トップページ » スポンサー
スポンサー

なぜ"2ステージ制+ポストシーズン制"に移行しなくてはならないのか

①2ステージ制導入へ(11年ぶり3回目)
Jリーグ理事会は今月17日、2015年シーズンからの2ステージ制の導入を決定しました

今回のこの決定に対して肯定的な意見は数が少なく、批判的な意見が目立ちます。
また、Jリーグ側の説明も稚拙であるためその移行理由が見えてこないのが現状です

今回は「なぜ"新2ステージ制"を導入する必要があるのか」という視点に立っています。
"新2ステージ制"に賛否を述べるものでもなければ、是非を問うものでもありません。
なぜこのような話になったかというバックグラウンドを確認するためのものです


"新2ステージ制"の話をする前に簡単に昔話をしておきましょう。
Jリーグが2ステージ制を導入するのは3回目。1996年は1シーズンだけ1ステージ制でした

なぜ1シーズンだけで1ステージ制が取りやめられてしまったのか。
当時の日経新聞の記事を見てみることにしましょう

固まらない試合方式 回数を優先複雑さ増す
《日本経済新聞 1996年11月29日》

 リーグ、カップ戦の方式を決めるとき、クラブは入場料収入増を図るため、可能な限りの試合数確保を主張してきた。10チーム、前後期計36節で始まったリーグはチーム数の増加で昨年、52節に膨らみ、今年は2ステージ制をあきらめた。その分、ナビスコ杯を復活させ試合数を調整している。来期はチャンピオンシップでの収入増を見込んで前後期制を再導入する。2回戦制では計64節にもなるため、苦肉の策で変則1回戦制を選択した。

このように当時の1シーズン制導入は商品価値の向上ではなく売上機会増加が主眼。
1996年に1ステージ制が導入されたのは試合数を消化しきれないという受動的な理由でした


Jリーグが再び1ステージ制導入を決めたのは2004年。
当時の鈴木チェアマンは朝日新聞の取材に対してこのように述べています

1ステージ制で本当の実力競う サッカーJリーグチェアマンに聞く
《朝日新聞 2005年3月3日》

 --1ステージ制に変えた意味は?

 「本来、サッカーの実力はホーム・アンド・アウェーで試されるべきだ。これまでは各ステージを片方のホームで争ういびつな形だったため、リーグ優勝の勝ちも揺らいでいた。今期は1ステージ制がファンの間で定着すれば成功だ」

 --1ステージ制の課題は?

 「優勝争いにも残留争いにも加わらないチームの中だるみが、試合内容に及ぼす影響だ。短期決戦の2ステージ制なら、目標のないチームは少なかった。ただ、短期決戦は即戦力を重視し、控え選手をないがしろにする傾向があった。長い1ステージ制は層の厚さも必要なので、若手育成につながると思う」

2005年の1ステージ制導入はJリーグが商品価値の向上を目指して行ったものでした。
これが可能になったのにはJ1のチーム数を18に増やしたことが背景にあるのでしょう。
スポンサーの契約が切れるタイミングだったというのもあります

しかしJリーグの理想に向かって一歩踏み出したことは間違いありません。
それは、導入以前には2ステージ制への批判記事がいくつもあったのに対して、1ステージ制導入後に直接的な批判をする記事が見当たらなかったことからも感じ取れます


少し長くなりましたが昔話はこれくらいにしておきます。
この歴史を踏まえて今回の"新2ステージ制"について考えてみることにしましょう

※注記
今回導入を決定したレギュレーションは、以後"新2ステージ制"と表記する
また、それ以前の2ステージ制については"旧2ステージ制"として区別している




②"新2ステージ制"導入で何が変わるのか
2ステージ制でもたらされる最大の変化はレギュレーション変更。
言葉で説明しても分かりにくいので次の画像を見ていただければ充分です

2S+PS-01
Jリーグ公式サイトより》


年間勝ち点1位であっても優勝できるとは限らないシステムになるようです。
昨年のJ1昇格プレーオフの結果を見れば殊更そう感じる人は多いはず。
現在のチーム数ではホーム&アウェーに不公平が発生する点も見逃せません

"旧2ステージ制"でも指摘されていたファーストステージ制覇クラブのモチベーション低下。
これに配慮した仕組みにはなっていますが、どこまで効果があるかは不透明です

また、スーパーステージとチャンピオンシップを開催すると最大3試合増えることになります。
すなわち、現行のシーズンを前倒しにするか、あるいは平日日程で消化することになるでしょう

