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"スタジアムは、街づくり"について本気出して考えてみた(後編)

①Jリーグのスタジアム像と"まちづくり"
前回は主にソフト面から"まちづくり"とスタジアムの関係を見てきました。
しかし、ソフト面のみを見てハード面を見ないのでは片手落ちと言えます

どのようなスタジアムならば、"まちづくり"に貢献していると言えるのでしょうか?


Jリーグのスタジアムには、2つの指針が存在します

1つはJFAが公開しているスタジアム標準
座席数や屋根をはじめとして細々としたガイドラインが示されています

そしてもう1つがJリーグニュース特別版 スタジアムの未来
こちらは主にヨーロッパのスタジアム視察を元にしたイメージが示されています


スタジアム標準がスタジアムの水準を示すものであるとすれば、スタジアムの未来はスタジアムの方向性を示すものと言っていいでしょう

  • 文化として【サッカースタジアム】 Culture
  • シンボルとして【ホームスタジアム】 Identity
  • コミュニティーができる【ファミリースタジアム】 Community
  • ホスピタリティ【社交スタジアム】 Society
  • 街の集客装置【街なかスタジアム】 Location 
  • 多機能複合型【スタジアム・ビジネス】 Economy
  • 環境にやさしい【グリーンスタジアム】 Ecology
  • プロフェッショナル【スタジアム経営】 Management
  • 防災拠点【ライフスタジアム】 Emergency

  • スタジアムの未来では、9つのテーマに分けて方向性を示しています。
    この方向性は、実は"まちづくり"と密接にリンクしていました

    再びまちづくりの方法から。
    まちづくりの方法では、10個の"まちづくりの基本目標"が例示されています

    1. 地域の諸活動の中心核となる「まち場」の再生
    2. 誰もが安心して住み続けられる持続可能な地域社会
    3. 歩いて日常生活をおくれる歩行圏中心のまちづくり
    4. 町並み・景観の整備と歴史・文化・芸術の場の創造と再生
    5. 多様な生活像が共存し多文化が共生する地域社会
    6. 資源を浪費しないコンパクトなまちの構成
    7. 自然、生態系と共存するまちの仕組みの再生
    8. 人を暖かく迎え入れ、多様な交流の機会を持つまちづくり
    9. コミュニティビジネスなどによる循環型地域経済
    10. 共治を基盤とする地域社会システムの構築

    個別の説明は省きますが、最終的にこういった目標を徐々に達成できるようにする持続的活動こそが"まちづくり"である、と説明されています


    これらを簡単に比較してみましょう

    "地域の諸活動の中心核となる「まち場」の再生"はIdentityCommunity
    "誰もが安心して住み続けられる持続可能な地域社会"はEmergency
    "多様な生活像が共存し多文化が共生する地域社会"はEconomy
    "資源を浪費しないコンパクトなまちの構成"はEcology
    "自然、生態系と共存するまちの仕組みの再生"もEcology
    "人を暖かく迎え入れ、多様な交流の機会を持つまちづくり"はCommunitySociety
    "コミュニティビジネスなどによる循環型地域経済"はSociety

    このように多くのポイントがリンクしていることが分かります。
    スタジアムの未来は、"スタジアムは、まちづくり"の教本と言えるものでしょう


    "街スタ"と"スタ街"
    このスタジアムの未来の中で、唯一矛盾するような表現があります。
    それが街の集客装置【街なかスタジアム】 Locationという項目

    《Jリーグニュース特別版 スタジアムの未来 2014年5月31日閲覧》

     欧州のサッカースタジアムもアメリカのボールパークも今、街なかに回帰している。もし、Jクラブのスタジアムも街なかにあったら。人口減少・高齢化時代に、郊外に分散したにぎわいを再び街なかに呼び戻す装置として、昭和時代のデパート同様、中心市街地の核(コア)として強い求心力になるだろう
     わが国でも2010年11月、北九州市が新幹線小倉駅の北500メートルに、ギラヴァンツ北九州(J2)のホームスタジアムとして街なかスタジアム計画を打ち出した。
     VfLヴォルフスブルクで5シーズン半プレーした長谷部誠選手は、ホームスタジアムについて次のように語った。「中央駅から歩いて(10分ほどで)行ける利便性の高い立地なので、試合後に渋滞も起きず、選手としてストレスがありません」

    ①街づくり
     年間を通して週末ごとに、多いときには万人単位の巨大集客装置となる。千人単位のアウェイファン・サポーターも、試合の前後は「観光客」。スタジアムへのアクセスは徒歩が中心となり、観客が長く滞留する街の仕掛けがあれば、中心市街地に大きな経済効果をもたらす

    ②都市再開発
     郊外の再開発プロジェクトの核として、面開発の複合型の街づくりが行われる。公共交通や十分な駐車場整備に加え、パーク&ライド整備が必要である。

    このように、中心市街地のスタジアムと郊外のスタジアムの両方が説明されています。
    これは"スタジアムは、まちづくり"に複数の正解が存在していることを示しているのです

    中心市街地の求心力回復のために街中にスタジアムを整備する"街スタ"
    都市再開発の目玉として郊外にスタジアムを整備する"スタ街"

    この考え方は、2012年に開催されたシンポジウムでも解説がありました

    基調講演=プロスポーツと地域社会
    《第1回シンポジウム 2012年11月5日》

    何故今スタジアムなのか
    世界は今人間回帰という言葉で街中に暖かみのあるスタジアムに移行し始めている

    クラブにとっても、Jリーグにとってもスタジアムは重要
    ライセンス制度も含めて、クラブにとってスタジアムビジネスが経営上重要になってきている
    Jリーグは、リーグの価値を高めるという意味で臨場感を重視している

    また、地域のシンボルとしてスタジアムが位置づけられるようになってきた
    文化・経済両面で求心力になる

    街スタ=街中にスタジアムが出来るケース
    スタ街=スタジアムを核にして街が出来ていくケース

    "スタ街"の代表例とも言えるのが埼玉スタジアム。
    スタジアムの最寄り駅でもある浦和美園駅はスタジアム建設にあわせて計画されました。
    現在もスタジアム周辺の道路開発が進んでいると聞きます

