れられていますね

この中で熟読すべきは、Jリーグのスタジアム検査要項でしょうか。
これは2010年に大幅な改定が行われており、それが今年も使用されているようです(多分)

2010年第170号のJリーグニュース(pdf注意)
《Jリーグ公式 12年7月20日閲覧》

Jリーグ スタジアム検査要項[2010年度]

Jリーグは2月22日に「Jリーグ スタジアム検査要項」改定について公表した(Jリーグニュース169号で既報)。今回の改定は、プロスポーツにふさわしい「スタジアム」の追求、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)基準の充足、2012年より審査導入予定のクラブライセンス制度とのリンク、10年後の目指すべきスタジアム像などを狙いとしている。検査項目は2009年度の68から182へ増えた。

ただ、これらの規定との整合性を確かめようと思うとかなり時間がかかるのでやっていません。
なので気になったところだけピックアップしてみます

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I.03 スタジアム:入場可能数(A等級)
 
(1) スタジアムは、Jリーグ規約に定める算定方法  により、以下の人数が入場可能でなければならない。
① J1クラブ主管公式試合:15,000 人以上
② J2クラブ主管公式試合:10,000 人以上
 
(2) 当該スタジアムが前項第 2 号のみを充足する場合には、J1クラブライセンスは交付されないものとする。

I.03の第1項はJリーグ規約第29条でも定められている事項で、Jリーグのスタジアムとしてはかなり基本的な要件になります。
ただ、今回の規定によりかなり厳格に扱われるという話は出ていますが

第2項の話は、前々回取り上げたJ1クラブライセンスとJ2クラブライセンスの違いの一つ

I.05 スタジアム:観客エリア(A等級)
 
スタジアム内の各スタンドは、異なるセクターに分離することができるようにしなければならない。
I.07 スタジアム:安全性(A等級)
 
(2) ライセンス申請者はスタジアム所有者と協力のうえ、スタジアムが次の各号の内容を満たすよう努めなければならない。
② 観客エリア内のすべての一般用通路および階段を、明るい色で塗装すること(例:黄色)。なお、観客エリアから競技エリアへ移動するためのゲート、およびスタジアムの外へ移動するための出口となるすべての扉やゲートについても含まれる

前述したとおり、他の規定まで読み込んでいませんが、これらは見たことがなかったような。
特に安全性についての基準は8項目にわたっており、力を入れているのが分かります

I.09 トレーニング施設(A等級)
 
(1) ライセンス申請者は、年間を通じてトレーニングに利用できる以下の施設を有していなければならない。
① 常時使用できる天然芝もしくは人工芝のピッチ 1 面および屋内トレーニング施設
② クラブハウス
③ メディカルルーム

トレーニング施設についての規定はトップ・ユース(I.10)で共通。
ただ、今までトレーニング施設についてのきっちりした基準はなかった気がします(自信は無い)
練習場がないなんて事態も発生しなくなることでしょう

I.12 スタジアム:衛生施設(B等級/C等級)

(1) スタンドには、どの席からもアクセス可能な場所に、男女別のトイレ設備を十分に備え、かつ、車椅子席の近くには、多目的トイレを備えなければならない。

(2) トイレは、明るく、清潔で、衛生的でなければならず、試合中もその状態を保たなければならない。

(3)スタジアムは、1,000 名の観客に対し、少なくとも洋式トイレ 5台、男性用小便器 8 台を備えなければならない。

(4) 前項にかかわらず、Jリーグでは、1,000 名の男性観客に対し、少なくとも洋式トイレ 3 室、男性用小便器 15 台および洗面台 6台、また、1,000 名の女性観客に対し、少なくとも洋式トイレ28 室、洗面台 14 台を備え、5,000 人の観客に対して多目的トイレ 1 室を備えることが望ましい。
I.13 スタジアム:屋根(B等級/C等級)