なお、賞金の取扱いやACL出場権などは現段階で未定の様子

J1、2015年シーズンから2ステージ制への移行が正式決定
《サッカーキング 2013年9月19日閲覧》

 なお、年間勝ち点1位のクラブが、各ステージの上位2位クラブの中に含まれる場合や、当該クラブが重複する場合のスーパーステージの開催方法、ACL出場権、賞金、スーパーステージとチャンピオンシップの試合会場等については決定次第発表となる。


目立つメリットとしてはスポンサー獲得をしやすい点でしょうか。
各ステージの名称やスーパーステージとチャンピオンシップの名称。
またそれらの放映権販売(各ステージ最終節を含む)も見込めるかもしれません

加えてポストシーズンを開催する分だけ入場料収入等も見込めるはずです

他にも色々あるでしょうが、それは他のコラムなどにお任せしましょう

【参考】
コラム:2ステージ制への回帰は正しい選択なのか?
《Goal.com 2013年9月19日閲覧》

突如浮上したJリーグの2ステージ制移行案。メリット見えにくい改革案は日本サッカーのためになるのか?
《フットボールチャンネル 2013年9月19日閲覧》

J1大会方式変更 リーグ理念に反しないか
《新潟日報 2013年9月19日閲覧》

 ライト層のど真ん中から、J1リーグの2ステージ制移行に「まぁいいんじゃないですか」と叫ぶの巻。
《スポーツ見るもの語る者~フモフモコラム 2013年9月19日閲覧》


③なぜ"新2ステージ制"を導入しようとしているのか
今回のレギュレーション変更についての説明は主にJリーグの中西大介氏が行っています。
中西氏の言葉を拾うことで"新2ステージ制"に対する理解を深めることにしましょう


中西氏が各メディアを通して主張しているのは簡単に言えばこんな感じです

  1. Jリーグ全体にある危機感を各クラブと共有した
  2. 本来2ステージ制は望ましい形式ではない
  3. しかし、成長するためには2ステージ制導入が必要である
[インタビュー]Jリーグはなぜいま改革を進めるのか ~中西大介 Jリーグ競技・事務統括本部長に話を聞く
《ELGOLAZO web版 BLOGOLA 2013年9月19日閲覧》

 『危機だ、危機だ』と声高に叫んでも、それだけで危機感は共有できません。リアルな数字を見たり、何時間も一緒に過ごしたりすることで、『これは本当にゆでガエルになるかもしれない』と気付く。だからフェイスtoフェイスで議論することは必要です。共有できた次に、どうするかというフェーズになる。
[緊急インタビュー]Jリーグ、2ステージ制導入の真意を問う 中西大介(Jリーグ競技・事業本部長インタビュー)
《サッカーキング 2013年9月19日閲覧》

 もちろん1リーグ制が理想であることは、JリーグもJクラブも共通認識として持っています。ただ、先ほどから申し上げているように、Jリーグ全体が更なる成長を遂げるために、新しい取り組みを導入することが必要であると考えました。

"新2ステージ制"を語る上で最も欠けているのがこの危機感の共有だと私は考えています

謎に包まれていた2ステージ制復活の意図 成長シナリオを描くために必要な決断
《スポーツナビ 2013年9月19日閲覧》

――当初、アンタッチャブルだったはずのレギュレーションに、なぜ手を付けざるを得なくなったのか。われわれが知りたいのは、まさにそこの部分なのですが

 その前提として、戦略会議が認識している現状の問題点について、お話したいと思います。大きく3つありました。1つ目は、日本代表とJリーグのサイクルがアンバランスになり、パラドックス化しているということ。2つ目は、一般の人々の視線がなかなかJリーグに向かっていかないこと。3つ目は、未来への投資原資が枯渇しつつあるということ。

1点目はサッカー批評などでは"グローバリズム"とも言われています。
日本から優秀な選手が流出するものの、Jリーグにそれは還元されていない。
むしろ露出の面から言えばJリーグよりも海外リーグで活躍する選手に食われている。
こういった危機感のことを指摘しているようです

1点目と2点目については我々サポーターも体感している危機感ではないでしょうか?

