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探訪録(エコパスタジアム編) 後編 ~年間95万人を集客する取り組み~

前回からの続き。
今回は写真よりも文章の比重が多くて見にくいよ!

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③エコパスタジアムの内観
ヤマハでの試合に間に合わないといけないので早速エコパスタジアムの中に入ってみました

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写真からも分かるように、エコパスタジアムは第1層と第2層に分かれています。
ちなみにこの写真はスタッフの方に特別に第2層に入れてもらい撮ったものです

スタジアムが二層式というのは珍しくありませんが、陸上競技場では日産くらい?
この構造のおかげで実際に試合があってもかなり見やすいんだろうと想像できます

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ゴール裏からはやっぱり遠いですけどね

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④芝生管理のお話
今回お話を聞かせてもらう中で興味深かったのは芝生と稼働率の話

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こちらの写真にも写っていますが、奥の方に扇風機が2台置かれています。
これは、夏場に芝生に向かって動かして熱がこもらないようにするためのもの

エコパでは冬芝を使っており、青々と茂って見た目は良いそうですが如何せん夏に弱い。
ゴール部分の上を覆っているのも芝生の保護のためだという話。

ちなみに人工芝導入の予定も聞いてみました。
が、すでに別に人工芝グラウンドがあるため検討したこともないそうです。そりゃそうだ。
そちらは夜間照明の使用料が安め(1時間6000円)に設定されています。
そのため、トレセンやフットサル、果てはグラウンドゴルフに使われているんだとか

【参考】
《12年9月4日閲覧 中国新聞》


以前はラグビーなどで使用していたこともあったそうですが、今は許可を出していないそうです。
やはり、芝生がかなり荒れてしまうのが一因だそう。
これは競技の性格によるものなので仕方がないですが

また、陸上の投擲競技は基本的にスタジアム隣の投てき練習場を使用しています。
こういったことから綺麗な芝生を維持できているんですね


そして一番興味を引いたのは、芝生の利用制限の話。
なんでも、エコパスタジアムは静岡県の条例か何かで年間90日しか使えないそうです。
そのため、優先団体(サッカー協会など)を設け、2月に年間スケジュールを立てると

今まで、芝生の利用可能日数というのは聞いたことがありましたが、法令は初めて。
この記事を執筆している段階では根拠法令を見つけられていません
しかし、「サッカー御三家の静岡県」とくればありえそうですよね

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⑤エコパの秘密その2=指定管理者制度
W杯のために作られたスタジアムの多くは、その後の利用方法に頭を悩ませています。
大規模なスタジアムであればあるほど管理費が莫大かかってしまうからです

この問題に対して、静岡県は2006年から指定管理者制度を導入することを決めました。
2011年~2016年の指定管理者制度の募集要項では経営努力目標が設定されています

《12年9月2日閲覧 静岡県》
 
(2) 基本計画に定める経営努力目標の扱い
基本計画に定める経営努力目標の扱いは、次のとおりです。
 
① 年間利用者数
・事業計画書の内容は、平成25年度に年間利用者数が95万人以上(うち有料公園施設:80万人、無料公園施設:15万人)を達成することを前提としたものとしていただきます。その他の年度については、合理的な目標設定に基づいたものとしてください。
・目標数値の達成度は、15(1)の事業評価の評価項目のひとつとなります。
 
② アンケート調査結果による利用者満足度・指定管理者は、この目標数値(4.3)以上の利用者満足度があるように努めなければなりません。
・アンケート調査は、毎年度県が実施し、この結果は、15(1)の事業評価の評価項目のひとつとなります。
・指定管理者としても、来園者の利用動向や意向・意見等を把握し、今後の公園の管理運営に資するために、独自のアンケート調査を実施していただきます。

後者はまだしも前者はなかなか厳しい目標だと最初聞いたときは感じました。
エコパスタジアムでJリーグの試合が開催されるのは年間3試合程度。
コンサートなども大体8回くらいで、多くても11~12回だそうです。
特にコンサートは満員になるようなアーティストじゃないと(アーティスト側が使用料の関係で)採算がとれないので、コンサートをするようなアーティストは限られてしまうとか