    "街スタ"の代表例は、現在予定されている北九州のスタジアムでしょうか。
    新幹線も停車するJR小倉駅から徒歩7分というロケーションです


    どちらが理想的なのでしょうか?

    machidukuri02

    上記はあくまで一般論ですが、おおよそこういった特性を持っていると思われます。
    どちらにも利点はあり、どちらにも課題はあるといったところ


    ではJリーグの理想は"街スタ"と"スタ街"のいずれにあるのか。
    スタジアムの未来に深く関わっているであろう傍士銑太氏は次のようなコラムを書いています

    (75)街中スタジアム
    《百年構想のある風景 2014年5月31日閲覧》

     “まちなか”は、車中心社会になって「アクセス」(交通の便)の良い郊外型ショッピングセンターに人が流れたが、人口減少・高齢化社会を迎えるいま、人々の視線は、再び人間中心社会に適した「ロケーション」(立地条件)の良い街中に回帰しはじめた。先だって、関西を代表する交通ターミナルの大阪駅北地区に、大規模球技場誘致を検討する協議会が、自治体や財界のトップを交えて発足した。ここは、一日に250万人もの人々が行き交う絶好の場所である。北九州や宇都宮にも具体的な動きが見られる。いよいよ、我が国でも、「街中スタジアム」の時代が到来する。
     Jリーグスタジアム観戦者調査2009によれば、過半は家族連れ。郊外にある埼玉スタジアムに5万人、新潟ビッグスワンに4万人、大分ビッグアイに2万人もの人々が、試合のたびに集まって来る。もしも、これらが街中に在ったらどうだろうかと考えると、地方都市が悩んでいるまちなか復活の“青い鳥”は、意外と身近なところに隠れている。

    このように、明らかに"スタ街"ではなく、"街スタ"を推しています


    ③スタジアムの理想像は各地域にある
    Jリーグの理想的なスタジアム像を"街スタ"とすると新たに2つの疑問点が発生します。
    まず、なぜスタジアムの未来では都市再開発というものが書かれているのか

    これはおそらく、スタジアム整備の可能性を閉ざさないためです

    Jリーグはここ数年、スタジアムの整備を強く訴え、働きかけています。
    あくまでも理想は"街スタ"ではあるものの、土地の確保や地域特有の事情などの問題から全ての地域において"街スタ"を実現することは出来ません

    地域によっては"街スタ"よりも"スタ街"の方が現実的で理想的な場合があるかもしれない。
    だから、"スタ街"にも含みを持たせているのでしょう


    もう1つの疑問点は多機能複合型【スタジアム・ビジネス】 Economyです

    多機能複合型【スタジアム・ビジネス】 Economy
    《Jリーグニュース特別版 スタジアムの未来 2014年5月31日閲覧》

    「これからはさまざまな機能がないと、サッカーだけでは運営できない」。バーゼルのスタジアム経営者であるクリスティアン・ケルン社長は断言した。ホームの公式試合は1シーズンで30日弱。多機能複合型ならば、年間を通して市民生活と接点を保ち、スポーツ以外で稼働率を高めて施設全体の収益を上げることができる。また、周囲の施設と複合的な関係を持つこともできる。
     
    〔複合機能の実例〕
    ・ショッピングセンター・レストラン・ホテル・オフィス・ホームセンター・介護付き高齢者用集合住宅・教育センター・職業専門学校・フィットネスクラブ・見本市

    Jリーグが訴える多機能複合型とは、括弧で書かれているようにビジネスに係るもの
    これは赤字運営を理由に建設に消極的になっている行政へのアピールもあるでしょう。
    あるいは都市公園法の縛りから解き放たれたいという意図もあるかもしれません

    しかし、"街スタ"を考える中でそう簡単にスタジアム・ビジネスが成り立つでしょうか。
    中心市街地にはホテルや商業施設がすでに存在している場合が多いことでしょう。
    周辺地域と顧客の奪い合いをすることが本当に"まちづくり"に寄与すると言えるのか

    また、複合機能の実例に挙がっているものの多くは大規模整備。
    中心市街地にそこまで大きな土地が転がっているものかという点も疑問です

    Jリーグの訴える多機能複合型はどちらかというと"スタ街"寄りの考え方だと言えます。
    "街スタ"が目指すべきは周辺施設と連携してシナジー効果を生み出すことでしょう


    スタジアムの未来はヨーロッパのスタジアム視察を元に作成されているもの。
    その影響で、ヨーロッパと同じようなスタジアムを作るべきなのかという誤解がままあります

    スタジアムの未来はJリーグが理想とするスタジアム像を描いています。
    しかし、スタジアムの理想像は画一的なものではありません。
    各地域ごとに、時代ごとに理想とするスタジアム像というものが存在するはず


    結論をまとめておきましょう

    スタジアムの未来は"スタジアムは、まちづくり"の教本です。
    しかし、スタジアムの未来は全国で画一的に適用できるとは限りません。
    スタジアムの未来を参考にしつつ、各地域ごとの理想のスタジアム像を探すべき

    その際に"まちづくり"の視点を忘れてはならない、ということです



    ④終わりに=「参画と三角」
    全3回にわたって"スタジアムは、街づくり"という標語をテーマに進めてきました。
    言葉の定義から始めたため、かなり抽象論となってしまったことをお詫びします

    今回のテーマにはかなり苦戦しました。
    本来は第4回シンポジウムのレポートでしたが、文量から独立せざるを得ませんでした。
    構想から3ヶ月以上かかってしまいましたが、時間をかけただけあって手応えはありました

    スタジアムを訴える上で"スタジアムは、まちづくり"という視点は非常に重要です。
    しかし、これまでJリーグもサンフレッチェも十分な説明ができているとは言えません。
    乱筆ではありましたが、その道筋をある程度示せたのではないかと思っています

