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スタジアム論

サンフレッチェ広島 2014年通信簿(中編)

(前編)に引き続き通信簿を付けていきましょう。
前回は成績と経営面の話でしたが、今回はスタジアムと企画広報について
 


⑥スタジアム…【よく出来ました】
スタジアムというテーマではありますが、大きく分けて2種類の話に分かれます。
すなわち、既存スタジアムについての話と新規スタジアムについての話です

既存スタジアムについて、サンフレッチェが2014年に取り組んだことは大きく2つあります

1つは2014年から芝かぶり席を廃止。
代わりに新席種・セブン-イレブン フィールドシートを設置しました

2014総括009
サンフレッチェ広島公式HPより》

座席数も50席から104席に増加し、値段も大人6000円から4500円とリーズナブルに。
また、従来はA1ゲート近くのコーナーアーク側でしたが、セブン-イレブン フィールドシートはバックスタンド前で、ピッチに対して平行に設置されています

ただ、厳密にカウントはしていませんがスタジアムで見る限りでは利用者が少ない。
近くで見れるというのは大きなメリットですが、飲食などに制限が多いのも事実。
設置に手間もかかるでしょうし、クラブが今後どう取り扱っていくのかに注目しています


2014総括010
サンフレッチェ広島公式HPより》

もう一つの大きな取り組みがホームゲーム飲食売店の募集

《サンフレッチェ広島公式HP 2015年1月12日閲覧》
 
このたびサンフレッチェ広島では、来場者の皆さまに、より魅力的かつご満足いただける飲食を提供することを目的に「スタジアムグルメ向上計画」と銘打ち、2015シーズン サンフレッチェ広島ホームゲーム時に出店していただく飲食売店を次の通り募集いたします。多数のご応募、お待ちしております。

表だって飲食店を募集するのは知る限りでは初めてのこと。
エディオンスタジアムに施設上の制約があることは過去も話題になっています

4)観客動員について
《第11回サポーターズカンファレンス議事録 2013年7月20日》
 
【スタジアム・グルメについて】
 スタジアム・グルメにつきましては、サポーターズ・カンファレンスだけではなくメールでも「コラボメニューが冷えていておいしくなかった」等のご意見を日々いただいています。そういったご意見については担当の業者の方等に品質の改善、向上を都度申し入れております。できる部分で改善を図り、より魅力的な商品を提供できるように図っていきたいと思います。一方で言い訳になったら申し訳ありませんが、皆様にご理解いただきたいのが、今のエディオンスタジアム広島は、いわゆるW杯対応のスタジアムやマツダ・スタジアムのように、すでに飲食のブースが入るエリアが設営されていて、給排水の設備等を有しているスタジアムではございません。皆様ご存じの通り、テントを設営して業者の皆様にも努力していただており、そのなかでわれわれも日々、できる限りでの改善を要求している事実はございます。そういった環境にあるということはひとつご理解いただきたいと思います。

こういった制約はありますが、新スタジアムがすぐ出来るわけではありません。
制約を受ける中でカスタマーサティスファクションを向上させる狙いがあると考えられます

立地が悪い分、飲食に投資出来ればリターンも期待できるのではないでしょうか。
この結果にも注目していきたいところです


そんなエディオンスタジアムについて、2014年はJリーグから3度注意等を受けたようです

1つは前回紹介したナビスコ杯の日程変更の件
2つ目は大型映像装置が再度故障したことについて

《サンフレッチェ広島公式HP 2015年1月12日閲覧》
 
 平成25年2月に表示部の不具合により修理不能となったため、以降は観客席中段部へのLEDパネル(380インチ)を設置し、仮設対応を行っておりました。その間、ご来場された多くお客様には大変ご迷惑をお掛けしておりました。
 
 この度、広島市側による再改修が行われ、再度の仮設対応ではありますが、従来と同サイズの470インチLEDパネルを常設装置画面部に移動設置を行うことになりましたので、ご連絡申し上げます。 
 大型映像装置については、Jリーグからの改善勧告を受けておりましたが、本対応により従来同等の会場サービスをご提供させていただきます。

そして最後の1つがJ1クラブライセンスの交付に際して

《サンフレッチェ広島公式HP 2015年1月12日閲覧》

 9月29日(月)、クラブライセンス交付第一審機関(FIB)決定によって、サンフレッチェ広島に対し、2015シーズンに関するJ1クラブライセンスが交付されることになりましたので、お知らせします。 
 なお、クラブライセンス交付第一審機関からは、「トイレの数と屋根のカバー率」について、昨年に引き続き『B等級基準未不充足(制裁対象)』の通知がありました。2015年の審査時に計画の進捗が見られない場合には、今回の「制裁」が「戒告」になる旨も、併せて通知されています。

この中でも特にクラブライセンス制度についてはJリーグ側がかなり強気に来ています。
屋根のカバー率やトイレの数は一朝一夕に改善できるものではありません。
だからというだけではありませんが、新スタジアムが求められる一つの理由ではあります


新スタジアムについて、サンフレッチェは昨年2度のシンポジウムを実施しました。
第4回には中島浩司氏を招き、第5回には森保一監督が出席しています

【参考①】
《サンフレッチェ広島公式HP 2015年1月12日閲覧》
【参考②】
《サンフレッチェ広島公式HP 2015年1月12日閲覧》

署名活動ではついに目標だった40万件を突破
村井チェアマンを招いてトークイベントを実施しました

《サンフレッチェ広島公式HP 2015年1月12日閲覧》
 
 また、継続的に実施しております「サッカースタジアム建設要望の署名活動」について、多くの方のご協力を得て、このたび40万件を突破いたしました。
 サッカースタジアム建設要望署名数/401,871件(2014年6月27日現在)
 
 つきましては、7月6日(日)『Jリーグ再開&スタジアム署名40万件突破トークイベント』をゆめタウン広島で開催いたしますので、お知らせいたします。




さらに、森保一監督がW杯による中断期間を活用して欧州スタジアム視察に向かい、広島ホームテレビでもその映像が放送されました




11月には1年半にわたったサッカースタジアム検討協議会が閉会
結果として旧広島市民球場跡地と広島みなと公園が併記されることになりました

《サンフレッチェ広島公式HP 2015年1月12日閲覧》
 
 本日、最終回となる第19回サッカースタジアム検討協議会が開催されました。
 協議会では、広島に相応しいサッカースタジアムについて、これまで議論が重ねられてきました。
 結論は、検討候補地として「旧市民球場跡地」と「広島みなと公園」の2か所併記で最終とりまとめになります。
 旧市民球場跡地1か所に絞れなかったのは残念ですが、ひろしま夢スタジアム実行委員会としては、交通アクセスの良い市内中心部(旧市民球場跡地)にて、広島の街づくり、賑わいの創出、将来に資するサッカースタジアム建設の早期実現に向けて、これまで以上に努力してまいります。

新スタジアムについては後日改めて詳しくやりたいと思っています



⑦企画広報…【大変良くできました】
本稿最後は企画広報について。
2014年もまた面白い企画が満載でした…が、多すぎるので主要なものだけ取り上げます。
また、サンチェに関する企画については数が多すぎるので去年同様別途やります


2014年から大きく変わったことの一つがサンフレッチェレディース
過去3年間は公募で決まっていましたが、2014年から地元アイドルが就任しました

『サンフレッチェ・レディース 2014』に地元広島アイドルユニット SPL∞ASH 就任のお知らせ
《サンフレッチェ広島公式HP 2015年1月12日閲覧》
 
このたび「サンフレッチェ・レディース 2014」に、地元広島のアイドルユニット“SPL∞ASH”が就任いたしましたので、お知らせいたします。サンフレッチェ広島に関するイベントやグッズ・グルメ情報、魅力の発信など、サポーターの皆さまと一緒に、サンフレッチェ広島を盛り上げる応援ユニットとして活動していきます。

さすがにプロが就任したことで露出面での起用は柔軟だったように感じます。
2015年以降も継続してレディースを努めてもらえるのでしょうか

そんなSPL∞ASHのお披露目となったのが2014サンフレッチェ広島キックオフイベント。
ここでは、まさかのぶっつけ本番で恋するフォーチュンクッキーを踊るというイベントが

《佐藤寿人オフィシャルサイト 2015年1月12日閲覧》
 
ファン感、会場がいっぱいになるくらいのたくさんの方々に来て頂き今シーズンへの期待を実感しました。
PVの撮影は何も知らなかったのと振り付けも今日、初めて見たので踊れていませんが・・・
知らない事に年齢を感じました(笑)
仙台時代のファン感ではモー娘。を踊ったので時代を感じますね。




メディアの露出も2014年はかなり増えたのではないかと思います。
中でも、ゴールデンタイムの全国放送、とんねるずのみなさんのおかげでした・ぶらり途中下車<貝>に佐藤寿人選手が出演したのは大きなニュースでした



ローカルでは2013年からスタートしたTSSのサンフレッチェ魂が4月から毎月放送

2014総括011
サンフレッチェ広島魂より》

これはサンフレッチェの価値が上がったこともありますが、2013年に現役引退された中島浩司さんが所属する株式会社ベアフットの存在もあるのではないかと想像しています

前述した2014サンフレッチェ広島キックオフイベントでもベアフットの協力がありました。
ベアフットという外部組織と協力することで広報は更に柔軟になったのではないでしょうか