《スポーツナビ 2013年9月19日閲覧》
 
 まず、この資料を見ていただきたいのですが(Jリーグへの関心度を示す資料)。Jリーグというものが、一般の人たちにどう見られているのかということをいろいろ調べているんですが、2006年の段階では46%の方々が「Jリーグに関心がある」と言っているんです。つまり競技場に行く、行かないは関係なく、2人に1人はJリーグの結果を気にしていたり、選手の動向を気にしていたりしていたと思うんですよ。ちなみに日本代表は44.8%でした。ところがこのJリーグの関心の数字が、だんだんと下がっていっているんですよね。12年は30.4%まで落ち込んでいる。これはショックでしたね。


少しだけ余談。
Jリーグは"新2ステージ制"の説明によく平均観客数の減少を提示します。
しかし、JFLからJ2に昇格するクラブがある限り平均での比較に価値はありません。
素直に総観客数のグラフを提示すればいいのです

2S+PS02
Jリーグ公式サイトの資料より作成》

※注記
Jリーグミリオンプロジェクトのカウント方法を真似ている
ただし、ACLホーム分に関しては面倒なので計算に含めていない
また、2002年のナビスコカップのデータは公式発表が間違っている可能性がある


言うまでもありませんが、試合数が毎年違っているので単純な各年比較に意味がありません。
この資料から分かるのは、集客数がピーク時よりも下落しているということ。
実は一番痛かったのは2011年ではなく、その前年の観客数の減少なんでしょうね


話を戻して一番サポーターが理解しにくいのが3点目の"投資原資の枯渇"でしょう。
これをとても分かりやすく言うと、今Jリーグにはお金が足りていないということです

Jリーグの収益構造にはとても顕著な特徴があります。
すなわち、全体の経常収益のうち75%前後が協賛金収益と放映権料収益で賄われているという点で、この二つの収入源を無視してJリーグは運営できません

そして今一番問題となっているのがこの二つの収入源が減少傾向であること

2S+PS03
Jリーグ公式サイトの資料より作成》

放映権料収益が2010年にがくっと下がった理由はよく分かりませんでした。
それよりも恐ろしいのは、2012年度の放映権料収益が更に下がる可能性がある点。
これはTBSとの契約が満了したためで、アジア戦略の成功が急がれます

そして協賛金収益も2010年から大幅にダウン。
リーマンショック、東日本大震災などの影響でしょうか

J1前後期制が復活 背景に経営危機感
《中国新聞 2013年9月12日》

いったんは見送ったJ1の大会方式変更に踏み切ったのは「変えないという選択肢はない」(リーグ関係者)ところまで差し迫ったリーグ側の危機感を、各クラブの社長らが共有したからだ。7月のJ1、J2合同実行委員会では、クラブ側は大会方式変更に慎重論が多かった。

【中略】

流れが変わる契機となったのは、8月下旬に各クラブの事業担当者を集めた会議だった。リーグ側は、現行方式を維持した場合の収入減の具体額に言及。14年の収入は協賛金が約10億円、テレビ放送権が約3億円も減り、各クラブへの分配金はJ1が4千万~5千万円、J2で2千万~3千万円減額となる試算を示した。観客数や関心度などの調査の数字も今後の「じり貧」を暗示した。

【中略】

新方式は前後期の優勝があり、さらに年間王者を決める場がある。注目を集める機会を増やし、新規のスポンサーや放送権契約の呼び水とする狙いがある。ある民放テレビ局の関係者は「大歓迎。そういうふうにしないと、うちとしては(放送を)やれないというアプローチをしてきた。うちも(放送権獲得を)前向きに考える」と、変更を高く評価した。一方で効果に懐疑的な見方もある。新潟の田村貢社長は、「(昨年導入された)J2のプレーオフでも新スポンサーが取れるという話だったが取れていない。心配だ」と率直に話した。

そしてこの中国新聞(同日の埼玉新聞に一字一句同じ報道あり)の報道。
9月10日号のサッカーダイジェストなどでも類似した言及があります

《スポーツナビ 2013年9月19日閲覧》
 
――Jリーグが設立当初からの理念を重視しているのは理解できますが、当然ながらビジネスの面での危機感もあったわけですよね?
 