    全3回で述べたかったことは次の5点に集約されます

    • 目指すべきは"スタジアムは、街づくり"ではなく"スタジアムは、まちづくり"
    • "スタジアムは、まちづくり"は事実ではなく、目標・コンセプトである
    • ソフト面の"まちづくり"には不断の努力が欠かせない
    • ハード面の"まちづくり"はスタジアムの未来を参考にするべき
    • ただし、スタジアムの理想像は各地域によって異なるため模索するべし

    なぜ"スタジアムは、まちづくり"が重要なのかについては深く掘り下げていません。
    それはまた機会があれば触れてみたいと思っています


    さて、"スタジアムは、まちづくり"というのは非常に規模が大きな話です。
    お金をかければできるものでもなく、時間をかければできるものでもありません

    1-2 まちづくりの定義と10の原則
    《まちづくりの方法 3ページ 日本建築学会》

    定義:まちづくりとは、地域社会に存在する資源を基礎として、多様な主体が連携・協力して、身近な居住環境を漸進的に改善し、まちの活力と魅力を高め、「生活の質の向上」を実現するための一連の持続的な活動である。

    ここまで強調してきませんでしたが"多様な主体が連携・協力"も重要なポイントです

    川崎の魅力を市民に伝えるために
    《Jリーグニュースプラス vol.10 2014年5月31日閲覧》

    こうした体制を川崎市が敷いたのには、行政とクラブが共通の目的を持っていることが大きい。市役所のシティセールス・広報室の役割は川崎市の魅力を広く市民に知ってもらい、自分たちの住むまちに誇りを持ってもらうことである。フロンターレのベクトルもまったく同じ。市民が川崎のまちを好きになり誇りを持つようになれば、そのまちにあるJクラブのことも好きになってくれるという考え方が根底にある。市とクラブは「もっと川崎のまちを好きになってもらいたい」という同じ理念を持つパートナーなのである。

    川崎の事例にもあるように、行政の協力は"まちづくり"に必要なものです。
    しかし、なんでもかんでも行政頼りでは"まちづくり"は実現しません

    我々、市民・県民がその"まち"を自分たちの"まち"だと自覚すること。
    そして、その"まち"をより良くしようとする意識が絶対に欠かせません

    そしてその範囲はサッカーにとどまるものだけではありません。
    サンフレッチェ広島を、サッカーを、ひいては広島という"まち"の価値を、高めること。
    そのためにどうすればいいか個人個人が主体となって考えないといけません

    自分自身の「まち」
    《まちづくりの発想 50ページ 田村明》

     まちづくりを真剣に考えてゆくと、一見、生活に直接関係なく他人事に見える土地問題、産業立地、都市配置、国土計画、幹線交通、資源利用のあり方なども、実は身近な生活にかかわりのある重要な基礎的問題であることが分かってくる。小さな単位でも、人間の側から具体的に関連を追って考えるとき、地球や国土、社会全体が分かってくるはずである。
     都市の時代は、問題を複雑にし、地球的規模にまで広げたが、その全体を見る糸口が、自分たちの生活している「まち」になる。



    最後に、浦和レッズの経営にも携わられていた藤口光紀氏(現広島経済大学教授)が講演で話されていた内容を紹介しておきます

    スポーツによる地域活性化
    《中国総研研究会 2013年11月20日 中国地方総合研究センター》

     スポーツで"まちづくり"。1つ提案します、キーワード。ちょっと洒落かもしれませんが、「参画と三角」です。これはキーです。要するに参加じゃないんです。参画することに意味があるんです。なんでもそうですけども、みんな人ごとになっちゃうんです。そうじゃなくて、自分もなんでもいいからこれをやりますということを、後援会とかサポーターからもあるんですけど、サポーターなんか自分から計画して色んなことをしています。自らが計画する、それがすごく大事なんですね。これがないと本当のいい"まちづくり"はできません。それと三角。これはやっぱり、クラブ、行政、市民、これがうまくバランスがとれないといけない。サポーターとクラブだけではいけない、自治体とクラブだけではいけない。そこにもう1つ入ってくることがすごく大事です。これはもうサッカーのプレイでも一緒です。2人の関係よりも3人の関係になれば攻撃のバリエーションができます。ディフェンスも厚くなります。


    「参画と三角」

    これをしっかりと胸に刻みつけて参画していきたいと思います。
    ここまでお付き合いいただきありがとうございました 

    awayisumawayisum  at 09:00コメント(0)トラックバック(0) この記事をクリップ! 

    "スタジアムは、街づくり"について本気出して考えてみた(中編)

    ①"スタジアムは、まちづくり"か?
    前回から、"スタジアムは、街づくり"とはいったい何か?というテーマに取り組んでいます。
    特に"街づくり"という部分に焦点を当て、地域社会学の分野を活用しながら考えてきました

    その中で浮かんだ疑問から、"スタジアムは、街づくり"ではなく、”スタジアムは、まちづくり”なのではないか、という仮説が生まれたと言えるでしょう

    しかし、"まちづくり"が具体的に何を意味するのかを説明するのは非常に難儀です。
    まちづくりの実践では次のようなものが例示されています

    machidukuri01
    《まちづくりの実践33ページを元に作成》

    これらを1つ1つ検証すると長くなってしまいますし、何より本題から逸れます

    平仮名の「まちづくり」の十の意味
    《まちづくりの実践 33ページ》

    (2) ハードだけでなくソフトを含めた総合的な「まち」へ
     「まち」とは、モノの面でも多様なものがあるからトータルに考えてゆかなくてはならない。さらにモノやハコをつくるだけでなく、それを決めてゆく過程や方法も考えなければならないし、「まち」をどう生き生きしたものとして使ってゆくかという方法も重要だ。ハードの「街」は、ソフトがあってこそ、初めて有効に使われる。ソフトの面には「まちづかい」という意味もあり、ハードとソフトの両面を含む総合的なものとして「まち」を整えてゆくことである