2015年も番組が続きますように


試合関連ではフィギュアスケートの町田樹さんを招くことが出来ました。
しかも、すごくノリがいい

2014総括011
サンフレッチェ広島公式HPより》

町田樹シートという席種も臨時販売するなど新鮮な企画でした


サンフレッチェ広島といえばバナー芸…と言えるほど面白いものが作られています
今回はその中でも、謎の力作が揃っている"駆けつけ割"のバナーを紹介していきます

駆けつけ割とは、仕事などの関係で平日夜の試合のキックオフ時間に間に合わない人たち向けの商品で、キックオフ30分後以降なら全席種半額になるというお得な割引サービス


それではまとめてどうぞ。
そして、次回が通信簿最終回です 

2014総括013
《サンフレッチェ広島公式HPより ACL・北京国安戦》

2014総括014
《サンフレッチェ広島公式HPより ACL・ソウル戦》

2014総括015
《サンフレッチェ広島公式HPより ACL・CCM戦》

2014総括016
《サンフレッチェ広島公式HPより ACL・WSW戦》

2014総括017
《サンフレッチェ広島公式HPより リーグ再開》

2014総括018
《サンフレッチェ広島公式HPより J1・柏戦》

2014総括019
《サンフレッチェ広島公式HPより ナビスコ・浦和戦》

2014総括020
《サンフレッチェ広島公式HPより ナビスコ・柏戦》


おまけに試合関連で個人的にツボだったバナーを3つ

2014総括021
《サンフレッチェ広島公式HP J1・柏戦》

2014総括022
《サンフレッチェ広島公式HPより J1・甲府戦》

2014総括023
《サンフレッチェ広島公式HPより 天皇杯・水戸戦》


(後編)に続く


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[memo]サッカースタジアム検討協議会開催概要(2014年度分)

サッカースタジアム検討協議会の開催概要をまとめました
2013年度分のまとめに関してはこちらからどうぞ

START for 夢スタジアム実行委員会の投稿を時系列に沿って整理しているだけです。
最新版が投稿され次第順次追加していきます




サッカースタジアム検討協議会からの中間取りまとめの報告について
日時:平成26年4月10日(木)午前11時20分~11時35分
場所:広島商工会議所2階202号室
内容:中間取りまとめの報告

出席者
サッカースタジアム検討協議会会長 三浦 浩之
広島県知事 湯﨑 英彦
広島市長 松井 一實
広島商工会議所会頭 深山 英樹
広島県サッカー協会会長 小城 得達


第11回サッカースタジアム検討協議会
日時:平成26年4月28日(月)午後1時30分
場所:広島県庁自治会館会議棟1階101会議室
議題:今後の進め方について(外部の専門機関への委託等)



傍聴レポ→平成26年4月28日第11回サッカースタジアム検討協議会@広島 レポート


サッカースタジアム検討に係る調査業務プロポーザル審査委員会
日時:平成26年5月22日(木)


第12回サッカースタジアム検討協議会
日時:平成26年6月11日(水)午後3時
場所:広島県庁本館3階301会議室
議題:広島に相応しいサッカースタジアムについて


傍聴レポ→平成26年6月11日第12回サッカースタジアム検討協議会@広島 レポート


第13回サッカースタジアム検討協議会
日時:平成26年6月30日(月)午後1時
場所:広島商工会議所1階101号室
議題:広島に相応しいサッカースタジアムについて



傍聴レポ→平成26年6月30日第13回サッカースタジアム検討協議会@広島 レポート


第14回サッカースタジアム検討協議会

日時:平成26年7月29日(火)午後1時
場所:広島市保健所3階大会議室
議題:広島に相応しいサッカースタジアムについて


傍聴レポ→平成26年7月29日第14回サッカースタジアム検討協議会@広島 レポート


●勉強会
非公開、2回実施


第15回サッカースタジアム検討協議会
日時:平成26年9月4日(木)午後4時
場所:大手町平和ビル5階 広島市中区地域福祉センター大会議室1・2
議題:広島に相応しいサッカースタジアムについて


傍聴レポ→平成26年9月4日第15回サッカースタジアム検討協議会@広島 レポート


第16回サッカースタジアム検討協議会
日時:平成26年9月30日(火)午後1時30分
場所:広島商工会議所1階101号室
議題:広島に相応しいサッカースタジアムについて



傍聴レポ→平成26年9月30日第16回サッカースタジアム検討協議会@広島 レポート


●第17回サッカースタジアム検討協議会
日時:平成26年10月8日(水)午後3時
場所:広島県庁自治会館会議棟1階101会議室
議題:広島に相応しいサッカースタジアムについて



傍聴レポ→平成26年10月8日第17回サッカースタジアム検討協議会@広島 レポート


第18回サッカースタジアム検討協議会
日時:平成26年10月29日(水)午前10時
場所:広島市役所本庁舎2階講堂
議題:広島に相応しいサッカースタジアムについて



傍聴レポ→平成26年10月29日第18回サッカースタジアム検討協議会@広島 レポート


第19回サッカースタジアム検討協議会
日時:平成25年11月19日(火)午前9時30分
場所:広島商工会議所2階202号会議室
議題:広島に相応しいサッカースタジアムについて



傍聴レポ→平成26年11月21日第19回サッカースタジアム検討協議会@広島 レポート


「広島に相応しいサッカースタジアムについて」の提言


以上

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"スタジアムは、街づくり"について本気出して考えてみた(後編)

①Jリーグのスタジアム像と"まちづくり"
前回は主にソフト面から"まちづくり"とスタジアムの関係を見てきました。
しかし、ソフト面のみを見てハード面を見ないのでは片手落ちと言えます

どのようなスタジアムならば、"まちづくり"に貢献していると言えるのでしょうか?


Jリーグのスタジアムには、2つの指針が存在します

1つはJFAが公開しているスタジアム標準
座席数や屋根をはじめとして細々としたガイドラインが示されています

そしてもう1つがJリーグニュース特別版 スタジアムの未来
こちらは主にヨーロッパのスタジアム視察を元にしたイメージが示されています


スタジアム標準がスタジアムの水準を示すものであるとすれば、スタジアムの未来はスタジアムの方向性を示すものと言っていいでしょう

  • 文化として【サッカースタジアム】 Culture
  • シンボルとして【ホームスタジアム】 Identity
  • コミュニティーができる【ファミリースタジアム】 Community
  • ホスピタリティ【社交スタジアム】 Society
  • 街の集客装置【街なかスタジアム】 Location 
  • 多機能複合型【スタジアム・ビジネス】 Economy
  • 環境にやさしい【グリーンスタジアム】 Ecology
  • プロフェッショナル【スタジアム経営】 Management
  • 防災拠点【ライフスタジアム】 Emergency

  • スタジアムの未来では、9つのテーマに分けて方向性を示しています。
    この方向性は、実は"まちづくり"と密接にリンクしていました

    再びまちづくりの方法から。
    まちづくりの方法では、10個の"まちづくりの基本目標"が例示されています

    1. 地域の諸活動の中心核となる「まち場」の再生
    2. 誰もが安心して住み続けられる持続可能な地域社会
    3. 歩いて日常生活をおくれる歩行圏中心のまちづくり
    4. 町並み・景観の整備と歴史・文化・芸術の場の創造と再生
    5. 多様な生活像が共存し多文化が共生する地域社会
    6. 資源を浪費しないコンパクトなまちの構成
    7. 自然、生態系と共存するまちの仕組みの再生
    8. 人を暖かく迎え入れ、多様な交流の機会を持つまちづくり
    9. コミュニティビジネスなどによる循環型地域経済
    10. 共治を基盤とする地域社会システムの構築

    個別の説明は省きますが、最終的にこういった目標を徐々に達成できるようにする持続的活動こそが"まちづくり"である、と説明されています


    これらを簡単に比較してみましょう

    "地域の諸活動の中心核となる「まち場」の再生"はIdentityCommunity
    "誰もが安心して住み続けられる持続可能な地域社会"はEmergency
    "多様な生活像が共存し多文化が共生する地域社会"はEconomy
    "資源を浪費しないコンパクトなまちの構成"はEcology
    "自然、生態系と共存するまちの仕組みの再生"もEcology
    "人を暖かく迎え入れ、多様な交流の機会を持つまちづくり"はCommunitySociety
    "コミュニティビジネスなどによる循環型地域経済"はSociety

    このように多くのポイントがリンクしていることが分かります。
    スタジアムの未来は、"スタジアムは、まちづくり"の教本と言えるものでしょう


    "街スタ"と"スタ街"
    このスタジアムの未来の中で、唯一矛盾するような表現があります。
    それが街の集客装置【街なかスタジアム】 Locationという項目

    《Jリーグニュース特別版 スタジアムの未来 2014年5月31日閲覧》

     欧州のサッカースタジアムもアメリカのボールパークも今、街なかに回帰している。もし、Jクラブのスタジアムも街なかにあったら。人口減少・高齢化時代に、郊外に分散したにぎわいを再び街なかに呼び戻す装置として、昭和時代のデパート同様、中心市街地の核(コア)として強い求心力になるだろう
     わが国でも2010年11月、北九州市が新幹線小倉駅の北500メートルに、ギラヴァンツ北九州(J2)のホームスタジアムとして街なかスタジアム計画を打ち出した。
     VfLヴォルフスブルクで5シーズン半プレーした長谷部誠選手は、ホームスタジアムについて次のように語った。「中央駅から歩いて(10分ほどで)行ける利便性の高い立地なので、試合後に渋滞も起きず、選手としてストレスがありません」

    ①街づくり
     年間を通して週末ごとに、多いときには万人単位の巨大集客装置となる。千人単位のアウェイファン・サポーターも、試合の前後は「観光客」。スタジアムへのアクセスは徒歩が中心となり、観客が長く滞留する街の仕掛けがあれば、中心市街地に大きな経済効果をもたらす

    ②都市再開発
     郊外の再開発プロジェクトの核として、面開発の複合型の街づくりが行われる。公共交通や十分な駐車場整備に加え、パーク&ライド整備が必要である。