 Jリーグの収入なんですが、一番多い08年で130億円だったのが、12年で120億円。ピーク時から10億円くらい減っています。支出では、配分金は変えずに維持しているんですね。試合運営にかかる事業費は、レフェリーやマッチコミッショナーの派遣などの必要経費なので、ここを削るのは難しい。頑張ってコスト削減には務めているものの、絶対に必要なお金ですし、試合数も増えていますからね。ですから、その他の費用を削るしかない。
 
――この「その他の費用」というのは、ピーク時には20億円あったのに、今は13億5000万円ですか
 
 今後、さらに圧縮される可能性があります。この部分は、どういうことに使ってきたかというと、たとえばレフェリーのプロ化であったり、育成であったり、そういった将来的な投資に充ててきました。育成に関しては、U?13やU?14のリーグを立ち上げましたが、あれだけのチーム数でリーグ戦をやるのは、相当にコストがかかるんですよ。それでも投資してきたのは、10年後のためです。実際、2年前のU?17W杯でベスト8に入りましたし。でも、そういったお金も圧縮しないといけないわけです。

ちなみに、協賛金収入と放映権料収入のピークは2008年度で約99億4700万円。
2011年度は約88億900万円と11億円以上の減収となっていました。
これが下げ止まらないのであれば相当ピンチだと言えます


この危機感が伝わらないと"新2ステージ制"の必要性は絶対に理解できません

"新2ステージ制"は既存の顧客をターゲットにした施策ではなく、スポンサーと報道メディアをターゲットにした取り組みになっているのです

そのために2ステージ制が必要だとする中西氏の説明は不十分といわざるを得ません。
しかし、何かしら特効薬が必要だということは理解できると思います



Jリーグの説明能力と情報開示に対する意識の低さ
前項でJリーグが"新2ステージ制"に移行しようとする理由を次のように説明しました

  1. Jリーグ全体にある危機感を各クラブと共有した
  2. 本来2ステージ制は望ましい形式ではない
  3. しかし、成長するためには2ステージ制導入が必要である

この1点目と2点目については前項までで説明できたかと思います。
次なる問題は3点目、「なぜ2ステージ制を導入する必要があるのか」

今の段階では、Jリーグの説明が"桶屋システム"となっているのだと思います。
風が吹けば桶屋が儲かるように、減収の穴埋めが2ステージ制でないと不可能な理由。
そして本当に2ステージ制ならその減収を埋められる見込みがあるのか

こういった点が不透明ではただでさえ既存顧客にとって不利益な提案に納得は出来ないません


また、Jリーグが公式に今回の"新2ステージ制"に関する説明をしなかったのも愚策でした。
代表例が"新2ステージ制"導入によって見込まれるとする10億円以上の増益の使いみち

ゲキサカの報道などでは次のように説明されています

J1は15年から2ステージ制とチャンピオンシップ復活…準決勝に相当するスーパーステージを創設
《ゲキサカ 2013年9月19日閲覧》

 Jリーグによると、「2ステージ制+SS+CS」にすることによってJリーグの収入は10億円以上増える見込み。J1J2クラブへの分配金については維持することにとどめ、収入が増加した分を分配金にまわすことはせず、メディアへの露出や、選手の育成に使い、Jリーグそのものの価値を高めていきたいとしている。
2ステージ制導入が決定、15年から5シーズンを目途に
《ゲキサカ 2013年9月19日閲覧》

 中西大介事務局長は「来シーズン、このままではJリーグの収入が10億単位で落ち込む可能性がある」と明かし、「15年から(2ステージ制を)実施することで、(スポンサー等から)14年も支えてもらう体制をつくることができ、来年も今年の収入を維持できる。今年の収入を維持できるということは各クラブへの配分金も確保できる。それと同時に、育成の投資を減らしてはならないという考え方があり、それを確保できることは重要だと考えている」と説明した。

先ほどの中国新聞などの報道をベースにこの記事を読めば次のように理解できます。
「Jリーグはスポンサー収入などの大幅減を"新2ステージ制"でカバーするつもりだ」

しかし、その情報が頭になければ、「Jリーグは私腹を肥やそうとしている」。
そんな間違った解釈に陥ってしまうのです

そもそもプロの経営者40人を集めてJリーグだけが得するシステムが通るわけがないでしょう?


それもこれもきちんと公式で説明してこなかったツケですね。
サッカー批評のインタビューに対して次のように述べています

※注記
萩原氏とはJリーグ管理統括本部広報室室長
サッカー批評のインタビューに対して中西氏に同席した


シーズン移行と2ステージ制の是非を検証する
《サッカー批評 第64号》

--いまポストシーズン制導入の議論が佳境を迎えていますが、5月頃に新聞報道で「2ステージ制復活」のすっぱ抜きがあって、突然浮上した物だからサポーターからも激しい抵抗があった。それで中西さんはこの二ヶ月間、多数のメディアで現状の説明をされていますが、それは説明が足りなかったという認識なのでしょうか。