    そこで、多少強引ではありますが、今回は便宜的にソフト面に関する事例に主眼を当てることで、その可能性に言及したいと思います

    それでは早速見ていくことにしましょう



    ②Jクラブと"まちづくり"の関係
    スタジアムにおけるソフトの中で最も重要となるのはJクラブといって差し支えないでしょう。
    本稿における重要な前提の1つであり、他のソフトに関する議論は様々な可能性が提示されているが故に決まったもの(固定的)ではないからです

    では、Jクラブと"まちづくり"はどのような関係にあるのでしょうか。
    Jリーグニュースプラス第14号で清水や福岡の事例が取り上げられています

    「する」「みる」「語る」 の融合へ
    《Jリーグニュースプラス vol.14 2014年5月31日閲覧》

     エスパルスは県内4カ所に展開するフットサルコート「エスパルスドリームフィールド」や、チケット、グッズを販売する「エスパルスドリームハウス」など、クラブの情報発信拠点を多く設けている。これは、ただ単にフットサル場やオフィシャルショップを整備することではなく、エスパルスを中心としてサッカーを「する」「みる」「語る」場を地域の人々に提供したいという想いがある。「エスパルスを通じ、地域の人々がコミュニケーションを深める場をつくりたかった。情報発信や販売目的だけではなく、そこに人々が集い、一緒に体を動かすことで、地域に新しいコミュニティが生まれる土壌を育てたい」と早川社長は語る。すべての施設に「エスパルスドリーム」の名前が付されているように、“夢のある幸せなまちづくり”の中心になることを、クラブは願っているのである。
    福岡のまちが持つ財産
    《Jリーグニュースプラス vol.14 2014年5月31日閲覧》

     「“まちづくり”や“人づくり”は、行政の普遍的な課題。一方スポーツは、人を育て、地域を育て、社会を育てる力があり、その課題を解決できるソフトになれる。サッカーに限る必要はなく、あらゆるスポーツを通じた“人づくり”をアビスパが支えることで、福岡のまちを元気にできるはずだ」と下田専務は考えた。

    清水の場合、新たなコミュニティ形成のための場を作っています。
    福岡は"まちづくり"の中でも"人づくり"に着目し、ホームタウン事業を数多く実施。
    前者はマチ社会とその仕組みづくり、後者は「まちづくり」を担うヒトづくり、にリンクします

    どちらの事例も"スタジアムは、まちづくり"には該当しませんが、Jクラブが能動的に取り組むことで"まちづくり"に貢献できることを示しています


    川崎フロンターレはストレートに"クラブづくりとまちづくり"というコンセプトを掲げています

    (註記)
    場合によっては"街づくり"と表記していることもあるが、深い意味はなさそう


    《Jリーグニュースプラス vol.10 2014年5月31日閲覧》 
     
     オリンピックで日本代表を応援するときに、「なぜ日本を応援するの?」と聞く人はいない。理由は自分も日本人だからだ。甲子園で、地元代表の高校を地域を挙げて応援することも、自分たちのまちを背負って戦う球児たちに身近なものを感じるからだろう。「このまちでフロンターレもそういう存在にしていきたい。川崎に住んでいるのだから、そのまちに根づくクラブを応援することが当たり前と思われるように。いつか、『川崎=フロンターレ』とまで感じてもらえるように。そのためにも、まずは自分たちが住む川崎というまちへの愛着を、もっとみんなに感じてもらうことが大切」と、天野課長は話す。
     「チケットを買ってください」「スポンサーになってください」「クラブを応援してください」と、一方的にお願いをしても、地域からの信頼はすぐには得られない。こちらから頼むばかりではなく、地域の一員としてクラブがホームタウンに貢献できることは何か。彼らと共にまちを盛り上げていけることは何か。そのことを常に考えた活動を行っていくことで、地域から本当の信頼を得ることができる。フロンターレは強化担当も、広報担当も、運営担当も、後援会担当も、皆がホームタウンを意識する気持ちが強い。かつて天野課長がいた「ホームタウン推進室」といった専任部署は今や存在しない。スタッフ全員がホームタウン担当者であり、武田社長もその一人だ。遠回りのようにも見えるが、日々の地道な地域密着活動こそ、スタジアムを満員にするための一番の近道なのかもしれない。だからこそ、クラブづくりとは「まちづくり」なのである。

    Jリーグの代名詞とも言われる"地域密着"の最先端をいく川崎ならではの事例ですね

    川崎だけでなく、清水や福岡の事例でもキーワードとなっていたのが"誇り"という言葉。
    「地域への愛着」や「地域のシンボル」とも言い替えることが出来ます

    これを"シビック・プライド(civic pride)"と呼びます

    シビック・プライドとは、まちに対する愛着や誇りを意味します。
    "おらがまち"というキャッチフレーズもシビック・プライドの典型例ですね


    シビック・プライドは"まちづくり"において非常に重要な位置を占めています。
    自分たちの"まち"に誇りを持つことで、"まち"に対して主体的に関わる意識が生まれます。
    それが主にソフト面の"まちづくり"においては欠かせません

    これは、個性的で主体性ある「まち」へだけでなく、"まちづくり"全体にも関係する要素です


    ④シビック・プライド
    広島にも、この"シビック・プライド"の事例は存在しています。
    その代表例とも言えるのが横川駅及び横川駅商店街ではないでしょうか

    002
    《中国新聞 2007年3月11日2面》

    これは2007年の記事。それから約7年の月日が経ちました

    machidukuri03
    《2014年4月16日 横川本通りにて撮影》

    たまたま立ち寄ったときに撮影しましたが、これはホーム試合とは関係ない日。
    今シーズンのスローガン「全力」の幟があちこちに立ち並んでいます

    シャトルバスも定着し、試合日に改札口近くのむさしが大繁盛しているのも当たり前。
    サンフレッチェの"まち"と呼ぶに相応しい光景ですね


    もう1つの事例としては沼田町のバイオレットタウンNUMATA推進事業があげられるでしょう

    バイオレットタウン委員会
    《沼田町商工会青年部 2014年5月31日閲覧》

    事業目的 内容
     平成23年度から新事業(バイオレットタウンNUMATAプロジェクト)がスタートしました。それに伴いバイオレットタウンNUMATAプロジェクト委員会も同時に立ち上がりました。サンフレッチェ広島の幟旗の設置及び周辺清掃、沼田町盆踊り大会、いきいき沼田商工フェスタ、ふるさと祭り等でのバイオレットタウンサポートショップの紹介、選手による盛り上げ等を行っております。主に沼田町の商工業を活性化するためにいろいろな企画を考えてやっております。これからも、ますます面白い企画を考えて実行していきたいと考えております。
    第4章中国地域各県の取り組み 第4節広島県
    《中国地域経済白書2013 97ページ 中国地方総合研究センター》