    このように、中心市街地のスタジアムと郊外のスタジアムの両方が説明されています。
    これは"スタジアムは、まちづくり"に複数の正解が存在していることを示しているのです

    中心市街地の求心力回復のために街中にスタジアムを整備する"街スタ"
    都市再開発の目玉として郊外にスタジアムを整備する"スタ街"

    この考え方は、2012年に開催されたシンポジウムでも解説がありました

    基調講演=プロスポーツと地域社会
    《第1回シンポジウム 2012年11月5日》

    何故今スタジアムなのか
    世界は今人間回帰という言葉で街中に暖かみのあるスタジアムに移行し始めている

    クラブにとっても、Jリーグにとってもスタジアムは重要
    ライセンス制度も含めて、クラブにとってスタジアムビジネスが経営上重要になってきている
    Jリーグは、リーグの価値を高めるという意味で臨場感を重視している

    また、地域のシンボルとしてスタジアムが位置づけられるようになってきた
    文化・経済両面で求心力になる

    街スタ=街中にスタジアムが出来るケース
    スタ街=スタジアムを核にして街が出来ていくケース

    "スタ街"の代表例とも言えるのが埼玉スタジアム。
    スタジアムの最寄り駅でもある浦和美園駅はスタジアム建設にあわせて計画されました。
    現在もスタジアム周辺の道路開発が進んでいると聞きます

    "街スタ"の代表例は、現在予定されている北九州のスタジアムでしょうか。
    新幹線も停車するJR小倉駅から徒歩7分というロケーションです


    どちらが理想的なのでしょうか?

    machidukuri02

    上記はあくまで一般論ですが、おおよそこういった特性を持っていると思われます。
    どちらにも利点はあり、どちらにも課題はあるといったところ


    ではJリーグの理想は"街スタ"と"スタ街"のいずれにあるのか。
    スタジアムの未来に深く関わっているであろう傍士銑太氏は次のようなコラムを書いています

    (75)街中スタジアム
    《百年構想のある風景 2014年5月31日閲覧》

     “まちなか”は、車中心社会になって「アクセス」(交通の便)の良い郊外型ショッピングセンターに人が流れたが、人口減少・高齢化社会を迎えるいま、人々の視線は、再び人間中心社会に適した「ロケーション」(立地条件)の良い街中に回帰しはじめた。先だって、関西を代表する交通ターミナルの大阪駅北地区に、大規模球技場誘致を検討する協議会が、自治体や財界のトップを交えて発足した。ここは、一日に250万人もの人々が行き交う絶好の場所である。北九州や宇都宮にも具体的な動きが見られる。いよいよ、我が国でも、「街中スタジアム」の時代が到来する。
     Jリーグスタジアム観戦者調査2009によれば、過半は家族連れ。郊外にある埼玉スタジアムに5万人、新潟ビッグスワンに4万人、大分ビッグアイに2万人もの人々が、試合のたびに集まって来る。もしも、これらが街中に在ったらどうだろうかと考えると、地方都市が悩んでいるまちなか復活の“青い鳥”は、意外と身近なところに隠れている。

    このように、明らかに"スタ街"ではなく、"街スタ"を推しています


    ③スタジアムの理想像は各地域にある
    Jリーグの理想的なスタジアム像を"街スタ"とすると新たに2つの疑問点が発生します。
    まず、なぜスタジアムの未来では都市再開発というものが書かれているのか

    これはおそらく、スタジアム整備の可能性を閉ざさないためです

    Jリーグはここ数年、スタジアムの整備を強く訴え、働きかけています。
    あくまでも理想は"街スタ"ではあるものの、土地の確保や地域特有の事情などの問題から全ての地域において"街スタ"を実現することは出来ません

    地域によっては"街スタ"よりも"スタ街"の方が現実的で理想的な場合があるかもしれない。
    だから、"スタ街"にも含みを持たせているのでしょう


    もう1つの疑問点は多機能複合型【スタジアム・ビジネス】 Economyです

    多機能複合型【スタジアム・ビジネス】 Economy
    《Jリーグニュース特別版 スタジアムの未来 2014年5月31日閲覧》

    「これからはさまざまな機能がないと、サッカーだけでは運営できない」。バーゼルのスタジアム経営者であるクリスティアン・ケルン社長は断言した。ホームの公式試合は1シーズンで30日弱。多機能複合型ならば、年間を通して市民生活と接点を保ち、スポーツ以外で稼働率を高めて施設全体の収益を上げることができる。また、周囲の施設と複合的な関係を持つこともできる。
     
    〔複合機能の実例〕
    ・ショッピングセンター・レストラン・ホテル・オフィス・ホームセンター・介護付き高齢者用集合住宅・教育センター・職業専門学校・フィットネスクラブ・見本市

    Jリーグが訴える多機能複合型とは、括弧で書かれているようにビジネスに係るもの
    これは赤字運営を理由に建設に消極的になっている行政へのアピールもあるでしょう。
    あるいは都市公園法の縛りから解き放たれたいという意図もあるかもしれません

    しかし、"街スタ"を考える中でそう簡単にスタジアム・ビジネスが成り立つでしょうか。
    中心市街地にはホテルや商業施設がすでに存在している場合が多いことでしょう。
    周辺地域と顧客の奪い合いをすることが本当に"まちづくり"に寄与すると言えるのか

    また、複合機能の実例に挙がっているものの多くは大規模整備。
    中心市街地にそこまで大きな土地が転がっているものかという点も疑問です

    Jリーグの訴える多機能複合型はどちらかというと"スタ街"寄りの考え方だと言えます。
    "街スタ"が目指すべきは周辺施設と連携してシナジー効果を生み出すことでしょう


    スタジアムの未来はヨーロッパのスタジアム視察を元に作成されているもの。
    その影響で、ヨーロッパと同じようなスタジアムを作るべきなのかという誤解がままあります

    スタジアムの未来はJリーグが理想とするスタジアム像を描いています。
    しかし、スタジアムの理想像は画一的なものではありません。
    各地域ごとに、時代ごとに理想とするスタジアム像というものが存在するはず


    結論をまとめておきましょう

    スタジアムの未来は"スタジアムは、まちづくり"の教本です。
    しかし、スタジアムの未来は全国で画一的に適用できるとは限りません。
    スタジアムの未来を参考にしつつ、各地域ごとの理想のスタジアム像を探すべき

    その際に"まちづくり"の視点を忘れてはならない、ということです



    ④終わりに=「参画と三角」
    全3回にわたって"スタジアムは、街づくり"という標語をテーマに進めてきました。
    言葉の定義から始めたため、かなり抽象論となってしまったことをお詫びします

    今回のテーマにはかなり苦戦しました。
    本来は第4回シンポジウムのレポートでしたが、文量から独立せざるを得ませんでした。
    構想から3ヶ月以上かかってしまいましたが、時間をかけただけあって手応えはありました

    スタジアムを訴える上で"スタジアムは、まちづくり"という視点は非常に重要です。
    しかし、これまでJリーグもサンフレッチェも十分な説明ができているとは言えません。
    乱筆ではありましたが、その道筋をある程度示せたのではないかと思っています

    全3回で述べたかったことは次の5点に集約されます

    • 目指すべきは"スタジアムは、街づくり"ではなく"スタジアムは、まちづくり"
    • "スタジアムは、まちづくり"は事実ではなく、目標・コンセプトである
    • ソフト面の"まちづくり"には不断の努力が欠かせない
    • ハード面の"まちづくり"はスタジアムの未来を参考にするべき
    • ただし、スタジアムの理想像は各地域によって異なるため模索するべし

    なぜ"スタジアムは、まちづくり"が重要なのかについては深く掘り下げていません。
    それはまた機会があれば触れてみたいと思っています


    さて、"スタジアムは、まちづくり"というのは非常に規模が大きな話です。
    お金をかければできるものでもなく、時間をかければできるものでもありません

    1-2 まちづくりの定義と10の原則
    《まちづくりの方法 3ページ 日本建築学会》

    定義:まちづくりとは、地域社会に存在する資源を基礎として、多様な主体が連携・協力して、身近な居住環境を漸進的に改善し、まちの活力と魅力を高め、「生活の質の向上」を実現するための一連の持続的な活動である。

    ここまで強調してきませんでしたが"多様な主体が連携・協力"も重要なポイントです

    川崎の魅力を市民に伝えるために
    《Jリーグニュースプラス vol.10 2014年5月31日閲覧》

    こうした体制を川崎市が敷いたのには、行政とクラブが共通の目的を持っていることが大きい。市役所のシティセールス・広報室の役割は川崎市の魅力を広く市民に知ってもらい、自分たちの住むまちに誇りを持ってもらうことである。フロンターレのベクトルもまったく同じ。市民が川崎のまちを好きになり誇りを持つようになれば、そのまちにあるJクラブのことも好きになってくれるという考え方が根底にある。市とクラブは「もっと川崎のまちを好きになってもらいたい」という同じ理念を持つパートナーなのである。

    川崎の事例にもあるように、行政の協力は"まちづくり"に必要なものです。
    しかし、なんでもかんでも行政頼りでは"まちづくり"は実現しません

    我々、市民・県民がその"まち"を自分たちの"まち"だと自覚すること。
    そして、その"まち"をより良くしようとする意識が絶対に欠かせません

    そしてその範囲はサッカーにとどまるものだけではありません。
    サンフレッチェ広島を、サッカーを、ひいては広島という"まち"の価値を、高めること。
    そのためにどうすればいいか個人個人が主体となって考えないといけません