中西「説明が足りなかったというより説明する前に不正確な情報として出てしまったのでね」


【中略】

--それは分かります。ただ、今回の件で個人的に期待していたのは、チェアマンである大東さんがスポークスマン的な仕事を果たせたのではないか、ということです。中西さんらを中心に実務をこなされているのはよくわかりますが、以前川淵さんがされていたような、トップの方のうまいパフォーマンスがあってもよかった。

萩原「それはやろうとしています。ただし、今は中西がメディアの方々に細かな説明をさせてもらい、状況を知っていただいた上でコアなサポーターに届ける作業をしている段階です。もちろん、長として大東が出るタイミングは、今検討しているところです」

この応答からもJリーグ側の情報開示に対する認識の甘さが窺えます。
結局理事会での決定までに公式な説明はなく、とにかく後手を踏む印象を与えました

理事会の決定後にチェアマンが欠席するというのも事情があったとはいえマイナスイメージ。
"新2ステージ制"導入のキモはスポンサーと放映権にあるにもかかわらず、ネガティブな印象を生み出す段幕合戦が起こった後も対応できていない

大分トリニータがスポンサーを逃した当時を思い起こすのは私だけではないはずです

そのリスクを理解していればもっと丁寧に進めるか、あるいは秘密裏に一気にやるべきでした。
"新2ステージ制"の是非以前の話だったと言えます


終わりに=責められるべきはJリーグだけか?
最後に簡単ですが私見を述べたいと思います。
現時点で矢面に立たされているのは主にJリーグ

しかし、今回Jリーグに非があるとすれば前項で述べた説明能力の低さ。
そして情報開示を誤るとどんな危険性があるかについて理解できていなかったことでしょう

"新2ステージ制"は一体どのような経緯で承認されたのか。
把握している限りでは、昨年設置したカレンダータスクフォース→Jリーグ戦略会議で複数回検討→7月の合同実行委員会で否決→4ブロックに分けた分科会で再度検討→8月の戦略会議→9月の合同実行委員会→9月の理事会で承認

そしてこのメンバーの多くはJクラブの代表で構成されています

忘れてはならないのが前々項で述べたJリーグの減益見込み。
これは配分金の減少に直結するものです

今のJリーグに配分金の減少見込みを提示されて、新しいスポンサーの獲得見込みという魅力的な危ない提案を拒めるクラブが一体どの程度あるのでしょうか

そして重要なのはJ2クラブの多くにとってこのレギュレーション変更があまり重要ではないこと。
昇格が確約されていない以上大事なのはレギュレーションよりも配分金でしょう。
そういった理由から半数以上のクラブが反対に回るとは考えにくかったと言えます


過去のレギュレーション変更のほとんどは顧客ではなく売上重視の結果でした。
今回、Jリーグばかりが非難されていますが、決してJクラブも無関係ではありません

そのことを忘れて全ての責任をJリーグに押しつけるのが正しい方法とは思えません。
まずは自分の応援するクラブの考え方を知ることから始めるべきではないでしょうか


【参考】
第11回サポーターズカンファレンス議事録
《サンフレッチェ広島 2013年9月19日閲覧》

J1リーグ大会方式の変更について
《浦和レッズ 2013年9月19日閲覧》



⑤"新2ステージ制"論議の前に読んでおきたいいくつかの記事

◆無料媒体



◆有料媒体
  • 2ステージ制再導入 影響は サンフレ・小谷野社長に聞く(中国新聞 2013年6月7日)
  • J1 2ステージ制復活案(東京新聞 2013年6月13日)
  • J1前後期制が復活 背景に経営危機感(中国新聞 2013年9月12日)
  • J1前後期制復活 背景に将来の経営危機(埼玉新聞 2013年9月12日)
  • J1 2ステージに回帰(日本経済新聞 2013年9月12日)
  • J1苦渋の2ステージ制(朝日新聞 2013年9月18日)
  • (読売新聞 2013年9月18日)
  • サッカー批評(第62号第63号第64号
  • 週間サッカーダイジェスト(7/23号8/6号8/20・27合併号9/10号9/17号
  • 週間サッカーマガジン(7/2号8/27号9/3号

この中でも宇都宮氏が取材したスポーツナビが最も良質なインタビューだと感じました。
他では有料になりますがサッカーダイジェストの精力的な取材もオススメです

また、エルゴラッソとサッカー批評・フットボールチャンネルも参考になると思います。
もちろんダイジェストですがJリーグラボも是非どうぞ

awayisumawayisum  at 09:00コメント(0)トラックバック(0) この記事をクリップ! 