(1) スタジアムの屋根は、観客席の 3 分の 1 以上が覆われていることが推奨される。

(2) 前項にかかわらず、スタジアムの屋根は、すべての観客席を覆うことが望ましい。

上記2つは各種基準の中でもB等級とC等級が混ざった特殊なケース。
I.12は第4項が、I.13は第2項がC等級で、その他はB等級となっています。
C等級は「望ましい」という言い回しになっているので分かりやすいですね

前者はともかく多くのクラブにとって問題となるのはスタジアムの屋根でしょう。
屋根はA等級の基準ではないため、制裁覚悟のクラブも多いかもしれません。
Jリーグ側の柔軟な対応も必要ですね

---

以上が各種基準の前半でした。
今回扱わなかったもの以外でも、警察・消防司令室や医務室の規定もあったり。
全体の中でも重要な基準の一つとなっていることが窺えます


次回はちょっと時間が空くと思います。
引き続きよろしくお願いします


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第4回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く

第4回となる今回はライセンスの運用方法のお話

今回の範囲は交付規則第8条、第24条~第27条。
今回も文章で見るよりは画像の方が分かりやすいと思います…ちょっと長いかも

FIB、AB、CLA、LMなどの専門用語は前回参照

MOKUJI

第1回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第2回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第3回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第4回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第5回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第6回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第7回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第8回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く
第9回 Jリーグクラブライセンス交付規則を読み解く

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前半はまず制裁のお話。
制裁の具体的内容は交付規則第8条第1項に定められています 

第 8 条 〔ライセンス制度上の制裁〕

(1) ライセンシーまたはライセンス申請者にB等級基準の未充足があった場合、当該ライセンシーまたはライセンス申請者はFIBまたはABにより以下の制裁(ただし、当該制裁は網羅的なものではない)が科される可能性がある。ライセンシーまたはライセンス申請者は、シーズンの開始前のみならず、シーズン中にも、制裁が科されることがある。

① 戒告
② けん責
③ ライセンス基準を満たすための期限延長
④ 特定の期限までにライセンス基準を満たす義務
⑤ 罰金(1 億円を上限とする)
⑥ 勝点の減点(15 点を上限とする)
⑦ 人員の停職
⑧ ライセンサーの然るべき機関への問題報告
⑨ 保証および引受義務
⑩ 補助金/賞金の保留
⑪ より詳細な財務情報の要求
⑫ 無観客試合
⑬ 収容人数の削減
⑭ Jライセンスの見直し・取消し
⑮ Jライセンスの保留
⑯ 移籍契約締結の禁止
⑰ 下位ディビジョンへの降格

注意すべきは「B等級基準の未充足があった場合制裁が科される可能性がある」という表現。
仮にB等級基準を満たしていなくても制裁がないことがあるということですね。
前回、A等級基準を満たさなければライセンスが交付されないという条文を読みましたが、B等級は割と柔軟なようです

以前、大宮が観客数水増しで制裁を科されたときの根拠はJリーグ規約第142条第1項

Jリーグ規約(pdf注意)
《Jリーグ公式 12年7月13日閲覧》

第142条〔制裁の種類〕

(1) Jクラブに対する制裁の種類は次のとおりとし、これらの制裁を併科することができる。

① けん責 始末書をとり、将来を戒める
② 制裁金 1件につき1億円以下の制裁金を科す
③ 勝点減 リーグ戦の勝点を1件につき15点を限度として減ずる
④ 出場権剥奪 リーグカップ戦における違反行為に対する制裁として次年度のリーグカップ戦への出場権を剥奪する
⑤ 除名 Jリーグから除名する(ただし、総会において正会員現在数の4分の3以上の多数による議決を要する)

これを見ると制裁の幅がかなり広くなってるなと感じますね。
特に、「⑦人員の停職」、「⑫無観客試合」、「⑯移籍契約締結の禁止」、「⑰下位ディビジョンへの降格」の4つについては大きな追加ではないでしょうか

「③ライセンス基準を満たすための期限延長」って制裁なの?とか
「⑬収容人数の削減」って何?とかよく分からない制裁もあるんですがまぁいいでしょう。
(観戦客の数に制限をかけるってことでしょうか・・・ちょっと不明です)