(注記)
小笠山総合運動公園でコンサートをやるなら、普通は隣のエコパアリーナを使う。
こちらは最大10,000人収容可能。


年間95万人集客を達成するのは並大抵のことではありません

現在の指定管理者は静岡県サッカー協会グループ。
次のような目的に沿って様々なイベントを企画・実施しています

小笠山総合運動公園 指定管理者制度 募集要項
《12年9月2日閲覧 静岡県》

(2) 設置目的
ワールドカップサッカーや国体を開催したトップレベルの競技施設を活かして、「本県スポーツの殿堂」とするとともに、健康づくり、文化・レクリエーション及び自然と親しむ場とする。

例えば、コンコース部分を使ってフリマや食べ物系イベント。
一部スタンドとトラック部分を使って民謡系コンサートや今年はフラダンスをやったり。
トラック部分で自転車のイベントを年数回開催しているとか。
他にも、スタジアムを含めた公園全体で俳句イベントやお月見イベントなども

こういった自主事業などを開催できるのは指定管理者制度の強みでしょう

【参考】
《12年9月2日閲覧 エコパ公式ウェブサイト(小笠山総合運動公園ECOPA)》

また、会議室は数百円で借りられ、プロジェクターなどの貸し出しが無料。
しかも、駐車場が豊富にあるためよく利用されているそうです
 

話によると、老若男女が利用してもらえるよう、企画の細分化に力を入れているそうです。
また、他のスタジアムでどのようなイベントがあるか研修などを通して良いものは取り入れ、オリジナリティのある企画を出せるよう常に努力しているとか

収支を良くすることよりも多くの人に利用してもらえる公園作りを心がけているらしく。
実際に、ここ数年は95万人以上の利用者を見事達成できていると聞いて感心しました

スタジアム運営の一つの好ケースではないでしょうか

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⑥終わりに
前後編と長くなってしまいましたが、以上がエコパスタジアムで聞いてきたお話です。
一定以上の集客を達成するためには大変な苦労と努力が必要だということが分かりました

ユニバーサルデザインによりターゲットとなる利用者を幅広く設定することが可能。
それに沿ったコンセプトを据え、その上で指定管理者制度により柔軟性のある企画をする。
すべてが揃って初めてこれだけの人々が利用してくれているわけです

安易に集客数だけ設定してもこううまくはいかないでしょう


最後になりましたが、エコパスタジアムのスタッフの方には大変お世話になりました。
説明が大変分かりやすかったのは普段からスタジアム見学ツアーを実施されているから?
お聞きした話は、今後の研究に最大限いかしていきたいと思います

また、小笠山総合運動公園の公式HPの見やすさは素晴らしいものがあります。
だからこそ多くの人が利用しようと思えるのではないでしょうか

細かいことでも小さなことでもきちんとした対応をしてくれること。
それがエコパの年間集客数の秘密であり、静岡県そのものの強みなのかもしれません


awayisumawayisum  at 09:00コメント(1) この記事をクリップ! 

探訪録(エコパスタジアム編) 前編 ~年間95万人を集客する取り組み~

磐田との上位対決、結果は1-1のドロー。
前半40分にMF青山が負傷退場をしてから苦しくなりましたし、アウェイの地でメンバーを代えて臨んだ一戦であることを考えればドローというのは決して悪い結果ではないと思います。
天皇杯を挟んで2週間リーグ戦は空きますので、そこで青山が戻ってきてくれれば。

さて、この試合は頑張って見に行ってきました。
すでに沢山の方が絶賛しておられますが、本当に素晴らしいスタジアム。
NACK5スタジアムのように選手との距離が近いタイプのスタジアムですね。

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その観戦記は後日あげるとして。
静岡には滅多に行けないので、折角だからと試合前にエコパスタジアムの見学にいきました。

陸上競技場というものは、土日が大概陸上などの大会で埋まっているものです。
軽く外観を撮ることしか出来ないと思っていたんですが、事前に連絡していたこともあって、特別に開放していないスタンドから写真を撮らせてくれた上に話まで聞かせていただきました。
本当に感謝の気持ちでいっぱいです