    ②沼田町商工会
     広島市安佐南区の沼田町商工会では、地元にホームスタジアムがあるJ1のサンフレッチェ広島を応援し、地域の活性化を目指す「バイオレットタウンNUMATA推進事業」を展開している。
     活動としては、商工会青年部と地元の広島修道大学学生が連携し、商工会だよりへ掲載する「バイオレットタウン」情報の収集、ホームゲーム開催に合わせた応援幟の設置などを行っている。今後は、選手によるサッカー教室の開催や、サンフレッチェ広島の試合観戦ツアーなどが計画されている。

    横川駅は多少距離がありますが、スタジアムへの交通の要所として機能していることを考えると、どちらも"スタジアムは、まちづくり"の事例と言っていいのではないでしょうか


    これは地元主体だけでなく、サンフレッチェも率先して推し進めています

    1)クラブについて(小谷野薫社長)
    《第11回サポーターズカンファレンス》

    【プレゼンスの拡大について】
     また、話は変わりますが、経営上のさらなる課題として付け加えるならば、これは明確に数字に表れるものではありませんが、サンフレッチェの広島におけるさらなるプレゼンスの拡大が挙げられます。昨年はおかげさまでクラブ創設20周年で初優勝しましたが、広島の街にまだまだ紫が少ない。街に「もっと紫を」ということで、試合の告知やサンフレッチェを応援する気運をさらにどうやって盛り上げていくのか、クラブとして知恵を出さなければいけないところだと考えています。またサポーターの皆様からもどんどん意見を伺っていきたいところだとも思います。

    「広島の街 に、もっと紫を」というキャッチコピーがまさにそれ。
    もちろんサンフレッチェそのものの周知も狙いとしてはあるでしょうが、幟の設置、ポスターの掲出、ポケット日程表の設置をするショップの人々にも働きかけているはずです

    こうした地道な活動も"まちづくり"の1つと言って差し支えないでしょう



    ⑤幕間=作って終わりではないということ
    今回、"スタジアムは、まちづくり"ではないか、というテーマで進めてきました

    その中で、Jクラブと"まちづくり"の関係性はある程度解説してきたつもりです。
    ヒトづくり、コミュニティ形成、シビックプライドなど様々な形が出てきました。
    一方、スタジアムならではの"まちづくり"にはあまり触れることが出来ていません

    "スタジアムは、まちづくり"は実現可能であると結論づけても良いでしょう。
    ただし、それはスタジアムでなくても出来るのではないかという反論も可能です


    スタジアムで出来る"まちづくり"とは何か、と具体的に考えるとキリがありません。
    それは冒頭でも述べたとおりで、"まちづくり"とは非常に広範囲な概念だからです

    そのハードに適した"まちづくり"があるはずですし、そのソフトに適した"まちづくり"があるはずですし、その"まち"に適した"まちづくり"があるはずです

    では、"スタジアムは、まちづくり"であると主張するのは困難なのでしょうか?

    私は、そんなことはないと考えています。
    「"スタジアムは、まちづくり"は実現可能である」ということは、"スタジアムは、まちづくり"は実現可能だが、実現するために努力を重ねなければ実現できない可能性もあると言い替えられることが出来るはずです

    1-2 まちづくりの定義と10の原則
    《まちづくりの方法 3ページ 日本建築学会》
     
    定義:まちづくりとは、地域社会に存在する資源を基礎として、多様な主体が連携・協力して、身近な居住環境を漸進的に改善し、まちの活力と魅力を高め、「生活の質の向上」を実現するための一連の持続的な活動である。

    "まちづくり"が持続的な活動である理由の一端はここにあるのだと思います

    スタジアムを作れば常に"スタジアムは、まちづくり"が達成できるわけではない。
    だからこそ、"スタジアム作りは、まちづくり""スタジアム建設は、まちづくり"ではなく、あえて"スタジアムは、まちづくり(街づくり)"と表現しているのかもしれません


    "スタジアムは、まちづくり"とは事実を示しているのではなく、目標だと考るべきもの。
    すなわち、スタジアムは、作って終わりではないということなのです



    さて、次回はここまでの話を踏まえ、どのように"まちづくり"に関わればいいか。
    ハード面からも理想のスタジアム像とは何かという点について考えていきたいと思います。
    ラスト1回よろしくお付き合いくだされば幸いです

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    本谷社長の退任に寄せて

    サンフレ新社長に小谷野氏 「経営再建進める」
    《中国新聞2012年12月19日 閲覧:2012年12月18日》

     J1サンフレッチェ広島は18日、広島市中区のホテルで取締役会を開き、常務の小谷野(こやの)薫氏(49)が1月1日付で社長に就任することを承認した。本谷祐一社長(58)は年内で退任する。 
     小谷野氏は東京都墨田区出身。東京大教養学部を卒業し、米ニューヨーク大経営大学院を修了。野村総研やクレディ・スイス証券などを経て、2010年に家電量販店エディオンの顧問に就任。今年4月にクラブの取締役となり、9月から常務に就いている。
     小谷野氏は「経営再建が進む中で、実現できていないものがある。着実に取り組んでいきたい」と話した。
     本谷社長はJ2に降格した07年12月に就任。今季は森保一監督を招き、初のリーグ制覇を成し遂げた。経営面では20億円を超える累積赤字解消のため昨年12月に減資を断行。5カ年の再建計画を策定し、今季から経営安定化に取り組んでいた。
     本谷社長は退任理由に減資を挙げ、「株主の皆さまの財産を損なった責任を明確にすべきと判断した」と述べた。(山崎雄一)