第10回サポカン ~「スポンサーシップ」から「パートナーシップ」へ~

第8回第9回に続いて第10回目のサポカンについて振り返っておきたいと思います。
第10回サポカンについてはサンフレッチェ会さんが総括しておられるので、そちらもご紹介

【参考】
第10回 サポーターズカンファレンス議事録①
第10回 サポーターズカンファレンス議事録②
《サンフレッチェ会 2013年2月21日閲覧》

今回の副題はJリーグニュースプラスVol.11から。
クラブとスポンサーの関係に着目して第10回サポカンを見てみましょう



第10回サポカン議事録を見てみる
まずは議事録に目を通してみましょう。
第10回は成績、戦力、そして経営に関する注目が高かったため運営関係は少なめでした。
今回ピックアップするのは、その他からスポンサーに関する質疑応答

5)その他 : サポーターズ・カンファレンス議事録
《サンフレッチェ広島 2013年2月21日閲覧》

質問
 ありがとうございました。地域に根ざすスポンサーをというのをおっしゃっていただいて、私個人としても嬉しいです。一つだけあえて加えさせていただくとすれば、お願いなのですが、企業とのタイアップは非常に良いことなのでぜひやってほしいです。もしできるのであれば、サンフレッチェがスポンサーとスポンサーのハブという形ですね。サンフレッチェと対スポンサーではなく、スポンサーを結ぶサンフレッチェという位置づけで模索を続けていただければと思います。
 
回答(小谷野社長)
 今のご指摘は私も重要だと考えております。スポンサー様がスポンサーシートおよびVIP席にいらした時に、スポンサー同士を紹介や仲介を手がけていて、「サンフレッチェのスポンサーになるといろんなメリットがある」と感じていただけるようになると良いと思います。実は新スタジアムの議論とも絡んでくるのですが、最新のスタジアムはいわゆるホスピタリティゾーンというのがあって、地元の名士の方々や長年チームに貢献されてきたボランティアの方々が集まるゾーンやスペースがあります。そこで新たな地元のつながりというのも、作っていく形になっています。複合機能もそうですし、スポーツスタジアムそのものとしても重要な機能だとわれわれは考えております。スタジアムでも少しずつ実践をやっていきたいと思います。

ここで提案されているスポンサーにとってのハブ機能という視点は大変重要です。
実際に、近年この考え方は他クラブでも注目され始めています


<一昔前までスポンサーは広告宣伝効果に注目していた>
スポンサーシップ1

画像にするほどではないですが、従来のスポンサーとの関係は基本的にクラブとの1対1。
クラブ単体の価値(主に広告宣伝効果)に投資意義を見出すシステムでした


<Jクラブにとって広告料収入は生命線である>
ここで、Jリーグ公式サイトの営業収入内訳の推移(2011年時点)を見てみましょう

クラブ経営状況2011 営業収入内訳の推移_01
Jリーグより)

広告料収入は営業収入のおおよそ45%~55%で推移しています。
広告料を如何に確保するかがクラブにとっての至上命題と言っても過言ではありません

一方で長引く不況、リーマンショック等々によりスポンサー確保が難航していると聞きます。
従来のやり方だけでは、企業はこちら側を向いてはくれません


<近年スポンサーはCSR活動を重視している>
少し話が変わりますが、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科の大西孝之氏が2009年に発表した「スポーツ・スポンサーシップにおける企業の社会的責任: CSR の知覚の先行要因と結果要因」という論文があります

この論文では、J リーグクラブのユニフォーム・スポンサーに対して調査を行っています。
結果、スポンサーシップ目標で平均値が最も高かったのは「社会貢献・地域貢献」
以下、「社会・地域への責任」、「ブランド・ロイヤルティの向上」、「気づき・認知度の向上」、「イメージの改善と向上」と続いています

近年では、クラブを媒介としたCSR活動としてのスポンサーシップが主流となっているようです。
広告効果だけではなく、地域社会への貢献という視点が追加されたのは必然と言えるでしょう。
Jクラブは全国30都道府県に存在しており、地域社会との関係性を訴えるのに便利な存在です


<これからはスポンサー同士の関係に注目!>
しかし、CSRというものは企業ごとに認識の違いがあるものです。
当然力の入れ方も違いますし、それだけでスポンサーを確保するのにも限度があります

スポンサーシップ2

そこで近年重要視され始めているのがスポンサー同士の関係なのです。
本来、なかなか交流の持てない企業同士がクラブを媒介とすることで関係を構築する。
そのメリットが目に見える形となれば新しいスポンサーの獲得にも大きく貢献するでしょう