    自分自身の「まち」
    《まちづくりの発想 50ページ 田村明》

     まちづくりを真剣に考えてゆくと、一見、生活に直接関係なく他人事に見える土地問題、産業立地、都市配置、国土計画、幹線交通、資源利用のあり方なども、実は身近な生活にかかわりのある重要な基礎的問題であることが分かってくる。小さな単位でも、人間の側から具体的に関連を追って考えるとき、地球や国土、社会全体が分かってくるはずである。
     都市の時代は、問題を複雑にし、地球的規模にまで広げたが、その全体を見る糸口が、自分たちの生活している「まち」になる。



    最後に、浦和レッズの経営にも携わられていた藤口光紀氏(現広島経済大学教授)が講演で話されていた内容を紹介しておきます

    スポーツによる地域活性化
    《中国総研研究会 2013年11月20日 中国地方総合研究センター》

     スポーツで"まちづくり"。1つ提案します、キーワード。ちょっと洒落かもしれませんが、「参画と三角」です。これはキーです。要するに参加じゃないんです。参画することに意味があるんです。なんでもそうですけども、みんな人ごとになっちゃうんです。そうじゃなくて、自分もなんでもいいからこれをやりますということを、後援会とかサポーターからもあるんですけど、サポーターなんか自分から計画して色んなことをしています。自らが計画する、それがすごく大事なんですね。これがないと本当のいい"まちづくり"はできません。それと三角。これはやっぱり、クラブ、行政、市民、これがうまくバランスがとれないといけない。サポーターとクラブだけではいけない、自治体とクラブだけではいけない。そこにもう1つ入ってくることがすごく大事です。これはもうサッカーのプレイでも一緒です。2人の関係よりも3人の関係になれば攻撃のバリエーションができます。ディフェンスも厚くなります。


    「参画と三角」

    これをしっかりと胸に刻みつけて参画していきたいと思います。
    ここまでお付き合いいただきありがとうございました 

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    "スタジアムは、街づくり"について本気出して考えてみた(中編)

    ①"スタジアムは、まちづくり"か?
    前回から、"スタジアムは、街づくり"とはいったい何か?というテーマに取り組んでいます。
    特に"街づくり"という部分に焦点を当て、地域社会学の分野を活用しながら考えてきました

    その中で浮かんだ疑問から、"スタジアムは、街づくり"ではなく、”スタジアムは、まちづくり”なのではないか、という仮説が生まれたと言えるでしょう

    しかし、"まちづくり"が具体的に何を意味するのかを説明するのは非常に難儀です。
    まちづくりの実践では次のようなものが例示されています

    machidukuri01
    《まちづくりの実践33ページを元に作成》

    これらを1つ1つ検証すると長くなってしまいますし、何より本題から逸れます

    平仮名の「まちづくり」の十の意味
    《まちづくりの実践 33ページ》

    (2) ハードだけでなくソフトを含めた総合的な「まち」へ
     「まち」とは、モノの面でも多様なものがあるからトータルに考えてゆかなくてはならない。さらにモノやハコをつくるだけでなく、それを決めてゆく過程や方法も考えなければならないし、「まち」をどう生き生きしたものとして使ってゆくかという方法も重要だ。ハードの「街」は、ソフトがあってこそ、初めて有効に使われる。ソフトの面には「まちづかい」という意味もあり、ハードとソフトの両面を含む総合的なものとして「まち」を整えてゆくことである

    そこで、多少強引ではありますが、今回は便宜的にソフト面に関する事例に主眼を当てることで、その可能性に言及したいと思います

    それでは早速見ていくことにしましょう



    ②Jクラブと"まちづくり"の関係
    スタジアムにおけるソフトの中で最も重要となるのはJクラブといって差し支えないでしょう。
    本稿における重要な前提の1つであり、他のソフトに関する議論は様々な可能性が提示されているが故に決まったもの(固定的)ではないからです

    では、Jクラブと"まちづくり"はどのような関係にあるのでしょうか。
    Jリーグニュースプラス第14号で清水や福岡の事例が取り上げられています

    「する」「みる」「語る」 の融合へ
    《Jリーグニュースプラス vol.14 2014年5月31日閲覧》

     エスパルスは県内4カ所に展開するフットサルコート「エスパルスドリームフィールド」や、チケット、グッズを販売する「エスパルスドリームハウス」など、クラブの情報発信拠点を多く設けている。これは、ただ単にフットサル場やオフィシャルショップを整備することではなく、エスパルスを中心としてサッカーを「する」「みる」「語る」場を地域の人々に提供したいという想いがある。「エスパルスを通じ、地域の人々がコミュニケーションを深める場をつくりたかった。情報発信や販売目的だけではなく、そこに人々が集い、一緒に体を動かすことで、地域に新しいコミュニティが生まれる土壌を育てたい」と早川社長は語る。すべての施設に「エスパルスドリーム」の名前が付されているように、“夢のある幸せなまちづくり”の中心になることを、クラブは願っているのである。
    福岡のまちが持つ財産
    《Jリーグニュースプラス vol.14 2014年5月31日閲覧》

     「“まちづくり”や“人づくり”は、行政の普遍的な課題。一方スポーツは、人を育て、地域を育て、社会を育てる力があり、その課題を解決できるソフトになれる。サッカーに限る必要はなく、あらゆるスポーツを通じた“人づくり”をアビスパが支えることで、福岡のまちを元気にできるはずだ」と下田専務は考えた。

    清水の場合、新たなコミュニティ形成のための場を作っています。
    福岡は"まちづくり"の中でも"人づくり"に着目し、ホームタウン事業を数多く実施。
    前者はマチ社会とその仕組みづくり、後者は「まちづくり」を担うヒトづくり、にリンクします

    どちらの事例も"スタジアムは、まちづくり"には該当しませんが、Jクラブが能動的に取り組むことで"まちづくり"に貢献できることを示しています


    川崎フロンターレはストレートに"クラブづくりとまちづくり"というコンセプトを掲げています

    (註記)
    場合によっては"街づくり"と表記していることもあるが、深い意味はなさそう


    《Jリーグニュースプラス vol.10 2014年5月31日閲覧》 
     
     オリンピックで日本代表を応援するときに、「なぜ日本を応援するの?」と聞く人はいない。理由は自分も日本人だからだ。甲子園で、地元代表の高校を地域を挙げて応援することも、自分たちのまちを背負って戦う球児たちに身近なものを感じるからだろう。「このまちでフロンターレもそういう存在にしていきたい。川崎に住んでいるのだから、そのまちに根づくクラブを応援することが当たり前と思われるように。いつか、『川崎=フロンターレ』とまで感じてもらえるように。そのためにも、まずは自分たちが住む川崎というまちへの愛着を、もっとみんなに感じてもらうことが大切」と、天野課長は話す。
     「チケットを買ってください」「スポンサーになってください」「クラブを応援してください」と、一方的にお願いをしても、地域からの信頼はすぐには得られない。こちらから頼むばかりではなく、地域の一員としてクラブがホームタウンに貢献できることは何か。彼らと共にまちを盛り上げていけることは何か。そのことを常に考えた活動を行っていくことで、地域から本当の信頼を得ることができる。フロンターレは強化担当も、広報担当も、運営担当も、後援会担当も、皆がホームタウンを意識する気持ちが強い。かつて天野課長がいた「ホームタウン推進室」といった専任部署は今や存在しない。スタッフ全員がホームタウン担当者であり、武田社長もその一人だ。遠回りのようにも見えるが、日々の地道な地域密着活動こそ、スタジアムを満員にするための一番の近道なのかもしれない。だからこそ、クラブづくりとは「まちづくり」なのである。

    Jリーグの代名詞とも言われる"地域密着"の最先端をいく川崎ならではの事例ですね

    川崎だけでなく、清水や福岡の事例でもキーワードとなっていたのが"誇り"という言葉。
    「地域への愛着」や「地域のシンボル」とも言い替えることが出来ます

    これを"シビック・プライド(civic pride)"と呼びます

    シビック・プライドとは、まちに対する愛着や誇りを意味します。
    "おらがまち"というキャッチフレーズもシビック・プライドの典型例ですね


    シビック・プライドは"まちづくり"において非常に重要な位置を占めています。
    自分たちの"まち"に誇りを持つことで、"まち"に対して主体的に関わる意識が生まれます。
    それが主にソフト面の"まちづくり"においては欠かせません

    これは、個性的で主体性ある「まち」へだけでなく、"まちづくり"全体にも関係する要素です


    ④シビック・プライド
    広島にも、この"シビック・プライド"の事例は存在しています。
    その代表例とも言えるのが横川駅及び横川駅商店街ではないでしょうか

    002
    《中国新聞 2007年3月11日2面》

    これは2007年の記事。それから約7年の月日が経ちました

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    《2014年4月16日 横川本通りにて撮影》

    たまたま立ち寄ったときに撮影しましたが、これはホーム試合とは関係ない日。
    今シーズンのスローガン「全力」の幟があちこちに立ち並んでいます

    シャトルバスも定着し、試合日に改札口近くのむさしが大繁盛しているのも当たり前。
    サンフレッチェの"まち"と呼ぶに相応しい光景ですね


    もう1つの事例としては沼田町のバイオレットタウンNUMATA推進事業があげられるでしょう

    バイオレットタウン委員会
    《沼田町商工会青年部 2014年5月31日閲覧》

    事業目的 内容
     平成23年度から新事業(バイオレットタウンNUMATAプロジェクト)がスタートしました。それに伴いバイオレットタウンNUMATAプロジェクト委員会も同時に立ち上がりました。サンフレッチェ広島の幟旗の設置及び周辺清掃、沼田町盆踊り大会、いきいき沼田商工フェスタ、ふるさと祭り等でのバイオレットタウンサポートショップの紹介、選手による盛り上げ等を行っております。主に沼田町の商工業を活性化するためにいろいろな企画を考えてやっております。これからも、ますます面白い企画を考えて実行していきたいと考えております。
    第4章中国地域各県の取り組み 第4節広島県
    《中国地域経済白書2013 97ページ 中国地方総合研究センター》