    12月はJリーグファンにとって別れと出会いの季節。
    サンフレッチェ広島からまだ契約満了選手のリリースは発表されていません。
    一方で、DF森脇の浦和移籍が発表森山佳郎ユース監督の退任が確実となっています。
    これらに加えて18日の取締役会で本谷社長の退任と小谷野社長の就任が決定しました

    今回は2012年総括の一環として。
    そして本谷社長の退任に寄せて、少しばかり振り返ってみます

    ※かなり読みづらい文章になっていると思います。申し訳ありません



    ①本谷社長就任の経緯
    本谷社長がサンフレッチェの社長に就任したのは2007年12月のこと

    2007年は広島サポにとって悪夢の一つ、2度目のJ2降格が決定した年でした。
    降格決定後、当時の久保社長は選手・監督ではなくフロントに問題があったとして社長を辞任。
    また、現浦和監督のペトロヴィッチ監督の続投を明言。
    そして、「経営とサッカーの両面に見識のある常勤の球団社長を据える」と発表しました

    この発表には多くのサポーターだけでなくマスメディアも驚きを隠せませんでした。
    降格して監督や選手ではなくフロントが責任を取るというケースは前代未聞。
    34試合戦って8勝8分け18敗と勝ち点は32、得点44の失点71。
    数字だけを見れば言い訳のきかない結果でしょう

    降格決定後、フラール(当時BA内にあったレストラン、現在は閉店)で開かれた臨時サポカン、翌年1月に開かれた第2回サポカンでも監督留任について厳しい言葉があったそうです

    また、ペトロヴィッチ監督が退任した2011年シーズンこそファン・サポーターは涙していましたが、2008年の試合において選手のコールはあれど監督に対するコールはありませんでした。
    それほどまでに降格という現実はファン・サポーターにとって厳しいものだったのです

    そんな逆風のような中で社長に就任することとなった本谷社長。
    私たちが思っている以上の重圧があったと思います


    ②就任直後に掲げた目標
    本谷社長は、就任直後に4つの目標を掲げました

    【参考】
    新社長・本谷祐一より、サポーターの皆様へ
    《サンフレッチェ広島2007年12月28日 閲覧:2012年12月18日》

    1つ目は1年でのJ1復帰
    地方クラブにとってJ2降格の最も恐ろしいところは収入の激減です。
    確定的に減るJリーグ配分金の他、入場料収入・広告料収入も減ります。
    予算が減れば減るだけJ1復帰の道は遠くなってしまいます。
    だからこそ早期のJ1復帰が至上命題でした

    2点目~4点目は次の通り。

    • 監督・コーチ・サポーターの皆様とのコミュニケーションをしっかりととっていく
    • 下部組織の維持・強化
    • 現在の業務はゼロベースで見直し、新年度から組織改革、社員の意識改革を行う

    結論から言うと、この4つの目標はほぼ達成されたと考えています。
    1つ目と2つ目に関しては昇格及び翌年の成績をもって証明されたとみていいでしょう。
    ユースについては以前書いたとおり、評価基準によって変わりますが評価しています。
    そして、本谷社長の最大の功績の1つが4つ目の社内改革だと考えています

    私の責任 サンフレッチェ広島 久保允誉会長インタビュー
    《紫熊倶楽部 2008年2月号vol.120》

     自分には、サンフレッチェとは別に本業がある。サンフレッチェのことももちろん気になっていたし、そちらにかかわりたいと思っていても、それは難しい状況でした。だから「頼む」という形になってしまい、今年はサンフレッチェにはほとんど関われなかったんです。 

    2008年2月号の紫熊倶楽部に掲載された久保会長の「私の責任」というインタビュー。
    このように、久保会長は降格の要因としてフロントの問題点を挙げています。
    社内改革を行うことが新たに就任する社長に与えられた重要なタスクだったのです

    ソースを準備できませんでしたが、2007年における補強は後手だったと聞きます。
    トップとの意思疎通が難しかったため1つ1つのアクションが遅れてしまったと。
    2008年以降の補強の成功・迅速さがこの社内改革の成功の一端を示していると言えますね

    (この社内改革については次項でも少しだけ取り上げます)



    ③J1復帰以降に目指したこと
    2009年に1年でのJ1復帰を果たしたサンフレッチェ広島。
    そこで本谷社長が掲げた目標の中で代表的なものは2つあります。
    1つは2年間での成績目標、もう1つは年間予算の拡充です

    成績目標は、2年間でタイトルを獲得することとACL出場権の獲得でした。
    タイトルの獲得はなりませんでしたが2010年にはナビスコカップ決勝に進出。
    また、ACLへの出場も果たしています

    年間予算の拡充とは、2008年に立ち上げた「30億円プロジェクト」のこと

    フロントを2本部制に 組織見直し
    《中国新聞2008年2月1日 閲覧:2012年12月18日》

     J2広島は31日、広島市中区のホテルで取締役会を開き、2月1日付でのフロント組織の変更について承認を受けた。従来の1本部5部制から、管理強化本部と事業本部の2本部制を採用する。

     管理強化本部はトップチームなどを担当する強化部、普及部、総務部を統括する。本部長は本谷祐一社長が兼務する。
     事業本部は従来のホームタウン本部を吸収。営業部、運営部、ホームタウン推進部、広報部を束ねる。本部長には今後、主要株主のマツダから就任予定の取締役が就く。

     2本部7部とは別に、各部にまたがる事項やマーケティング調査などにあたる企画部を新設。さらに、J1クラブの平均売上高30億円を目指す「30億円プロジェクト」も発足させ、2006年度の約23億円からの大幅増に取り組む。
     組織の見直しは、今回のJ2降格の一因にフロントの意思決定の遅れがあったとの反省から実施。本谷社長は「常勤取締役は私と就任予定者の2人体制となる。協力し合い、より細かく見ていく。情報を共有することで意思決定を早めたい」と説明した。(佐藤正明)