スポンサーにとってのハブの事例
スポンサーにとってのハブ機能として実際にあった事例としては鹿島アントラーズが有名です

鹿島のホームタウンである鉾田市で『ちゅう太郎』というトマトジュースが販売されていました。
この商品を更にPRするために、鹿島のスポンサーであるサントリーに打診。
ちゅう太郎』と『ザ・プレミアム・モルツ』を合わせた『レッド愛』というカクテルが完成です

【参考】
JリーグニュースプラスVol.13(pdf注意)

《Jリーグ 2013年2月21日閲覧》

評判を色々見て回ったのですがおおむね好評の様子。
何より、ちゅう太郎とザ・プレミアム・モルツの値段を考えると破格です(500円)。
今度観戦に行ったときは必ず飲んでみるつもり

00048772-B
J's GOALより)

他にも鹿島ではスポンサー同士の取引促進も行っています。
具体例としてあげられているのがトステムとイエローハットの事例。
関東経済産業局の調査に詳細が載っていますので、興味がある人はどうぞ

平成21年度地域中小企業活性化政策委託事業スポーツビジネスを核とした地域活性化フィジビリティ調査
《関東経済産業局 2013年2月21日閲覧》

  スポンサーに提供できる価値はスポーツチームに内在したものだけではない。実は、スポンサー同士がお互いにとっての価値を生み出す源泉になっていくのである。具体的には、スポンサー同士の交流促進、さらには取引促進である。つまり、スポーツチームがスポンサー同士のビジネスを「仲介」するのだ。仲介といっても、取引の間に入るわけではなく、場・機会・情報の提供である。スポンサー同士のビジネスに貢献することで、自チームを応援してくれるメリットを演出していくという高度なマネジメントである。

また、折角なのでサンフレッチェにもこういった事例がないか調べてみました

サンフレッチェの手摺広告スポンサーである三共ディスプレイ。
そのホームページ上でEDION CI変更工事がショップ実績としてあげられています。
工事内容は、デオデオからエディオンへの店名変更に伴うサイン工事というもの。
共にサンフレッチェのスポンサーであり、一つの「スポンサーにとってのハブ」だと考えられます

調べられていないだけでサンフレッチェが関わっている事例は他にもあるかもしれません


③ビジネスクラブ
スポンサーにとってのハブ機能の1つとして「ビジネスクラブ」というものがあります。
「ビジネスクラブ」とは、サポカン議事録であったホスピタリティゾーンでの活動のようなもの。
スポンサー同士が関わり合いを持つ場のことです

この「ビジネスクラブ」を設立するJクラブが最近見受けられます。
このビジネスクラブについては大宮アルディージャが最も有名でしょうか

大宮アルディージャのビジネスクラブ=ABCは2008年設立。
アルディージャとそのスポンサー(年間50万円以上)で構成されています。
懇親会だけでなく「ごみゼロの日 大宮クリーン大作戦」などの活動も実施しているようです

JリーグニュースプラスVol.11(pdf注意)
《Jリーグ 2013年2月21日閲覧》

 山下本部長は、「従来のスポンサーセールスは、看板1枚がいくら、という金額交渉が中心だった。それを180度変え、『看板を買ってください』ではなく、『ぜひABC会員に加わってビジネス交流を行い、アルディージャと共に地域を元気にしていきましょう』というメッセージにしていった」と話す。
JリーグニュースプラスVol.11(pdf注意)
《Jリーグ 2013年2月21日閲覧》

 「せっかく何か購入するならABC会員企業の商品にしよう」という想いがシナジーを生む。贈答品なら髙島屋へ、社員旅行はJTBに依頼しよう……といった具合である。ある社長は、自宅の建設をABC会員であるパナホームに依頼したという。

このように、従来のスポンサードではなくスポンサー同士の関係、一体感を重視。
それによって前項の取引や商品が生まれたり、シナジーを期待できるというわけです

サンフレッチェでも感謝の夕べ励ます会を開催していますが、一体感とは異なるでしょう。
こういった視点でスポンサーを巻き込んでいくことも重要ではないでしょうか



④終わりに
今回はこのようにスポンサーとの関係に着目してみました。
広告宣伝効果、CSR活動の一環、そしてスポンサー同士の関係。
スポンサーを獲得するためには幅広い視点が必要です