    ②沼田町商工会
     広島市安佐南区の沼田町商工会では、地元にホームスタジアムがあるJ1のサンフレッチェ広島を応援し、地域の活性化を目指す「バイオレットタウンNUMATA推進事業」を展開している。
     活動としては、商工会青年部と地元の広島修道大学学生が連携し、商工会だよりへ掲載する「バイオレットタウン」情報の収集、ホームゲーム開催に合わせた応援幟の設置などを行っている。今後は、選手によるサッカー教室の開催や、サンフレッチェ広島の試合観戦ツアーなどが計画されている。

    横川駅は多少距離がありますが、スタジアムへの交通の要所として機能していることを考えると、どちらも"スタジアムは、まちづくり"の事例と言っていいのではないでしょうか


    これは地元主体だけでなく、サンフレッチェも率先して推し進めています

    1)クラブについて(小谷野薫社長)
    《第11回サポーターズカンファレンス》

    【プレゼンスの拡大について】
     また、話は変わりますが、経営上のさらなる課題として付け加えるならば、これは明確に数字に表れるものではありませんが、サンフレッチェの広島におけるさらなるプレゼンスの拡大が挙げられます。昨年はおかげさまでクラブ創設20周年で初優勝しましたが、広島の街にまだまだ紫が少ない。街に「もっと紫を」ということで、試合の告知やサンフレッチェを応援する気運をさらにどうやって盛り上げていくのか、クラブとして知恵を出さなければいけないところだと考えています。またサポーターの皆様からもどんどん意見を伺っていきたいところだとも思います。

    「広島の街 に、もっと紫を」というキャッチコピーがまさにそれ。
    もちろんサンフレッチェそのものの周知も狙いとしてはあるでしょうが、幟の設置、ポスターの掲出、ポケット日程表の設置をするショップの人々にも働きかけているはずです

    こうした地道な活動も"まちづくり"の1つと言って差し支えないでしょう



    ⑤幕間=作って終わりではないということ
    今回、"スタジアムは、まちづくり"ではないか、というテーマで進めてきました

    その中で、Jクラブと"まちづくり"の関係性はある程度解説してきたつもりです。
    ヒトづくり、コミュニティ形成、シビックプライドなど様々な形が出てきました。
    一方、スタジアムならではの"まちづくり"にはあまり触れることが出来ていません

    "スタジアムは、まちづくり"は実現可能であると結論づけても良いでしょう。
    ただし、それはスタジアムでなくても出来るのではないかという反論も可能です


    スタジアムで出来る"まちづくり"とは何か、と具体的に考えるとキリがありません。
    それは冒頭でも述べたとおりで、"まちづくり"とは非常に広範囲な概念だからです

    そのハードに適した"まちづくり"があるはずですし、そのソフトに適した"まちづくり"があるはずですし、その"まち"に適した"まちづくり"があるはずです

    では、"スタジアムは、まちづくり"であると主張するのは困難なのでしょうか?

    私は、そんなことはないと考えています。
    「"スタジアムは、まちづくり"は実現可能である」ということは、"スタジアムは、まちづくり"は実現可能だが、実現するために努力を重ねなければ実現できない可能性もあると言い替えられることが出来るはずです

    1-2 まちづくりの定義と10の原則
    《まちづくりの方法 3ページ 日本建築学会》
     
    定義:まちづくりとは、地域社会に存在する資源を基礎として、多様な主体が連携・協力して、身近な居住環境を漸進的に改善し、まちの活力と魅力を高め、「生活の質の向上」を実現するための一連の持続的な活動である。

    "まちづくり"が持続的な活動である理由の一端はここにあるのだと思います

    スタジアムを作れば常に"スタジアムは、まちづくり"が達成できるわけではない。
    だからこそ、"スタジアム作りは、まちづくり""スタジアム建設は、まちづくり"ではなく、あえて"スタジアムは、まちづくり(街づくり)"と表現しているのかもしれません


    "スタジアムは、まちづくり"とは事実を示しているのではなく、目標だと考るべきもの。
    すなわち、スタジアムは、作って終わりではないということなのです



    さて、次回はここまでの話を踏まえ、どのように"まちづくり"に関わればいいか。
    ハード面からも理想のスタジアム像とは何かという点について考えていきたいと思います。
    ラスト1回よろしくお付き合いくだされば幸いです

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    [memo]サッカースタジアム検討に係る調査業務の企画提案及び受託事業者について

    先日、サッカースタジアム検討協議会において委託する、サッカースタジアム検討に係る調査業務の企画提案及び受託事業者が決定しました

    「サッカースタジアム検討に係る調査業務」の受託業者の決定について
    《広島県サッカー協会 2014年6月3日閲覧》

    平成26年5月22日(木)に開催した「サッカースタジアム検討に係る調査業務プロポーザル審査委員会」において、下記の団体を本業務の受託候補者として決定し、6月2日、契約を締結しました。

    日本総研・復建調査設計グループ

    代表会社:株式会社日本総合研究所 大阪本社
    構成会社:復建調査設計株式会社 

    以前、サッカースタジアム検討協議会の構成メンバーについてまとめました。
    今回も簡単に日本総研・復建調査設計グループについてまとめておきたいと思います

    "スタジアムは、街づくり"について本気出して考えてみた(中編)は来週更新します


    ①サッカースタジアム検討に係る調査業務の公募型プロポーザル
    まず、公募型プロポーザルがなんだったのかについて簡単に説明しておきます。
    これはサッカースタジアム検討協議会において、より専門的な見地から協議会に情報を提供するため専門機関に一部業務を委託したものです

    業務内容については長いですが、次の通り

    サッカースタジアム検討に係る調査業務仕様書
    《広島県サッカー協会 2014年6月3日閲覧》

    2 業務内容
    (1)業務を実施するに当たっての前提条件

    ア 各候補地の対象エリアは別図のとおり。ただし、対象エリアの隣接地の活用については、適宜、協議会に確認する。

    イ スタジアムの設備等は、日本サッカー協会の「スタジアム標準」に準拠し、Jリー グ「スタジアムの未来」を参考とする。

    ウ 各候補地スタジアムは「スタジアム標準」にあるクラス1の大会が誘致可能な規模 である3万人程度をベースとする。(絞り込みの段階で、別の規模とする場合もある。)

    エ 広島都市圏のまちづくりや圏域の発展に資する提案とする。

    (2)各候補地に係るスタジアムの基本コンセプトの提案

    (3)候補地の絞り込み手順等の提案
     (4)以降の業務を進める前段で、現在5か所の候補地を、立地特性や法的規制、アクセス条件、まちづくりの視点等の基礎調査を踏まえ、さらに絞り込むための手順・方法(調査項目等)を提案

    (4)候補地に係る来場者需要予測や立地特性等の分析に基づく適正なスタジアム規模の検 討及び提案
     現在のエディオンスタジアムにおける顧客ベースと付加する機能の効果による新規 顧客に対するマーケティング分析による適正規模の提案及び入場者数予測(将来に おける顧客層の増減、周辺施設との競合・相乗効果に伴う需給環境等の変化の可能性も考慮)

    (5)候補地の立地特性や交通インフラ等を考慮した交通需要予測(アクセス、輸送量、渋滞問題、特に3万人程度来場時の利用交通手段の考え方)及び必要な周辺インフラ整備に関する提案(駐車場利用・設置可能台数の算出・評価を含む)

    (6)候補地に係る県・市の地域ビジョンや商圏需要予測に基づくサッカースタジアムに付加すべき機能の検討及び提案
     多機能化の需要の潜在性(一般利用ニーズの潜在性、法人需要の潜在性)、競合・共 存施設の分析に基づく提案

    (7)上記(4)から(6)に基づき、絞り込まれた候補地に係る諸前提に関する検討・提案 (候補地のメリット・デメリット、デメリットの解決方法、解決に要する時間とコス ト等を含む)
     建設コストの試算、制度面の考慮や過去の事例等を踏まえた建設資金の調達方法の 検討、建設・運営主体のあり方の検討、キャッシュフローの予測、収支(サッカー競技及び多機能化による収入と支出)の予想分析、経済波及効果の分析、周辺インフラ整備コストの概算等を行い、スタジアム整備の考慮点について提案(鳥瞰図、平面図を含む)

    (8)協議会での議論に資するための資料及び協議会から県・市・経済界へ提案する「サッ カースタジアムのあるべき姿」を整理した資料の作成並びに業務の実施手順・スケジ ュールの提案

    上記(1)~(8)を調査する業者がこのたび決定したというわけです

    日本総研・復建調査設計グループというのは、株式会社日本総合研究所復建調査設計株式会社で構成されていることから、この2者について簡単に知っておきましょう


    ②株式会社日本総合研究所
    株式会社日本総合研究所(以降、「日本総研」)は三井住友FGのシンクタンク。
    本社は東京に構えていますが、今回関わってくるのは大阪本社のようですね。
    広島でこれまで手がけた業務は見つかりませんでした