    なぜ30億円なのかについては第4回サポカンで語っています

    第4回サポーターズ・カンファレンス
    《2008年12月14日開催》

     なぜ選手強化費に回すのかというと、J1のカテゴリーに入ったとしてもサンフレッチェの選手強化費の総額は下から2番目か3番目です。これでは、「常に優勝争いをしろ」とはいえない。これをJ1中位ぐらいにもっていかないといけない。売り上げを伸ばして経費を削減し、余った分を選手強化費へ、ということをやっていきます。
     いま目論見をしているのは、来年の予算を25億円台~26億円弱にもっていくこと。来年から考えて3年後には、収入規模を30億円まで持って行ければ、選手人件費は間違いなく中位ぐらいのところになります。戦えるチームになるし、選手にお金もしっかり出せると思っています。

    このようにJ1復帰後はJリーグのなかで中堅クラブを目指す思考だったことが分かります。
    そして、それは現在でも変わっていません

    サンフレッチェ広島のブレない指針(前編)【サッカー批評 issue50】
    《フットボールチャンネル 閲覧:2012年12月18日》

    「建前の部分ではACLを目指すべくJリーグ3位以内に入りたい。あるいは、ナビスコカップ、天皇杯のタイトルを獲りたい。ただ、うちのクラブの現実的な目標はリーグで7位以内。賞金獲得圏内にいること、居続けることです。これが一番大事なことではないかなと思っています」と語る。

    その道筋を付けることが出来たのではないでしょうか。
    実際にJ1復帰を果たした2009年以降4年連続で賞金圏にいるクラブは広島だけです



    ④積み残した宿題
    前述したように就任当初に掲げた目標の多くは達成されたと思います。
    一方ですべての目標が達成できたとは言えません

    1つ目は前述した「30億円プロジェクト」

    SFCの営業収入推移

    このようにサンフレッチェの営業収入は2009年以降安定して26億円を超えています。
    しかし、目標の30億円には3億円~4億円不足しているのもまた事実。
    第4回サポカンで、本谷社長は「来年から考えて3年後には、収入規模を30億円まで持って行ければ」と語っていましたが、目標の2011年に達成することは出来ませんでした。


    2つ目の宿題は観戦環境。
    すなわちアクセス問題の改善とサッカースタジアム建設になります

    アクセス問題についてはクラブ単独で解決できることは多くありませんでした。
    ほとんど臨時駐車場の消滅と新しい駐車場の追加といういたちごっこだったように思います。
    アルパークからのシャトルバス消滅、広島空港からのバスの社会実験などもありましたが

    スタジアムについて取り組んだことの1つは芝かぶり席の創設でしょう。
    先日書いたとおり、これは「臨場感」を伝えるための施策でした。
    また、2009年にはスタジアム推進プロジェクトを再始動させています。
    これは結果から言うと失敗に終わったとみています

    (追記)
    この他に、2011年1月から県サッカー協会主導の署名にも協力しています。
    後述する現在の署名はこれが発展したような形


    2012年の8月からはついにスタジアムの早期実現を目指す署名を開始しました。
    17日現在で33万件を超える署名が集まっており、目標の20万件を大きく超えています。
    ただし、署名は集まっていますが実現のための1歩でしかありません。
    署名の後には建設地の話、建設費の話、運営の話とまだまだ続きます。
    今はそのための礎の段階だと考えるべきです


    3つ目の課題は今年5月に行った減資の影響です。
    減資とはなんなのかということについては下記URLが分かりやすいと思います

    【参考】
    増資と減資-いま聞きたいQ&A
    《man@bowまなぼう 閲覧:2012年12月18日》

    なぜ減資を行ったのか。
    それは就任前からあった赤字が積み重なっており、それに就任以後の赤字が嵩んだから

    理由はあるのですが、本谷社長のもとでの経営成績は4期中3期の赤字でした。
    債務超過の危機という視点で見れば2006年に後戻りしてしまったとも言えます。
    今年、減資と増資を行ったことで経営体質は相当回復することが出来ました

    しかし、これは株主の資産を削って生まれたもの。
    冒頭のニュースにもあるようにその責任を取って今回退任となりました。
    クラブライセンス制度のこともあり、今後の経営は大きなテーマになることは間違いありません



    ⑤本谷社長の退任に寄せて
    つらつらと書き殴ってきましたが、本谷社長には感謝しています。
    すべてがすべて達成できたわけではありませんでしたが、まさに「立て直し屋」。
    何より、サポーターにとって辛い時期を一緒に戦ってくれました。
    本谷社長が就任されてから5年。長かったようでとても短かった。
    その最後の年を「優勝」という形で締めくくれたのは本当に嬉しいです

    上で書いたことはあくまでも私が今回の記事を書くにあたって思い出した部分だけです。
    本谷社長がやってこられたことはこれだけではありませんし、私の知らない部分もあります。
    ただ、多くの人にとって「優勝したときの社長」だけでなく「苦楽を共にした社長」。
    そういう形でも記憶に残ればいいと切に願います

    サンフレッチェ広島の強みは育成組織だと長らく言われています。
    それは間違いないと自負する一方で、"フロント力" もまたJ屈指だったと胸を張りたい

    5年間本当にお疲れ様でした。
    ただ、2012年でサンフレッチェが終わるわけではありません

    ギフト~E名言の世界~"のフレーズ・例文
    《ゴガクル 閲覧:2012年12月18日》

    個人であれ、企業であり、成功を手にしたと思った瞬間に進歩は止まるのです。
    トーマス・J・ワトソン

    本谷社長のサンフレッチェは一旦終わります。
    しかし、サンフレッチェも本谷さんも止まらず、進み続けるんです。
    小谷野社長、これからのサンフレッチェを宜しくお願いします

    awayisumawayisum  at 09:00コメント(0)トラックバック(0) この記事をクリップ! 