先ほど取り上げた「スポーツ・スポンサーシップにおける企業の社会的責任: CSR の知覚の先行要因と結果要因」という論文によると、「販売業者との取引の促進」は13位、「スポンサー間のネットワークの形成」は19位でした

この視点でのスポンサー獲得はまだまだこれからだと言えます


ハブとは、ネットワークの中心、中枢、拠点という意味です。
スポンサーにとってのハブになるとは、すなわちクラブが地域社会の中心になるということ。
地域にとってなくてはならない存在になるということです

小谷野社長は第10回サポカンで、地元企業の深堀り戦略を目指すと発言しました。
決してスポンサー料を支払うのも楽ではない時代。
クラブ、スポンサー、そして地域がwin-winな関係を築けるよう努力すべき時代になっています


最後に。
サポーターとしてするべきことはいたってシンプル

折角何か購入するならスポンサーの商品にしてみようかな

まずはそこからでしょう

awayisumawayisum  at 09:00コメント(4)トラックバック(0) この記事をクリップ! 

[memo]近年のサンフレッチェ広島のユニフォーム変遷

サンフレッチェ広島のプレスリリースに残っているだけ遡ってみました。
そのついでにスポンサーの変遷についてもまとめてみました。
ただのメモ書きです

J'sGOALの方に特設サイトがあって面白かったのでそちらも合わせてご紹介しておきます

【参考】
J's GOAL ユニフォーム図鑑

《J's GOAL 2013年1月16日閲覧》

余談ではありますが、開幕時という意味以外でも1993年のデザインが好きです



2007年 Jリーグユニフォーム
ユニフォームサプライヤー
  • ミズノ株式会社

ユニフォームスポンサー
  • 前面:株式会社デオデオ
  • 背中:株式会社ライフ
  • 左袖:カルビー株式会社
  • パンツ:株式会社アーバンコーポレイション
※2008年は同一モデル

2007uni

サッカーショップ スポーツウェブショッパーズより。一部加工)


2009年 Jリーグユニフォーム
ユニフォームサプライヤー
  • ミズノ株式会社

ユニフォームスポンサー
  • 前面:株式会社デオデオ
  • 背中:株式会社ライフ
  • 左袖:カルビー株式会社
  • パンツ:株式会社エディオン
2009uni
amazon・ミズノより)

2010年 Jリーグユニフォーム
ユニフォームサプライヤー
  • ミズノ株式会社

ユニフォームスポンサー
  • 前面:DEODEO(株式会社エディオンWEST・(旧)株式会社デオデオ)
  • 背中:マツダ株式会社
  • 左袖:Calbee(カルビー株式会社)
  • パンツ:株式会社エディオン
2010uni
サッカーショップ スポーツウェブショッパーズより。一部加工)


AFCチャンピオンズリーグ2010 ユニフォーム
ユニフォームサプライヤー
  • ミズノ株式会社

ユニフォームスポンサー
  • 前面:マツダ株式会社
※ACLの規定によりスポンサーは前面1社のみ
 
ACL2010
サンフレッチェ広島より)


2011年 Jリーグユニフォーム
ユニフォームサプライヤー
  • 株式会社ナイキジャパン

ユニフォームスポンサー
  • 前面:デオデオ(株式会社エディオン)
  • 背中:マツダ株式会社
  • 左袖:AS進学セミナー(株式会社k.a.a.JAPAN)
  • パンツ:株式会社エディオン
2011uni
NIKE JAPANより)


2012年 Jリーグユニフォーム
ユニフォームサプライヤー
  • 株式会社ナイキジャパン

ユニフォームスポンサー
  • 前面:エディオン(株式会社エディオン)
  • 背中:マツダ(マツダ株式会社)
  • 左袖:AS進学セミナー(株式会社k.a.a.JAPAN)
  • パンツ:イードットコム(株式会社エディオン)
2012uni
NIKE JAPANより)


20周年記念ユニフォーム
※サプライヤー及びスポンサーは2012年Jリーグユニフォームと同じ

20memorial


2013年 Jリーグユニフォーム
ユニフォームサプライヤー
  • 株式会社ナイキジャパン

ユニフォームスポンサー
  • 前面:エディオン(株式会社エディオン) 
  • 背中:マツダ(マツダ株式会社) 
  • 左袖:万田酵素(万田発酵株式会社) 
  • パンツ:クオルネット(株式会社エディオン)
2013uni
J's GOALより)


awayisumawayisum  at 09:00コメント(0)トラックバック(0) この記事をクリップ!