    「日本総研」の特徴は何と言ってもスタジアム業務でしょう

    北九州市/新球技場PFI/11月中に実施方針案公表
    《建設通信新聞 2014年6月3日閲覧》

     北九州市は、JR小倉駅北口の北九州国際会議場隣接地(小倉北区浅野3丁目)にPFIで計画している(仮称)新球技場整備事業の実施方針案を11月中に公表する。日本総合研究所・電通九州・アール・アイ・エーグループで策定を進めており、実施方針案と要求水準書案を公表し説明会などを行った後、12月に正式な実施方針の公表と合わせて事業者選定に向けた総合評価一般競争入札を公告する意向だ。
     総合評価一般競争入札の公告後、本年度内に参加申請などを受け付け、14年度の第1四半期で提案審査を行い、夏ごろをめどに事業者を選定し仮契約を結ぶ見通し。同年度の9月議会に諮り承認を得て正式契約し、設計・建設に着手する。
     新球技場はサッカーJリーグ2部(J2)のギラヴァンツ北九州のホームスタジアムとして計画。J1の基準を満たす収容人員1万5000人規模で、ラグビートップリーグの公式戦なども開催できる施設とする。将来的な2万人規模への拡張も視野に入れており、その場合は海上部にバックスタンドを拡張するとしている。事業方式はBTOで、Jリーグ開幕に合わせ17年3月にオープンし、31年度末まで維持管理・運営を行う。
     市では、本年度の9月補正予算で31年度までの限度額95億6538万円(うち本体設計・建設費78億1600万円、維持管理・運営費15億円)の債務負担行為を設定している。 

    このように、北九州市の新球技場整備に深く関わっている模様

    また、スタジアム建設募金団体(ガンバ大阪)も関わっている、万博スマートコミュニティモデル構築事業にも参画しているようです


    その他では、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催に伴い整備する新規恒設施設の事業性等検討業務委託についても受託しています

    五輪開催準備が加速/東京都が調査業務2件公告
    《建設通信新聞 2014年6月3日閲覧》

    ◆コンセプト具体化/新規恒設8会場
     一方、臨海部に新規整備を計画する恒久施設は、▽夢の島ユースプラザ・アリーナAおよびB▽オリンピックアクアティクスセンター▽有明アリーナ▽若洲オリンピックマリーナ▽海の森水上競技場(ボート競技場)▽大井ホッケー競技場▽葛西臨海公園(オリンピックカヌースラローム競技場)▽有明テニスの森--の8会場。
     委託業務では、8会場を対象に大会開催後もスポーツ施設として利活用され得る施設コンセプトを定めていく。合わせて、事業スキームの検討や採算性に関する分析も行う。
     関連する事業者などへのニーズ・マーケティング調査により、施設コンセプトの方向性を探る一方、運営面を含めた事業スキームを検討。各施設の事業採算性を分析、評価する。また、各施設が地域の中でどう位置付けられ、どのような役割を果たすべきか、地域特性と融合したエリアコンセプトの検討も進める。

    スタジアム単体だけではなく、周辺のデザインもやっている様子。
    事業スキームや採算性の分析などは日本総研が担当することになりそうです


    (おまけ)少し古いコラムですが参考までにどうぞ

    【参考①】
    ポスト2002のサッカースタジアム整備・運営
    《日本総合研究所 2014年6月3日閲覧》

    【参考②】
    巨大スタジアムは負の遺産なのか ~日本版PPPの推進モデル施設に~
    《日本総合研究所 2014年6月3日閲覧》

    【参考③】
    「臨場感」が生み出す「親近感」(カレッジフットボール)

     《日本総合研究所 2014年6月3日閲覧》


    ③復建調査設計株式会社
    復建調査設計株式会社(以降、「復建」)とは、社団法人復興建設技術協会中国四国支部が1960年に株式会社化して誕生した企業

    【参考】
    復建調査設計株式会社 小田 秀樹
    《広島の社長.tv 2014年6月3日閲覧》

    現代表の小田秀樹氏は広島県福山市出身。
    本社も広島市に存在することから広島との縁は深いようです

    「復建」の手がけた業務の1つに2005年の現球場跡地利用に関する提案があります。
    当時の提案は"ヒロシマ平和の杜の創造"というもの

    proposal001
    広島市民球場跡地利用検討会議(第1回) 資料4-2 提案21より》

    proposal002
    現球場(広島市民球場)跡地利用の方向性について(報告)より》

    広島市民球場跡地利用検討会議は見事パス。
    しかし、広島市民球場跡地事業計画案及び事業予定者の選考では条件面が整っていないため、最終選考から外れる結果となっています

    その他にも、基町住宅地区活性化のための調査・検討等業務の公開プロポーザル広島南道路太田川放水路橋りょうデザイン提案競技選考等にも積極的に応募しているようです


    業務内容に目をむけると非常に多岐に渡っていることが分かります。
    その中でも、交通計画その分析に長けているというのは特徴的です

    おそらく経済波及効果や交通計画の調査を担当するのではないでしょうか


    もちろん業務内容で分担するとは限りませんが。
    もしかしたら参考になるかもしれません 

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    "スタジアムは、街づくり"について本気出して考えてみた(前編)

    ①YUME★STA PROJECT
    今回から3回ほど連続してスタジアムに関するテーマで投稿していきます。
    肝心のテーマとは、第4回夢スタシンポジウムでも繰り返し強調されていたワード

    "スタジアムは、街づくり"

    この標語はYUME★STA PROJECTの根幹でもあります

    YUME★STA PROJECT
    《サンフレッチェ広島公式 2014年5月31日閲覧》

     『YUME★STA PROJECT』とは、「スタジアムは、街づくり」のコンセプトをお伝えする方を「エバンジェリスト=スタジアム伝道師」に認定させていただき、啓発キットを使って、1人でも多くの方に理解・賛同の輪を広げることを目的に販売しています

    サッカースタジアム建設を実現するためにサポーターは何をするべきか。
    その1つが、このエバンジェリスト活動であるとクラブは繰り返しています

    しかしながら、そもそもこのコンセプトを理解しているサポーターはどれだけいるでしょうか。
    第4回シンポジウムで小谷野社長が指摘していたことが1つの証左でしょう


    自分自身でもよく分かっていない言葉で他人を説得するというのは至難の業。
    語感の良さに頼るのではなく、きちんと理解しなくては賛同を得ることも叶いません

    matidukuri-01
    サンフレッチェ広島より》

    では、"スタジアムは、街づくり"とはいったい何なのか
    本稿ではその意味を考えていきたいと思います。よろしければお付き合いください



    ②"スタジアムは、街づくり"とは何か
    困ったことに"スタジアムは、街づくり"という言葉は、色んなところで使用されている割にはがっちり定義された表現ではないようです

    例えば、サッカースタジアム検討協議会で採用されている日本政策投資銀行の資料、"スポーツを核とした街づくりを担う「スマート・ベニュー」"でも、「街づくりの中核」や「街づくりに寄与」という表現が使用されていますが、肝心の定義は不在

    YouTubeで公開されている動画や、エディオンスタジアムで配布しているパンフレットでも"スタジアムは、街づくり"という文言が使われていますが、いまいちピンと来ません




    matidukuri-02
    《エディオンスタジアムで配布されていたパンフレット》


    1つのヒントになるのは、第2回サッカースタジアム検討協議会でも使用されたという、サンフレッチェ広島の"第3回夢スタジアムシンポジウム発表資料"でしょうか

    matidukuri-03
    《サンフレッチェ広島 第3回夢スタジアムシンポジウム発表資料より》

    地域活性化、経済効果、アウェイツーリズム、平和発信、防災拠点などなど。
    スタジアム建設による直接的な影響は防災拠点くらいで、他は"サンフレッチェ広島を核とするスタジアム"だからこそ生まれる効果…すなわち間接的な効果とでも言いましょうか

    しかし、これらはあくまでもサンフレッチェ広島の訴えている個別的な効果。
    この主張だけを鵜呑みにするわけにはいきません



    ③"街づくり"と"まちづくり"
    ならば、まずは"スタジアムは、街づくり"という言葉を理解することから始めましょう

    "スタジアムは、街づくり"を考えるにあたって問題となるのは"街づくり"という言葉。
    この言葉が分からなければ"スタジアムは、街づくり"の意義を理解することも出来ません

    "街づくり"とは地域社会学における用語の1つです。
    ひとまずスタジアムから離れて、地域社会学における"街づくり"の意義を見てみましょう

    第4章 2.平仮名の「まちづくり」
    《まちづくりと景観 105ページ 田村明》

     かつては「街づくり」「町作り」などの用語も併用されていたが、現在では平仮名の「まちづくり」が主流になった。平仮名の「まち」という言葉は、ハードだけでなくソフトも含む柔らかさがある市民的な用語だからだ。これなら、とくに専門用語を知らない一般市民でも、自分自身が「まち」にかかわりをもっていると実感しやすい。

    初っ端から前振りを全否定する形になってしまいますが、実は、昨今の地域社会学において"街づくり"という言葉は余り使われなくなっているようです

    "街づくり"や"町作り"ではなく、"まちづくり"。
    これらは地域社会学上、異なる概念に位置付けられています

    1-1まちづくりとは何か
    《まちづくりの方法 2ページ 日本建築学会》

     漢字で表記される「町づくり」、「街づくり」は、その、源を引きずっている言葉でもある。「町づくり」は「村づくり」と同列に用いられる用語で、町村という、自治の単位で総合的な行政、町村の活性化などを表現する言葉で、内発的な開発による「町村の活性化」という、目的意識が強い。これに対して「街づくり」は、街路、商店街など物的な意味での市街地の環境整備といったニュアンスが強い。これに対してひらがなの「まちづくり」は、より広い概念で用いられる用語である。

    このように"街づくり"は狭義な意味、"まちづくり"は広義な意味となるようです。
    ハード整備に主眼が置かれる"街づくり"に対して"まちづくり"とは何を意味するのか。
    まちづくりの方法における定義は次の通り

    1-2 まちづくりの定義と10の原則
    《まちづくりの方法 3ページ 日本建築学会》
     
    定義:まちづくりとは、地域社会に存在する資源を基礎として、多様な主体が連携・協力して、身近な居住環境を漸進的に改善し、まちの活力と魅力を高め、「生活の質の向上」を実現するための一連の持続的な活動である。