    第30節G大阪戦 ~プレッシャーの量だけサッカーも楽しくなる~

    スポーツ名言集
    《Number Web 2012年10月29日閲覧》

    プレッシャーの量だけ、サッカーも楽しくなる。
    ドゥンガ(サッカー)


    424号(1997年7月31日発売)
    ブラジル代表に復帰後、フランスW杯に向けてのインタビュー。
    負けられないというプレッシャーをキャプテンの立場で楽しんでいた。

    タイトルは元磐田のドゥンガの言葉から



    ①万博での一戦
    天気は快晴。10月も終わりだというのにじっとりと汗ばむくらいの陽気でした

    121027-01

    今回は茨木駅からのシャトルバスを利用。
    シャトルバスの待機列も去年まで以上に長かったのではないでしょうか。
    ちょっとしたことですが、片道210円よりも200円など支払いやすい金額にしてもいいと思う

    121027-02

    ガンバ側ゴール裏ゲートに掲げられたフラッグ。
    どんな相手でも難しい試合になるのがJリーグ。
    その中でも特に残留を争うチームの必死さは本当に恐ろしいものです

    121027-03

    他の場所でも食べられるのが分かっていてもつい並んでしまうくくるのたこ焼き。
    ものすごい行列で、最後尾から購入まで1時間以上かかりました。
    試合開始に間に合わなかった、あるいは諦めた人も多かったでしょう

    画像は、年間パス優先販売口。
    年間パスに付加価値を付けることは非常に大事なことです。
    年間パスはクラブを安定的に支える収入源の1つですから

    実際に、優先列の回転は一般列に比べて相当早かったです。
    ただ、それでも全体的に列の動きは鈍く、観客が来るときはもっと量産体制にした方が…


    ②芝かぶり席
    以前まではゴール裏でしたが、今回はSB席。
    ゴール裏の紫一色を写真に収めたかったのが一番の理由

    121027-04

    綺麗な紫色。
    試合開始前のコールもよく響いていました

    この試合で気になったのは芝かぶり席

    121027-05

    「芝かぶり席」とは、相撲の「砂かぶり席」をヒントに作られた座席です。
    スタンドよりも近くから選手のプレーが見れるため迫力が全く違うとか。
    マツダスタジアムの砂かぶり席もその仲間

    【参考】
    個人・少人数向け観客席
    《広島東洋カープ公式サイト 2012年10月29日閲覧》

    サンフレッチェでも、この芝かぶり席2008年シーズンから導入しています。
    これは、サービス提供という意味の他に"臨場感"を伝えたいという狙いがあったそうです

    第4回サポーターズ・カンファレンス議事録(2008年12月14日)

    1.クラブ運営(本谷)
     皆さんご存じのとおり、「芝かぶり席」というのをやりました。個人的には、あれは「専用競技場を早く欲しいんだ」というメッセージを込めたつもりなんですね。来年はできるだけ、あの席を常態化した中でやりたいのですが、やはりサッカーをしっかり楽しんで頂くハードの整備が大事です。私たちは当然動いていきますが、必ず皆さんに(サポートを)お願いする時期がやってきます。そのときには、よろしくお願いしたいと思います。

    他のクラブでも順次導入されており、ガンバではSCSKシートとして販売しています。
    2009年から導入したクラブが多いので、Jリーグから指示あるいは提案があったのかも

    この座席の位置はクラブによって違うようです

    2012sanf-shiba
    サンフレッチェ広島公式サイトより》

    2012gamba-shiba
    ガンバ大阪オフィシャルサイトより》

    他のクラブも見てみたところ、山形鳥栖では広島と同じようにコーナーフラッグ付近。
    セレッソ愛媛ではガンバのようにバックスタンド付近に設置されているようです。
    スタンドなどの位置関係の問題?


    ③スタジアム募金と署名活動
    マリノスとのアウェイゲームのように公式で事前告知はありませんでしたが署名がありました。
    場所は、ガンバ大阪のスタジアム模型を展示しているスペースのすぐ隣

    121027-06

    ちなみにガンバのスタジアム模型はこんな感じ。
    ネット上で見るのとでは、百聞は一見にしかずといったところです(ちょっと違う)

    121027-07

    ガンバは新スタジアムを全額寄付金でまかなおうというコンセプトで動いています

    その中で、新しい試みとしてあったのがタイアップ募金。
    元ガンバ大阪の嵜本晋輔氏がご兄弟で経営している洋菓子店パティスリーブラザーズの商品"for Osaka dream box"を購入すると売上げの10% が寄付に回るそうです 

    121027-08

    買ってきたお菓子については追記で少しだけ紹介しておきます。
    また、スタジアムの話は次回のブログで取り上げる予定なのでこれくらいで


    ④見えないプレッシャー
    試合は、MF遠藤の綺麗なゴールで先制されましたが、カズのゴールで追いついて引き分け。
    マリノス戦から連敗はないものの10月の3試合で勝ち点2と足踏みをしているように見えます

    特にこの試合では普段しないようなパスミスが多く、リズムを崩していた印象でした。
    選手は皆、重圧は感じていないというコメントをしていますが、そう簡単ではないでしょう。
    見えないプレッシャーがあったのだと思います

    その重圧もすべて今後にいきていく経験となるはず。
    3位浦和は1分2敗と苦しんでいますが、2位仙台は2勝1分と好調です。
    順位上は首位でも、トップを走っている印象は余りありません

    このハラハラドキドキ感が選手だけでなくクラブもサポーターも育ててくれるのでしょう。
    私たちもこのプレッシャーを満喫して応援の声を送らないと。
    サッカーは楽しいものではなく愉しむものですから

    最後にプロ野球の野村克也氏の名言で〆たいと思います。
    一戦必勝

    野村克也の名言
    《名言ソーシャルネットワークFesh 2012年10月29日閲覧》

    優勝というのは強い、弱いかで決まるんじゃない。
    優勝するにふさわしいかどうかで決まる


    野村克也 『野村の流儀 人生の教えとなる257の言葉』より
    続きを読む

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