今回はそこで聞いた話を撮影した写真とともにまとめたいと思います

(注記)
エコパスタジアムではスタジアム見学ツアーをやっています。
今回は特別に対応していただきましたが、事前に連絡してご迷惑をかけないようにしましょう。


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①年間95万人集客の秘密その1=ユニバーサルデザイン
エコパスタジアムとは静岡県小笠山総合運動公園スタジアムの愛称。
静岡県袋井市にある小笠山総合運動公園の一施設です。
2001年3月に竣工した陸上競技場で、2002年W杯会場の1つでもあります

特集:いよいよ始まるW杯サッカー 静岡スタジアム・エコパ
《12年9月2日閲覧 月報KAJIMA》

エコパの愛称は,「エコー・歓声のこだま」と「エコロジー・環境」を意味する“エコ”と,「パル・仲間」「パーク・公園」の“パ”を合わせた合成語である。公募の中から選出された。

JR愛野駅から徒歩15分と言うことですが、スタジアムまでは20分くらい。
駅からもうその一部が見えちゃってます(奥の方のやつ)

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9月になったとはいえまだ残暑。住宅街を歩いている間は汗だらだらでした。
公園に入ってからは緑が多く、風もあって非常に快適でしたが

小笠山総合運動公園の敷地に入ってすぐ、面白いものが姿を現しました

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一つ目がこの「動く歩道」

エコパスタジアムは「ユニバーサルデザイン」を施設の重要コンセプトに据えており、『静岡スタジアム エコパは「高齢者、身体障害者が円滑に利用できる特定建築物の促進に関する法律(通称:ハートビル法・平成6年9月施行)」の誘導基準および「静岡県福祉のまちづくり条例」を踏まえて設計・建設しています。』と、エコパスタジアムのパンフレットにもあります

これ以外にも案内を分かりやすくしたり、車椅子席を多く設置していたり。
誰でも困ることなく公園を利用できるように作られているというわけ

もっと詳しいことは公式HPに書かれていますので、参考にしてみてください。
ついでにエコパに関連する記事も付けておきました

【参考①】
ユニバーサルデザイン 施設ガイド
《12年9月2日閲覧 エコパ公式ウェブサイト(小笠山総合運動公園ECOPA)》

【参考②】
スポーツのユニバーサルデザイン | ユニバーサルデザインの今
《12年9月2日閲覧 ユニバーサルデザイン.jp》

【参考③】
ユニバーサルデザインの今 / 第7回スポーツのユニバーサルデザイン
《12年9月2日閲覧 JDN》

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そしてもう一個がこの「スロープカー」

傾斜がある坂道と言うことでこれらが設置されています。
歩いて数十秒という距離なのでよっぽどのことが無ければ歩いた方が早いです。
ただ、試しに乗ってみたところちょっと楽しくなってしまいました

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後述しますが、この「ユニバーサルデザイン」への取り組みがエコパスタジアムの現在に大きく貢献しているのです。

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②小笠山総合運動公園と駐車場

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あいにく曇り空の広がる天気。
ペデストリアンデッキを歩いて行くと、徐々にその全貌が見えてきます。
左がエコパアリーナ、右がエコパスタジアムです

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これが遠目から見たスタジアム。
5万人以上入るというだけあって、非常に大きいです

(注記)
可動席5,236席、記者席264席、車椅子席296席と一般席45,093席で合計50,889席。
ちなみに、メイン以外は引っ張り出すタイプで、メインは地面からせり上がるタイプの可動席。
これは、メイン側に諸室を備えているためだそう。


無題

こちらはエコパの公式HPから拝借した小笠山総合運動公園全体の地図。
この公園の広さが伝わるでしょうか

これを見ると、駐車場は西に5つ、南に2つ、東に4つ備えています。
しかし、Jリーグの試合があるときはこれらのほとんどは解放されていません。
(年パス所持者にだけ300台分用意しているとか)

イベント開催が決まるとJRなどに連絡し、臨時便の増発手配をしているそうです。
他にも、現在タクシーが寄るための降り場の設置も検討しているとか

この状況はビッグアーチと似たようなものがありますね

静岡県も電車などの公共交通機関よりは車が中心の社会。
そのためか駅から15分という道のりに不満がないわけではないそうです

長くなってきたので続きは後編

awayisumawayisum  at 09:00コメント(0)トラックバック(0) この記事をクリップ!