    これだけだとよく分からないので、もう少し噛み砕いた表現がこちら。
    1987年刊行の名著、まちづくりの発想から

    第1章 3.まちづくりの展開
    《まちづくりの発想 23ページ 田村明》

     しかし、今日いう「まちづくり」はそうではない。そこに住んでいる人たちが自分自身の問題としてかかわりをもち、「つくって」ゆくべきだという積極的な姿勢が基本である。他人にまかせておいたのでは、好ましい「まち」はできない。住民は、まちの"借家人"ではなく"オーナー"であり、まちをつくる責任がある、という自覚の表現である。
     まちづくりの「つくる」とは、土木・建築的な物的な整備だけをいうのではない。まちを動かす仕組みや財政、自治組織、市民意識などのソフト面も含んでいる。そのため、ハードな物づくりだけを意識させやすい「造る」とか「作る」ではなく、「つくる」という平仮名が当てられる。ハード以外のココロや、シクミづくりの重要性が認識されてきた結果である。さらに積極的には、未来に向けて新しく「創る」という創造の意味もこめられている

    すなわち、"まちづくり"とはハード整備だけを示すのではなく、ソフト面も含むもの。
    その他の違いとしては、"まちづくり"とは官主導ではなくし民主導という意識を喚起する用語であることや、持続可能性・地域性などにも言及した概念であることでしょうか

    そういった思想を持たないハード整備は"街づくり"に該当しても、"まちづくり"とは言えません


    たしかに、スタジアムをつくるということはハード整備そのもの。
    その意味で"スタジアムは、街づくり"という標語は間違っていません

    しかし、そんな安直な結論でいいのでしょうか?



    ④幕間=スタジアムは、"街づくり"なのか"まちづくり"なのか
    ここまでで押さえておくべきポイントは次の3つでしょうか

    1つ目は、"スタジアムは、街づくり"は厳密に定義されているものではないということ。
    サンフレッチェの配付している資料では情報不足です

    2つ目は、地域社会学において、"街づくり"と"まちづくり"は別物であるということ。
    "街づくり"は、"まちづくり"という概念の部分集合に近い存在のようです

    3つ目は、"スタジアムは、街づくり"という表現ではハード整備に限定されるということ。
    当然の話であるが故に、わざわざ強調するべきものか疑問を覚えます


    さて、ここまでの話を踏まえてサンフレッチェの訴える"スタジアムは、街づくり"を考えてみると、"街づくり"だけでなく、"まちづくり"の視点が含まれているように感じられます

    "スタジアムは、街づくり"ではなく、"スタジアムは、まちづくり"なのか?

    次回はこのテーマで探っていきたいと思います


    awayisumawayisum  at 09:00コメント(0)トラックバック(0) この記事をクリップ! 

    なぜ"ACLは罰ゲーム"と揶揄されるのか(2014ACL小括・下)

    前回の続き



    ④移動距離による影響
    ACLという大会には中国、韓国、オーストラリアといった他国のクラブも出場します。
    すなわちアウェイゲームでは国内リーグとは比較にならないほどの移動距離

    そこで、ゼロックススーパーカップからJ1第14節までの移動距離を算出してみました

    2014ACL-002
    《Googleマップを元に作成》

    上記のような結果となりました。
    オーストラリア移動などがあるACL出場クラブの負担は文字通り桁違い。
    特にサンフレッチェはオーストラリア遠征が二度あったことが大きかったようです

    余談ですが、リーグ戦だけで見るとサガン鳥栖の負担も莫大ですね。
    サンフレッチェもリーグ戦では関東圏での試合がゼロにもかかわらず2番目に多い


    また、上記計算には交通手段が含まれていないことも付け足しておきます。
    例えば広島は空港機能が弱いため、関西空港や福岡空港への移動も必要なのです


    Jリーグは2013年からACLサポートプロジェクトというものを再開しました。
    このサポートの中には移動に関する金銭的補償も含まれています

    2012 年度 第10回理事会 追認事項
    《日本サッカー協会 2014年5月18日閲覧》

    ACLサポートプロジェクト 再立ち上げの件
     2007 年よりJFAとJリ―グがACLに参加するJクラブをサポートする目的で「ACL サポートプロジェクト」を立ち上げ、2007 年は浦和レッズ、2008 年はガンバ大阪が優勝した。 その後同プロジェクトは一定の役割を果たしたということで、2010 年をもって発展的に解消 した。しかし、2009 年以降、JクラブはACLで上位に進出出来ていない状況である。 JFA・Jリーグ・Jクラブが一体となってACLを盛り上げ、優勝を目指してサポート をするため、J リーグと協働でACLサポートプロジェクト 再度立ち上げることとした。

    一方で、移動距離による影響は金銭面のみではありません。
    日程面での負担にも関わりますが移動時間が長ければ調整時間も減ります。
    また、長距離移動・過密日程に対応できない選手もいるという話

    第11回サポーターズカンファレンス議事録
    《サンフレッチェ広島 2013年7月20日》

    2)チーム強化と選手育成について
     繰り返しになりますが、ACLを「捨てた」とか「諦めた」とかいう思いはわれわれにも一切なく、選手、監督にももちろんそんな思いはありません。ただメンバー編成上、週に2試合というペースで試合は進んでいきます。そんな中で連戦をすることで力を発揮できる選手とそうではない選手、しかも長距離の移動が入った時にどうかということを考えると、やはりいつも同じメンバーでは戦えないというのがわれわれの中での結論でした。

    サポートプロジェクト自体は良い取り組みですが、補いきれない部分もあるようです


    ⑤経営サイドの事情
    最後にチーム運営とクラブ経営のジレンマについても挙げておきましょう。
    ご存じの通り、現在Jリーグはクラブライセンス制度というものを実施しています。
    経営的な話に限れば、3年連続の赤字と債務超過は認められません

    ここで問題となってくるのが、ACLは投資に見合う大会であるかという点です

    ACLという大会は、賞金の面では決して恵まれた大会ではありません

    ACL Manual 2014
    《The Asian Football Confederation 2014年5月18日閲覧》

    1.2.2 Prize Money, Performance Bonus, and Participation Fees 
    Champion: US$ 1,500,000 
    Runner up: US$ 750,000 
    Clubs taking part in Semi Finals: US$ 120,000 
    Clubs taking part in Quarter Finals: US$ 80,000 
    Clubs taking part in Round of 16: US$ 50,000 
    Per each Group Match win: US$ 40,000 
    Per each Group Match draw: US$ 20,000
     
    1.2.3 Travel Subsidies 
    Visiting Clubs taking part in Semi Finals and Finals: US$ 60,000 
    Visiting Clubs taking part in Quarter Finals: US$ 50,000 
    Visiting Clubs taking part in Round of 16: US$ 40,000 
    Visiting Clubs taking part in the Group Stage: US$ 30,000 
    Visiting Clubs taking part in the Play-offs: US$ 20,000 

    2014ACL-005
    Jリーグ公式HPJFA公式HPから作成》

    1USドル=100円で換算すると、優勝賞金はそれなり(CWC出場権もあるため)。
    しかし、優勝以外の賞金は決して高額とは言えません

    ちなみに、ラウンド16で敗退した広島・川崎・C大阪が獲得した500万円というのはJ2リーグ3位ないしJ3リーグ優勝賞金と同額ということになります(遠征補助金や勝利賞金は除く)


    また、ACLという大会は露出が少なく基本的に平日開催であるため閑古鳥が鳴いています

    2014ACL-001
    Jリーグ Data Site、各クラブHP及びスタジアムは超満員!を元に作成》

    このように、リーグ戦の平日開催と比較してACLの方が多かったのは5件。
    そのうち、2007年と2008年の浦和は駒場スタジアムで試合を開催したことが原因です

    当然、休日を含んだリーグ戦と比較すると多くのクラブが集客で苦しんでいます


    つまり、Jクラブの収益3本柱のうち、賞金と入場料収入が望めないということ。
    したがって、スポンサー収入(とグッズ収入)に頼らざるを得ないのが現状です

    13年度、過去最高売上高 株主総会で報告
    《中国新聞 2014年4月25日》

     J1広島は24日、広島市中区のホテルで株主総会を開き、売上高が過去最高の31億9700万円、当期利益が1億3千万円となった2013年度(13年2月~14年1月)の決算を報告した。ACLの決勝トーナメント進出に伴い、遠征費の増加や、大型連休中の開催だった5月6日の横浜M戦が平日の7月15日に変更されるなど、3千万円の利益の減少が見込まれると試算。小谷野薫社長は「新規スポンサーの開拓や新たなグッズ展開など収益拡大に一層取り組まないといけない」と強調した。

    4月の株主総会でサンフレッチェ広島はACL出場に伴う3千万円の利益減少を試算。
    特に大きかったのはラウンド16進出に伴うGWホーム主催試合の延期でしょう。
    入場者数の差もですが、祝日開催が平日開催×2に変更となったことも大きな点です


    出場するためには遠征などでコストが増える。
    出場しても賞金・入場料収入は期待できない

    最低限の戦力で挑んでもらう方がクラブにとって良いというジレンマが発生し得ます

    さらに、クラブライセンス制度や、Jリーグの降格制度などがちらついていることでしょう。
    経営サイドからすれば、この状況で投資をする勇気を持てるでしょうか



    ⑥上記を踏まえた提言
    2回にわたって"ACLは罰ゲーム"と言われる要因を列挙してみました。
    この他にもラフプレーによる負傷の可能性、判定に対する不満、なども耳にします。
    本稿ではそういった外部の事情などは外し、あくまでも国内限定の問題点を挙げてきました