第 23 条 〔ライセンスの有効期間 / 取消し〕

(3) ライセンシーが以下のいずれかに該当する事態となった場合には、当該ライセンシーは、FIBまたはABの決定により、Jライセンスを取り消されまたは制裁を科され得る。

① 当該ライセンシーが本交付規則に定めるライセンス基準を満たさない状況となり、短期的な回復が見込めなくなった場合
② 当該ライセンシーまたは第三者が当該ライセンシーについて破産、特別清算、民事再生または会社更生の申立てを行ったとき
③ 当該ライセンシーが解散、合併、会社分割または営業の全部もしくは重要な一部の譲渡を決議したとき
④ Jリーグ定款に基づきライセンシーが除名処分となったとき


シーズン中に制裁が科されうるという話は前回扱った交付規則第23条第3項の話。
あと、第1号は短期的な回復が見込めるならどうにかなるって話なのでしょう

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続いて実際にこのルールをどのように運用していくか。
交付規則第24条の第1項~第3項を見てみましょう

第 24 条〔ライセンス申請〕

(1) 第 18 条に定められたクラブのみが、Jライセンスの交付を申請することができる。
(2) Jライセンスの交付の申請は撤回することができない。
(3) Jライセンスの申請から交付までの手続きは、本交付規則別表 1「Jリーグクラブライセンス交付スケジュール」に従う。


「第18条に定められたクラブ」というのは前回触れたようにJ1・J2・準加盟のこと。
また、交付申請が撤回できないというのは後述する話と対比で見れます

で、第3項にある交付規則別表1にこんなフローチャートが載っていました

無題

しかし、これだと分かりにくい。簡略化した図が下になります

ここでいう「申請者」とはライセンス申請者のこと。
「ライセンス・パッケージ」とは「Jライセンス申請の案内とライセンス申請書類の一式」(交付規則第24条第5項)のことになります 

CL05
CL06

FIB決定までの流れは大体イメージがつくと思いますので上訴について軽く触れておきます。
そもそも誰が上訴できるのかというのは交付規則第26条第2項

第 26 条〔FIBによる決定〕

(2) FIBの決定に対しては、以下の者が上訴権を有する。
① Jライセンスの交付拒絶の決定を受けた場合におけるライセンス申請者
② 制裁付きでJライセンスの交付を受けた場合におけるライセンス申請者
③ Jライセンスの剥奪の決定を受けた場合におけるライセンシー
④ Jライセンスの交付の決定がなされた場合におけるLM

第1号~第3号まではいいのですが、第4号にあるようにLMが上訴できる点は注意。
また、交付規則第27条で注目するべきは以下の3点でしょうか

第 27 条〔上訴〕

(3) CLAは、審問期日終了後、ABによるクラブライセンス決定会議を開催する。ABは、ライセンス申請者に対するJライセンス交付の可否、制裁の有無・内容について、上訴申立受理日から 30 日以内に決定する。なお、ABの決定は、FIBの決定より上訴人に不利益なものであってはならない。ただし、LMとライセンス申請者またはライセンシーの双方が上訴している場合はこの限りでない。
(5) 上訴の申立てはいつでも取り下げることができる。上訴の申立てを取り下げた場合は、その時点でFIBの決定が確定するものとする。
(6) ライセンス申請者がABに上訴する場合は、上訴手数料として金 10 万円をJリーグに支払うものとし、当該手数料はいかなる理由があっても返却しない。

第5項にあるように、上訴は交付申請と異なり撤回が可能です

上訴には10万円かかる一方で、「なお、ABの決定は、FIBの決定より上訴人に不利益なものであってはならない」という文言で上訴のリスクが結構軽減されているのでは

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以上が今回のライセンスの運用方法のお話でした。
そしてようやく次回から実際の基準とは何があるのかについて触れていきたいと思います。
やっとオードブルが終わったよやた―

awayisumawayisum  at 21:00コメント(0)トラックバック(0) この記事をクリップ!