    戦力補強やACLで勝てるサッカーを志向するべきという指摘もあるでしょう。
    しかし、それ以前に"勝った方が得をする"とまではいかなくても、"勝ってもそこまで損はしない"程度まで環境を整えることなしにACLで勝ち上がることは難しいと考えています

    2014ACL-006
    Jクラブ個別経営情報開示資料を元に作成》

    以前はその負のインセンティブを跳ね返すだけの経営体力がありました。
    クラブライセンス制度も含めて、当時の状況から大きく変わっているのが現実です


    ならばできることから1つずつ改善していくしかありません。
    簡単ではありますが、ここまでの流れに沿っていくつか改善策を考えてみました。
    実現可能性までは考慮してませんし、短期での解決策もあれば長期での解決策もあります


    まず、日程面についてはナビスコカップの配置を調整してはどうでしょうか。
    降格制度があり、実力が拮抗している以上、リーグ戦での不公平感は減らすべきです。
    リーグ戦の品質を落としかねませんが、ACLとトレードオフだと考えます

    また、GW期間中の過密日程解消は再検討して欲しいところです。
    特に4月29日(昭和の日)の試合開催を移動できると日程的にものすごく楽になるはず。
    7月後半~8月のミッドウィークに移動することが出来れば経営的な打撃も小さいでしょう。
    ただし、ここにはACLの試合日が入る可能性もあるので、慎重な検討が必要です

    一方で、GW期間中、ACL出場チームのホーム開催を確保しておきたい。
    4月26日から5月6日までにJリーグは4試合(うちACLで1試合延期)ありました。
    延期日にはACL出場クラブ同士の対戦を設けるため、どうしてもホーム開催が偏ります。
    そこで、5月3日はACL出場クラブのホーム開催を優先的に配置できないでしょうか。
    これで興行的にもフォローできるはずです

    ゼロックススーパーカップの日程に関しても改善の余地があります。
    今年、サンフレッチェはゼロックスから中2日で初戦を戦わざるを得ませんでした。
    しかも会場は国立競技場、ホーム側でしたが広島からは約700km離れた土地。
    集客上の懸念はありますが、ここが金曜開催にできれば初戦を少しは楽に戦えたはずです

    レギュレーションでは、ACL出場権をナビスコカップ王者に移せないでしょうか。
    ナビスコカップ王者にはスルガ銀行チャンピオンシップの出場権が与えられます。
    しかし、こちらは例年8月上旬に開催されている大会。
    この出場権を交換することができればで日程的な負担は少しでも改善されます

    移動距離に関しては抜本的な改善案はありません。
    その負担を小さくするため以前はチャーター機を借りるなんて話もありました

    名古屋、チャーター機費用は協会、Jリーグ、クラブで分割
    《サポティスタ 2014年5月18日閲覧》

    ACL準決勝に進出し、サウジアラビアのアルイテハドと対戦することが決まった名古屋は、21日のアウェーでの第1戦に向けてチャーター機で移動をするという。チャーター機の使用費用は約7000万円。費用は日本協会とJリーグ、クラブの3者での分割負担となるそうだ。チャーター機にはサポーターも同乗する予定。名古屋にとっては、これが初のチャーター機での移動になるという。

    移動距離の負担を軽減する1つの方法は柔軟な日程変更でしょう。
    しかし、ただでさえ過密日程の中で試合日を動かすことで対応するのには限度があります。
    ターンオーバーを積極的に行うことで対応するのが現実的でしょうか

    経営面では何よりもまずACLという大会の価値を高める必要があります。
    平日開催という理由だけでなく興行的に旨みが少ない大会であることは前述したとおり。
    JクラブとJリーグが協力して大会を盛り上げなくては現状は変わらないでしょう

    最後に、やはりスタジアムが重要となります。
    川崎フロンターレは3月28日と4月11日に金曜開催を実行に移しました。
    金曜、すなわち平日開催による観客数減少は小さくないリスクです

    しかし、この日程変更をしなければACLを中2日で挑むことになっていました。
    金曜開催を行うためには平日であっても一定以上の集客が望める環境作りが必要です。
    試合日の周知徹底はもちろん、終業後に駆け付けることの出来る立地も重要

    現在、村井チェアマンが全国を行脚してスタジアム整備を訴えています

    【参考①】
    Jリーグチェアマンがファジ視察専用スタジアムの必要性訴え
    《山陽新聞 2014年5月18日閲覧》

    【参考②】
    モンテ視察の村井Jチェアマン一問一答 スタジアム理想は都市型
    《山形新聞 2014年5月18日閲覧》

    この流れを加速させることですね



    ⑦終わりに
    以上をもって2014年ACLの小括とさせていただきます

    本稿の趣旨は、ACLに出場することによって現在生じている負のインセンティブをある程度改善することによって、よりACLに力を注げるようにできないか、というものです

    そして今回調べていく中で改めて確認できたことがあります。
    それは敗退の責任をJFAだけに押しつけるのはナンセンスであるということ

    今年はワールドカップ開催の影響で5月中旬~7月中旬の日程が端から埋まっています。
    その状況でリーグ戦、カップ戦、ACLをこなすスケジュールを組めば過密になるのは当然。
    過密日程を解消しろという批判はよく見ますが、どうすればいいのか私には分かりません

    【参考】
    2014日程(1月版)
    《とりあえず 2014年5月18日閲覧》

    過密日程の解消は、J1所属チーム削減、リーグ2月スタート、秋春制導入、AFCの改革などの検討というように、小手先の取り組みではどうにもならない次元の問題となっています

    もはやACL出場と過密日程は不可分の関係とさえ言っていいでしょう。
    今現在はそれを受け入れ、少しでも負担と疲労を軽減できる方法を模索するべきです。
    (スケジュールの大改革はACLとは切り離して行うべきだと考えます)


    川崎フロンターレはそのことをよく理解しており、金曜開催に踏み切っています。
    Jリーグも柔軟に対応してくれたお陰で中3日で試合に臨むことができました。
    (なお、サンフレッチェも金曜開催に踏み切れば中2日を2つ減らすことが可能でした。)
    他にも、日曜開催の再開やサポートプロジェクトなどJFAは支援の姿勢を見せています

    しかしJFAが行うのはあくまでもサポートであって全面バックアップではありません。
    あくまでも大会に出場するのはACL出場クラブであってJFAではないのです

    《スポーツニッポン 2014年5月18日閲覧》 
     
     日本サッカー協会の大仁邦弥会長は15日、アジア・チャンピオンズリーグ(ACL)決勝トーナメント1回戦で日本勢が全滅したことについて「非常にショック。Jリーグの価値や日本サッカーのレベルにも影響する」と遺憾の意を示した。
     日本協会は昨季からJリーグと共にサポートプロジェクトを立ち上げ、遠征費補助などで出場クラブを支援してきた。2季目は早期敗退となり、原博実専務理事は「何年も勝てていないのは理由がある。原因は過密日程だけではない。いろんな角度から考えて結論を出したい」と厳しい表情を見せた。

    JFAのサポートが適切であるか十分であるかという議論はまた別です。
    むしろ上記の提言以外でもAFCでの発言力向上など求めたいことは沢山あります

    ですが、サポートを受けている身で後ろ足で砂をかけるような行為は如何なものでしょうか。
    その行為は"サンフレッチェ広島"という看板に泥を塗っていないでしょうか?


    力が足りないのはJFAだけではありません。
    クラブも、チームも、そして我々サポーターの力も足りていないからこその結果。
    それをしっかりと受け止め、糧にして再チャレンジしなければなりません

    2010年に得た経験値はほんの2年経過したことで風化していました。
    ACLの経験値は毎年出なくては積み上げられないもののようです。
    2015年もまたあの舞台で戦えることを願って


    最後に、今年2月の中国新聞に掲載されたサンフレッチェ広島、ミハエル・ミキッチのインタビューを一部抜粋して締めくくりたいと思います

    ここまでありがとうございました

    サンフレ2年連続3度目のACL25日初戦 紫のリベンジ
    《中国新聞 2014年2月21日20面》

    ――ACLを勝ち抜くためには何が重要ですか。
     単純に言えば、時差と気候の差に対応することだ。私はディナモ・ザグレブ(クロアチア)時代に2度CLに出場したが、移動はすべて1,2時間の範囲だった。長距離移動を伴うACLは厳しい戦いを強いられる。だからホームでの試合はとても意味があるものになる。負ける痛みは大きい。ことしもホームが初戦で相手は去年も戦った北京国安だ。1次リーグは最低3勝。一つでも失うと先に進めないと思っている。

    ――国内リーグとは違う相手との戦いで得られるものは何ですか。
     CLにはマンチェスター・ユナイテッド(イングランド)やACミラン(イタリア)などのビッグクラブが出場する。強豪と戦うことで自分に何が足りないのか、これから何をしなければならないのかを知ることができた。大きな差もあれば、わずかなものもあった。位置取りなど細かい差まで発見できる。若ければ若いほど、モチベーションになる。それはACLでも同じだ。Jリーグでは味わえない貴重な経験となるはずだ。

    ――ACLの現状をどう見ていますか。
     ホームの観客の数が少ない。CLはビッグクラブが出場することもあり、前日からみんなわくわくして、リーグ戦以上に盛り上がる。日本ではリーグ戦にはたくさん来てくれるが、ACLは少ない。チームが勝つためにたくさんのファンが来場してホームの雰囲気をつくり上げないといけない。ホームタウンを世界にアピールできるチャンスでもある。
     CLはどの大陸の選手、クラブも憧れる。多額の賞金が入り、クラブは補強などに充てることができる。ACLとは比較にならない。だがACLも大きな大会になれば、フォルラン(C大阪)のような世界的な選手がJリーグにどんどん来るかもしれない。


    awayisumawayisum  at 09:00コメント(2)トラックバック(0) この記事をクリップ!